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11. 副作用、皮膚症状

 入院生活で苦しかったことは、やはり、副作用に尽きるだろう。

 経鼻チューブの副作用と言って良いのかわからないが、胃に何も入っていないのに吐き気があり、嗚咽することがあった。また、全身に波及するゾワゾワしながら我慢できなくなる不快感。後にアカシジアではないかと診断される。食道の痛みもあった。だいぶ経ってチューブを抜いた後にこれらの症状が止んだ事から、随分負荷がかかっていたことにあらためて気づいたものだった。やはり、ひげを剃るにもシャワーを浴びるにも清拭するにも着替えるにもレントゲン撮るのにも、チューブと廃液バッグの捌きが必要で、日々廃液バッグのたまり具合を見ていた。
 そして、その黒い液体を小腸に流し込む時は複雑な気持ちだった。

 そして、CVポートからの点滴のみならず、両腕を使った点滴も数限りなく行った。こちらも、寝る体位に関わってくるのでルート捌きが気になった。血管がそのうち固くなったり痛くなったりする。良い刺さり具合というのがあって、流れが調子良く、痛みもないときは刺し替えたくなかったりした。これはその時の運もあるが、看護師さんの信頼度でルートの安心感も違った。刺し替えるタイミングで、担当してほしくない方は現実にいるものだ。本当に細部まで気を遣っていることがわかる看護師さんもいて、僕はガチャしないが、まさにナースガチャであった。

 抗がん剤の副作用で言えば、皮膚症状も酷かった。全身に発赤、ただれのようなものができ、後に皮膚が細かく剥がれていく。しかも掻痒感ある。現場でよく言う落屑というものか。 高齢者の皮膚が乾燥して、まるで雪のように皮膚が散っていくさまに遭遇したことはあったが、自分がこんなに早くそうなるとは思っていなかった。頭から足先まですごいのだ。ベッドや床にはすぐに細かい皮膚のカスが舞う。下着や病衣を脱ぐと沢山の白いものが舞う。

 頭には大きなかさぶたができ、かさぶたから髪の毛が出ている。掻きむしると血が出てきた。

 足の裏と手は、皮膚剥がれや角質化が酷かった。困ったのはスマホの指紋認証ができなくなり、口座から振込ができなくなった事だった。再登録できるようになるまでしばらくかかった。

 全身に軟膏を塗るのもなかなか大変だった。上履きはベトベトになるし、手に塗ったは良いが、すぐに手を洗う機会があるからこれも困った。

 耳の穴の奥にかさぶた状のものができて、耳栓となり耳が聴こえなくなった。皮膚科に相談すると、「これは皮膚科ですかね?」ということになり、耳鼻科へ廻った。なんだか水を耳穴に流し、外に吸い出しながらかさぶたを取ってもらったら、両耳から補聴器のように塊が出てきた。これは早いときには一週間でできる厄介なものだった。

 全身の皮膚症状はヨブ記を思い出すが、僕は正しいものではない。ただ漂うのみである。

 思えば、この病院で多くの先生やチームに助けてもらった。主治医は消化器内科だが、ポート埋込は外科、その後、緩和ケアチーム、栄養管理チーム、薬剤師さん。皮膚科、耳鼻科、心療内科、退院に向けての時期は、リハビリ課、SW、化学療法センター。頭皮が酷かったので院内の美容室でのカットも有り難かった。なにより、病棟の看護師さん、補助さんにお世話になった。皆様ありがとうございました。

 別の話になるが、4カ月間の入院の間に病棟のシステムも少し変わった。清拭用の温タオルが廃止になり、すべて使い捨ての暖かい濡れ紙タオルになった。また、病衣や入院準備セットを外部業者が担当するようになった。病院も日々改善していくのだ。

 


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