祖母の肛門を見た日
今日、私が生まれて33年の間いつも私を愛し慈しみ事あるごとに手を差し伸べてくれた祖母の肛門を見た。
要するにそういう介護状態に入ったということだ。
初孫である私のおしめはあなたに何度変えてもらったのだろう。
物心つく頃には祖母に両足を抱えられ「しーっ」って耳元で囁きながら庭でおしっこをさせてくれたことを思い出す。
そう、私は祖母に抱えられて排泄をしていたのだ。
ならば今日の私は祖母を抱えていたかった。
しかし実際は介護ヘルパーの女性がベッドに横たわる祖母の肛門に浣腸を差すその横で「やり方を教えてください」と控えめに言うのが、まるでせめてもの誠実さというか、これまで祖母がしてきてくれたことに報いる最低限のふるまい方であるかのように、要するに突っ立っていた。
そぼの尻はとても白くシミ一つなく、私も介護されるときはこんなお尻でありたいなんて、まるで他人事みたいに思えるほど女らしかった。
申し訳ないと小声でつぶやく祖母の目からは苦しさからなのか羞恥心からなのか少し涙が出ていて、でもそれを直球で受け止める器が私にはないから、
なんとなくやり過ごした。
なんとなくやり過ごしたからか、その後は普通に夕食を食べて久しぶりにビールなんか飲んじゃって、そういえばじゃないけど「今日はお祖母ちゃんの肛門初めてみたけど私のより色がキレイだな」なんて思える余裕。
余裕?
を、中途半端に心に浮遊させながら、やっぱりこれって一つのターニングポイントなんじゃないかなぁと思って記録。
泣かないでおばあちゃん、私は全然平気なんだから。
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