SHHisの渇きと飢え
本記事には以下のコミュのネタバレが含まれます。
・ノー・カラット
・アイムベリーベリーソーリー
・【FEEL】緋田美琴
・【一億回めくらいの、その夏】七草にちか ※TRUEは除く
今回は、以前書いた「ノー・カラット」感想記事の要旨を他のコミュにも拡張してみようという試みです。
記事の内容を要約すると以下の通りです。
・にちかさんは美琴さんと仲良くなりたいと思っており、それは「プライベートで一緒に食事をしたい」欲求として表れている
・美琴さんは食事をおろそかにし、ひたすらレッスンに打ち込む。彼女が摂取するのは、最低限の「水分」だけである
・本編を通じて2人は少し距離を縮め、プライベートを表す「食べ物」と仕事やレッスンを表す「水」の中間といえるもの、「レモン」を一緒に食べる関係になる
あれからいくつかのカードが実装されましたが、この「水と食べ物」理論を下敷きにするとそれらのコミュについてもある程度一貫した読み方ができそうだなと思ったので記事にしてみます。ガチャ産のカードには今回触れませんが、もしかしたらそちらにも適用できる箇所があるかもしれません。
朝コミュ - 2人の「空腹」
カードの内容に入る前に、もう一つ「水と食べ物」が出てくる箇所を挙げると、にちかさんは朝コミュ内でよくダイエットをしています。十分細身に見えますが、彼女なりの動機があるのでしょう。食べることを我慢し、常に飢えている様子です。(ちょっと自傷的というか、ある種のハンガー・ストライキにも見えます)
美琴さんの方でも食べ物に関する朝コミュがいくつかありますが、そこでパーフェクトコミュニケーションになる選択肢は「ドリンク」や「ゼリー」と、水に近いものばかりです。
にちかさんは意識的に、美琴さんはどちらかというと無意識に、ちゃんとした食事をとろうとしません。彼女らは常に「空腹」である、ということがおそらく重要です。(美琴さんはそもそも食欲が希薄そうです) このことは、「アイムベリーベリーソーリー」でも言われた「自分で自分を大切にすること(セルフラブ)」ができていない状態の表れとも考えられます。すると、彼女らの「食事」の様子を追うことは、その時点での心の状態や関係性を推し量ることにもつながるかもしれません。
さて、ノー・カラット以後に実装されたガチャ産でないシーズ関連コミュは以下の3つです。
・アイムベリーベリーソーリー
・【FEEL】緋田美琴
・【一億回めくらいの、その夏】七草にちか
これらについて、「水と食べ物」を中心に見ていきましょう。
アイムベリーベリーソーリー
にちかさんが美琴さんのために飲み物を用意しています。ノー・カラットで美琴さんから水をもらって喜んでいたことを踏まえると、互いに水を渡し合う関係になったということで進展が見られます。氷を入れるのはにちかさんの優しさですが、それを「常温の方だけでいい」と言ってしまう美琴さん…。そこはもらってあげてよ!と言いたくなりますが、心遣いが空回っている感じがするのは、まだ2人の信頼関係が仕事上のものに留まっているということの表れかもしれません。
【FEEL】緋田美琴
1つ目のコミュ「pain」に食事シーンが出てきますが、2人のスタンスは朝コミュと変わりません。美琴さんは食事を頼まず、にちかさんはカロリーを気にしてデザートの注文を躊躇します。しかし、にちかさんはここで美琴さんとも一緒に食べられる、あるメニューを発見します。それが「かき氷」です。
「水ですし!」という言葉も本記事の論旨に沿っています。美琴さんが良い反応を示す食べ物は「はちみつ漬けのレモン」、「ゼリー」、「かき氷」と、いずれも「水分が多く、フルーツの味がするもの」であり、「水と食べ物のあいだ」としての共通項を見出すことができます。(ゼリーとかき氷の味は明示されていませんが、まあ基本はフルーツ味だよねということで…。) ノー・カラットと同様、二人の距離が縮まったことが食べ物にも表れています。このシーンは仕事の合間であり、やはりプライベートで食事する関係となるのはまだ先になりそうですが、美琴さんがこの時間を心地よく感じているというのはとてもいいことだなと思います。
かき氷食べて頭が痛くなっちゃう美琴さん、可愛い〜〜〜〜〜〜で終わりたいところですが、2つ目のコミュ「dizzy」では自らをセミに重ねたりしていて、まだまだ危うさが見えますね…。
【一億回めくらいの、その夏】七草にちか
1つ目のコミュ「うーわ」では、にちかさんが先輩の店の手伝いで写真撮影の仕事をしています。イラストを見る限り、果実入りジュースの宣伝なのでしょう。これも「水と食べ物のあいだ」なアイテムですが、ギャラの出ない身内同士の仕事だからということかもしれません。「喉が渇いた演技」もしっかりこなしており、「仕事(=水)」については順調そうです。
話がそれますが、「アイムベリーベリーソーリー」で職場体験を嫌がっていたにちかさんがノーギャラの仕事を受けているのは、もしかしたら真乃さんとの会話の中で何か心境の変化があったのかな?と思ったり。ビハインド(韓国のスラングで舞台裏ショットのこと)をシャニPに撮ってもらってるあたりが彼女らしいですけどね。
さて、2つ目のコミュ「赤いやつほんとマジ」。こちらもさっきの現場の続きで、休憩時間にみんなでカレーを食べています。「家庭の味感がない」という感想は、この場が完全なプライベートではないことを示唆していそうです。
福神漬けが食べられないにちかさん可愛い〜〜〜〜〜〜で終わらせたいところですが、ここでちょっと気になることがあります。
これ、「福神漬け」って美琴さんの比喩ではないですか?「辛いかと思ったら微妙に甘いし、てかこれ正体何?って感じだし…」というのは、にちかさんから見た美琴さんの印象をそのまま表現しているように思えます。意外と抜けていてギャップがあるところもそうですし、「正体何?」からはフード理論で言う「正体不明者はフードを食べない」も連想されます。何より「めっちゃめちゃ赤い」。「赤いやつほんとマジ」というタイトルからも色は重要なポイントでしょう。どんどんこじつけっぽくなっていきますが、福神漬けの由来が「七福神」であることも、にちかさんが美琴さんを半ば神格化していることと重なります。
そして、にちかさんはそんな福神漬けを食べることができません。「家では食べる」とのことですが、ほとんど飲み込むようにして食べているようで、味わってはいないでしょう(身体に悪そうだからやめて…)。選択肢次第では自分で食べてくれますが、やはり味を楽しんではおらず、「水と食べ物」の考え方を当てはめると美琴さんとの関係をだいぶわかりやすく示しているように思えます。
ちなみに、大声を出してしまったことをごまかすために「ちょっとお水こぼしそうになって」と言っている点も、「仕事相手にボロを出しそうになる」ことの暗喩じゃないかと思います。そういえば、美琴さんはにちかさんの前で水をこぼしていましたね。
「美琴=福神漬け」説、既に言われてるだろうと思って「美琴 福神漬け」でツイート検索したりしたのですが(どういう検索ワード?)、1件ヒットするかどうかくらいでした。さすがに自信がなくなってきましたが、本記事においては解釈の一つとしてアリだよねということにさせてください。
これは完全に余談ですが、にちかさんとシャニPの関係が親子っぽいという話について。あくまで我々が状況証拠から好き勝手言っているだけで、作中の誰かがシャニPと七草父を似ていると評したことはない…はずです。家庭環境というデリケートな問題にオタクの願望を持ち込み過ぎるのもな〜と思っていたのですが、このコミュで「PTA」「授業参観」と、明確に親子関係を意識させるキーワードが出てきてしまいました。いずれ必ず「そういう話をやる」つもりなんでしょうね。今年のクリスマスが怖い。
まとめ
ということで、ノー・カラットで考えた「水と食べ物」の理論を最近のコミュにも当てはめて読んでみましたが、いかがだったでしょうか。勝手に私が比喩表現を見出しているだけなので妄想の域を出ませんが、シーズにとって水や食べ物が重要であることは確かだと思います。
ノー・カラットは、仕事で足を引っ張っているという気まずさから水を飲みに行っていたにちかさんが、美琴さんから水をもらうまでの話でした。アイムベリーベリーソーリーでは、逆ににちかさんが美琴さんに水を渡そうとしています。【FEEL】で一緒にかき氷を食べていることを鑑みても、二人の関係が前に進んでいることは確かでしょう。この意味で、にちかさんの「渇き(仕事上の悩み)」に関してはある程度解消されたと言えそうです。
一方で、2人はいまだ空腹なままです。【1億回目くらいの、その夏】でにちかさんはカレーを食べていましたが、おそらくまだ美琴さんとは福神漬けが苦手なことを言い出せる関係にないでしょう。この「飢え」の問題をどう解消していくのかが、これからのシーズのコミュで描かれるんじゃないかと思っています。単純に美琴さんと一緒に食事をする関係になっていくのか、あるいは別の形で関係性を模索していくのかはわかりませんが、個人的に注目しているポイントです。
最後に今後の展開を予想しておくと、水分を多く含んだ食べ物で、ゼリーやかき氷よりもさらに「食事寄りのもの」が出てくるのだとすれば、「にちかさんが体調を崩した美琴さんにおかゆを食べさせるコミュ」なんかがあったらいいなと思います。体調管理の話から「セルフラブ」にも繋がりそうですし。さらに、これから季節が冬に近づいていくということは「七草家で鍋パーティー」がありますよ、確実に! いや〜楽しみだな。あっ、オタクの妄想の話ね。