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「画餅とボーイズラブと恋活パーティー」日記|小野寺

私はボーイズラブが好きで、何故かと聞かれて説明するなら「自己投影せずに恋愛関係を観測して楽しめるコンテンツだから」だ。
もう少し自分の心に正直に、情深く宗教的な言い方をするならば「過去今よりもっとままならなかった自分を楽しませて支えてくれた存在だから」が正しいと思うのだが、端的に言えば冒頭の説明になる。

ボーイズラブには様々な作品があって、イチャイチャ&性描写以外にも山あり谷ありなストーリー展開がある。その中で、顔の綺麗な男たちが実生活では(ほぼ)ありえない、ねばっこくない恋愛&信頼関係で結ばれるのを見ると、ときめく。活力がみなぎる。


実際の恋愛はどうだろう。コンテンツはすべてこの世の出来事からうまれているとはいえ、人間関係はそんなにときめきで作られていないし、毎日変化が起きて侮ったり利用されたり病んだり支配したり傷つけたりそれらに悪意がなくて怒れなかったりと心はいつも忙しい。そんな時間の中でほんの数パーセント、「あーあ、一緒にいて良かった!」と思える時間があったりするから何とか成立しているだけで。好きな男と寝ても寂しい時は寂しいし、好きでもない男と寝ても虚しい。


楽しいコンテンツを享受できれば実際の恋愛をしなくていいのか、と訊かれたら、そんなことはないと私は思う。生身の人間と関わって傷つく経験なんて、いくらあってもいい。などと言いつつ怖気付いている私は全く経験豊富ではないが、絶対恋愛なんてした方がいい。コンテンツを「絵に描いた餅」と言う気はさらさらなく、絵に描いた恋愛で楽しいひとときを過ごすことができ、心は満たされる。が、実際の恋愛でないと痛みがないから賢くならないし、腹は膨れない。


そう思ってずいぶん前に「オタク向け恋活パーティー」なるものに参加したことがあった。オタク向けと銘打って集められた男女混合の集まりなのに、蓋を開けてみたら男性のほぼ全員から「フリーレンが好きで、頭空っぽにして観られるのがいい」と言われて面食らった。熱狂してもいないのに、初対面で熱狂を晒せる狂気も持ち合わせていないのに、オタクを呼称するのは私の流儀に合いませんので……。こっちは腐女子ですと開示する気満々だったのに、アホらしくてやめた。その後友人夫妻と待ち合わせて飲んだ町屋駅の飲み屋は、ちょっとないくらい旨かった。



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