土曜日のステーキ
いつもの時間に目が覚めた。
目覚ましは鳴っていないことを確認して、目覚ましが設定されていないことを確認して、私はまたタオルケットに顔を寄せた。
二度寝は罪の味だ。肌に当たるシーツの心地よさや瞼を閉じていてもわかる差し込む日光をやり過ごしながら、また眠りに落ちることができる幸福感は格別だ。
3時間後、私は遅めの朝食にヨーグルトを食べた。
最近ハマっている足つぼマッサージを昨晩眠る前に行なった効果か、だるさがなく、身体は軽かった。それだけで得した気分になる。足つぼ、恐るべし。
ヨーグルトを食べ終えたら、簡単にメイクを。今年の夏はマスクをして過ごす、世界中にとって初めての夏だ。マスクは油断を誘うが、油断は大敵。
日焼け止めは欠かせず、肌を整え、目元にはしっとり感があるラメ入りオレンジカラーのシャドウをつけて、少々夏らしさを添えてみる。
仕上げにマスクで蓋をする!(だめだこりゃ)
ショルダーバックを肩から下げて、勢いよく玄関を出たら夏の空が広がっていた。
久しぶりの晴れだ。
暑いが、風もあってほどほどに気持ちいい。いつもすれ違うお散歩中の近所の犬もシャンシャンと歩いている。今日はいい日になる予感がした。
先週雨続きでずぶ濡れでどんよりしていた街路樹も、青々として活力に満ちていた。アーケードに立ち並ぶ飲食店も、例の虹のポスターを掲げ、店前ののぼりがおいでおいでと手を招いているように靡いていた。
予期しない天候で生活や家族が奪われた梅雨が、挨拶もできないまま会えなくなった人を思い涙を流した梅雨が、明けたことを実感した。
梅雨が明けても、もたらした切ない苦しさは爪痕を強く残している。その胸の痛みとともにこれからの時間を過ごしていこうと思う。
アンビバレントな気持ちを抱えながら、スーパーに入った。
オーストラリア産の牛肉が破格の値段だった。
もやもやするときはお肉を食べよう。
お肉を抱えて帰宅し、フライパンで大胆に焼いてみた。
みじん切りしたニンニクが熱されて、食欲を誘う薫りに変わる。
醤油を垂らし、かぶりつく。
んー、おいしい!
各国の輸出や輸入のあれやこれの制限で、こんなに美味しいお肉が日常で食べることができることに感謝して、黙々ともぐもぐ食べたのであった。
カルディで買った赤ワインもごくごくと進んだ。
やっぱり今日はいい日だった。
ソファに横になりながら私はそう思って、そしていつの間にか眠った。
時折訪れる、誰かが書いた文章を無性に読みたくなるときに、ご利用いただけたら幸いです。