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君さえいれば
ポメラDM250が欲しくて欲しくてたまらないので、最近そのことばかり考えている。
ポメラというのはキングジムが販売しているテキスト入力専用のガジェットで、その最新モデルがDM250だ。
サイズはスマホを一回り大きくしたくらい。二つ折りの本体を開くと上下に画面とキーボードが付いている。一見すると小さくて細長いノートパソコンのようだが、文章入力以外の機能は付いていないストイックな製品だ。
まだ買っていない割に詳しいのは、旧製品のDM200を持っていたから。Androidスマホと同期が出来ないこと、使用頻度が思いのほか少なかったことが理由で手放したが、なんとDM250はAndroidとの同期が出来るようになったらしい。
元から持ち運びのしやすさや入力の使用感は気に入っていたから、同期が可能になれば使用頻度も爆増するに違いない。
ポメラとの日々を夢想する。
出先のカフェで、ポメラを使って文章を打ち込む。このnoteにあげる記事や個人的な日記でも良いし、趣味でたまにショートショートを書くのでその原稿でも良い。机の上でキーボードを叩く小気味よい音は、まるで私とポメラの秘密の語らいだ。執筆を終えてふっと一息ついた私は、カフェラテを飲みながら、ポメラと目を合わせ微笑みを交わす。
電車の中でも私たちの関係は変わらない。
満員に近い車内、やっとの思いで空いた座席に腰掛けると、抱えたバッグの中からポメラの声が微かに聞こえる。今はダメだよ、小さな声でそう言い聞かせると、ねだるように鳴いていた声が抗議の声に変わる。仕方ないなあ、と取り出して膝の上に置いてやると、焼けたハマグリみたいに画面をパカパカとさせて大喜びするのでつい許してしまう。
寝る時には枕元に置いて子守唄を歌ってやる。
キーボードの見切れた写真をストーリーにあげる。
扶養家族の欄に「佐々木ポメラ」と書く。
宿敵との最終決戦の日、ポメラは家に置いていく。もし私が帰らなかったら、遠慮せず他の誰かのポメラになるんだよ。そう言おうとした私をポメラは不思議そうな顔で見上げていた。言葉が出なかった。いいさ、湿っぽいのは無しだ。必ず帰る。
港の近くの空き倉庫。一触即発の銃撃戦。宿敵の放った一発の弾丸が無慈悲にも私の左胸に直撃する。やれやれ、私も焼きが回ったもんだ。薄れゆく意識の中、上着の懐に手を入れるとそこには……ポメラ。まったくお前って奴は。やけにポケットが重いと思ったぜ(メーカー公称、約620g)。
銃弾を受け止めた本体はもう動かない。話さない。私はその亡骸を胸に抱き寄せ、ひとしきり慟哭した後にキングジムへ修理の依頼を出す。何を隠そう、保証書をきちんと取っておくタイプなのだ。宿敵はなんやかんやで倒した。
修理から戻ってきたポメラと共に、これからも愉快な日常が続く。
ポメラDM250を買えばこんな日々が待っているはず。一刻も早く手に入れたいが購入を迷っている。だって、価格がけっこう高い。発売当初は6万円台だったのが現在は4万円台まで下がっているが、なかなか手が出ない。
そもそもnoteさえ放置気味の私が4万円超の機器を使うに相応しい程たくさん文章を書くのか? 家にパソコンがあるし外出時にはスマホやキーボード付きのタブレットを使っているから充分では? 次から次に正論が浮かんでくるので、不貞腐れながらスマホでこのnoteを打っている。
こんな文章しか書けないのは、多分ポメラが無いせいだ。