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「"好き"を仕事に」をやめようと思った話
好きなことを仕事にする
そう言われて頭に浮かぶ職業は編集者だった。
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小学生からマンガを読み始めた。
はじまりはスーパーで母に「ちゃお」を買ってもらったことだ。
それが面白く、毎月母にねだるようになった。
単行本の存在を知ってからは専ら単行本派になり、出版社のホームページから新刊情報を獲得し、書店で買った。
そして、4年生頃からは青空文庫、角川つばさ文庫へと移っていった。
「黒魔女さんが通る」や「怪盗レッド」、「名探偵夢水清志郎事件ノート」などを読んだ。
中学生になると、いわゆる一般図書も読むようになった。
1番ハマったのは「図書館戦争」。
有川浩先生は作家買いした。
高校時代はスマホゲームにハマったこともあり、マンガや小説を読む機会がめっきり減ってしまったが、商業BLに出会い、再び書籍を手に取るようになった。
今では、娯楽の中で商業BLの占める割合が大きい。
無くなったら困る。心が栄養失調になる。
このように書籍は長らく私の娯楽として存在感があり、現在も娯楽二大巨頭の1つだ。
「楽しみを作っている側に行きたい!」
編集者を志したのはそういう思いがあったからだ。
憧れだった。
ーーー
しかし、この志が揺れ始めた。
きっかけは大学の就活入門セミナー。
講師の方がこんなことを言った。
「僕は新卒で旅行会社に就職しましたが、1年もしないうちに辞めました。僕は旅行が好きだったけれど、他人に旅行を勧めるのは向いてなかったです。」
ハッとしてしまった。
私も他人へのおすすめはあまりしない。
誰かと自分の好きを共有しようとしない。
共有できた楽しさを感じるより共有できなかったときの虚しさを感じたくない思いの方が強い。
所詮、マイペースに1人で楽しむことが性に合っている。
しかし、これは商業出版に携わる人間としては致命的な考え方だと思う。
広くアピールして購入を促していくことを諦めているからだ。
そうして、一度「向いてないかも…」と考えると、次々とその理由が出てきた。
私は作品の好き嫌いが激しい。
絵のタッチ?雰囲気?が合わないだけで、どれだけ評判が良くても読まないことが多い。
作品だけでなく、そもそもジャンルの好き嫌いもある。
私は現在、商業BLにだけ興味があるので、他のジャンルの担当になって頑張るかと聞かれると自信がない。
これではダメな気がする。
また、自分から新規開拓をしない。
レビューサイトを参考にしまくるし、pi〇ivを見るときも「100users入り」と評価の高いものを探して読んでしまう。
人がいいと判断したものを後追いで読んでいるようでは新しいものを売り出す出版社ではやっていけなさそうだと感じる。
そして、表現ベタ。
商業BLのレビューサイト「ちるちる」に作家インタビューの記事があるが、その最後に担当編集があらすじやおすすめポイントを書くことがある。
あれを書ける気がしない。
努力や慣れでなんとかなるかもしれないが、私はあれを読んで買おうと決める消費者である方が好きだろう。
以上のように考えた挙句、
”好き”から離れた仕事をして適度なストレスを溜め、それを”好き”で発散させた方がいいのではないか?というドMな発想にまでたどり着いた。
大変と楽しみのギャップをつけることで幸せを倍増させる計画だ。
何はともあれ、業種や会社など就活における視野を広げようと思った。