Outer Wilds探査艇をプラ板でスクラッチビルドした
今年2月、Outer Wildsという宇宙を探検する最高のゲームをクリアしたところ、エンディングのあまりの衝撃で頭を真っ白にされ、何故か主人公の乗る探査艇の実物がどうしても欲しくなった。
それまでプラモを触ったことすらなかったが、次の日から本能的な衝動で材料と工具を買い集め、見切り発進のスクラッチビルド(=市販のキットを使わずに自分でプラ板から切り出して組み上げる作り方)で作り始めてしまった。
それから9ヶ月経ち本年11月、探査艇がようやくの完成を見たので、この期間に一体どのような作業とあほの失敗とリカバリが発生したのか、似たようなチャレンジをしたい人がいればきっと参考になると思うので簡単にメモに残しておきたい。
準備
(1) 資料集め編
まず探査艇のスクリーンショットを360°撮りまくったり有志が作成した3Dプリント可モデルを見つめたりする。お金持ちはここで3Dプリントしてさくっとゲットしてください。
また、何かしら初心者用のプラモ本やガンプラ本を読んでおくとこれからの作業のイメージがしやすくなるし、nipperとかホビージャパンウェブにはTIPS記事が大量にあるので好きなタイミングで目を通すとよい。今になって考えなおせばいきなりスクラッチ挑戦の前にさすがに何か1つ市販キットを触っておいたほうが後々の理解度と効率が10倍ぐらい上がったと思うのだが、そんな理性的な判断ができれば今こんなことになっていない。
(2) 材料編
組み立て作業の9割は以下のような工程が占める。
プラ板から円や四角や三角形を切り出す
組み立てて箱や曲面の概形を作る
絶対にどこかに隙間が空いていたり継ぎ目ができているので、次の手順で埋める
(1) 幅2mm以上の大きいギャップをエポキシパテ(粘土みたいなパテ)で埋める
(2) 幅0.5mm~1mm程度の小さい傷をラッカーパテ(ねばねばしたパテ)で埋める
(3) 細い線に見えるような傷を溶きパテ(さらさらしたパテ)で埋める表面をきれいにやすりがけする
別のパーツとの接着面をマスキングテープで保護し、サーフェイサーを吹く
場合によって3.-5.を繰り返す
穴をあけて棒を差し込んだりして、別パーツと噛み合わせる部位を作る
また、この工程で使った材料は以下の通り。(製品名も書いたけど、別にこれでなくてもいいはず)
プラ板: 厚み0.3mm, 0.5mm, 0.8mm (WAVE, 目盛り付き)
プラ丸棒 径1mm, 2mm, 3mm, 5mm、プラ角棒 2mm (タミヤ)
エポキシパテ (WAVE, ミリプット)
ラッカーパテ (GSI クレオス, Mr.ホワイトパテ)
溶きパテ (GSI クレオス, Mr.溶きパテ)
サーフェイサー (GSIクレオス, Mr.サーフェイサー500スプレー)
これに装飾用で以下を追加。
針金: 径1mm~2mm程度
タコ糸
ケーブル (壊れたイヤホンやiPodの充電器からちょん切った)
ビニールテープ (青、橙、緑)
おゆまる (お湯で柔らかくなる透明粘土)
➡ ライトとか重力水晶の光などの素材として使った。また、おゆまるで量産したいパーツの型を取ってパテを流し込むことで作るのが面倒なパーツをコピーできたりする。エンジンのノズル(?)が10個必要になったので、この方法で量産した。
これらをくっつける接着剤が3種類。
タミヤセメント流し込みタイプ(緑のキャップ)
➡ プラ板、プラ棒などプラ素材(ポリスチレン)同士をくっつける。完全硬化には時間がかかるみたいだが動かなくなるのは早い。素材の表面同士を溶かして融合させるので瞬間接着剤に比べて接着が強固…か?流し込みでないタミヤセメント(橙のキャップ)もあるとかゆいところに手が届き効率が上がるが最悪無くてもいいと思った。ゴム系接着剤
➡ 布や糸のような繊維質のものとプラ素材をくっつける。瞬間接着剤(WAVE, ×3G)
➡ 上の組み合わせ以外の異種の素材をくっつける。筆者は最初「"瞬間"というぐらいだから全てのものをこれで一瞬でくっつけていけばいいのでは?」と思っていたが、値段はタミヤセメントよりだいぶ高いしプラ板は瞬着で溶けて割れるしうまくやらないと仕上がりは汚くなるし硬化した瞬着は衝撃ですぐ割れるので本当に良いことはなかった。また筆者は瞬着を手に大量にこぼして全てがめちょめちょになったり、それをティッシュで拭いたら激烈に発熱した上にその煙を上げるティッシュが手から全く取れなくなって軽く火傷したりしたので瞬着用のはがし剤はほぼ購入必須と思われる。発熱は結構シャレにならないのだが、じゃあこぼした瞬着はどうやって処理すれば…?という疑問は未だに解決していない。
(3) 工具編
本当に最低限必要な工具セットは恐らく以下の通り。
定規 (金属定規がよい)
カッターマット
デザインナイフ (OLFAのアートナイフとか)
コンパスカッター (プラッツ, スーパーパンチコンパス)
➡ 製品によっては「プラ板は切れない」と書いてあるが、0.3mm・0.5mm厚なら綺麗に切れる。0.8mmは切れるけど汚くなる。ピンバイス+ 径1mmのドリル (タミヤ, 精密ピンバイスD-R)
➡ 小さい穴を開けられる神のツール。1mmの穴を開けて1mmのプラ棒をねじ込んだりするが、こういうことをするなら本当は1.1mmぐらいのドリルで穴を開けるのが良いと思われる。ステップドリル (WAVE, HGステップドリル)
➡ 2mm~10mmの穴を選んで開けられる神のツール。ピンバイスで下穴を開けてから使う。やすり (ゴッドハンド, 神ヤス #120, #240, #400のセット)
絶対にあったほうがいいが無くても最悪何とかなるのが以下。
ニッパー
神ヤスを切るためだけのハサミ(※刃こぼれするので)
スパチュラ
➡ パテの加工に使う尖った棒みたいな工具。頑張れば爪で代用できる調色スティック
➡ 色塗りで使う道具。ヘラ状の部分でパテを均したりもできる。最終的に色を塗るならどうせ買うことになるピンセット
棒やすり
彫刻刀
なお刃物類を100均でそろえるのはやめたほうがいい。
こうなる。
作成
形成の具体例をいくつか載せる。基本的にはプラ板を切って重ねていく積層3Dプリンター方式でやっていけば理論上どんな形でも作れるのだが、予算面でプラ板をケチりたいので変なことを考える羽目になる。
(1) 円柱の作り方
(2) 半球の作り方(積層)
(3) その他特殊形状
アンテナの曲面は円に切り出したプラ板を鍋で茹でて指で曲げた。
探査艇の脚は"平べったい四角柱に対し斜めに棒が3本刺さった構造"をしている。この斜めというのが大変凶悪で、角度をつけて棒を通すための穴を開けるのが無理ゲーのためこの部分をあまり正確に作れなかった。ただ今思えば、四角柱を作ってから斜めに穴を開けるのではなく「予め計算した位置に穴を開けた板を複数枚重ねて斜めの穴が開いた四角柱を作る」というような積層方式でいけばそこそこうまく行ったんじゃないかと思う。今後の課題。
彩色
今回は水性ホビーカラー+ガンダムマーカーの筆塗りで仕上げたのだが、作成段階において彩色のことを何も考えずにパーツを接着しまくってしまったのでマスキングと塗りはみ出しの処理が物凄く大変だった。これ以上のことは筆者には何も書けない。色塗り何もわからない……
終わりに
この通りとにかく手を動かせば探査艇が作れるわけだが、いかんせん労力が要るのは否めない。
ここで1点朗報なのだが公式からLEGOが出るかもしれない。欲しい…!!!
LEGOってことは複数買ってパーツの組み合わせを替えればVentures全員の探査艇が再現できるということだ!(Gabbroの船の樽はなんとかしましょう)(アトルロックの探査艇はどうするのか)
スクラッチビルドで全員分を作ることを想像すると卒倒しそうになる。工業製品ってすごい。
スクラッチビルドのTIPS記事が工業製品褒めて終わることある??