「琵琶湖で祈る」日記|小野寺
滋賀に行ってきた。
彦根駅を降りて駅前通りを抜けて城を過ぎ、港に向かって直進すると、ごうごうという風の音とさながら海のような波音が聞こえてきた。海辺ほどベタつかない、それでも冷たい風を受けながら、巨大な琵琶湖の一片を見た。
声を張り上げる気も起きないほどの規則的な轟音に包まれて、あたりを見渡した。道路から短い階段で降りられる狭い砂浜の先に、人影があった。なんの気無しに眺めていると、それはみじろぎもせずかたく抱き合っているズボンの学生服を着た女生徒達らしいことが分かった。
空と山と海の、濃紺とオレンジが溶け合っている。
一瞬、彼女達が幸せでありますように、と思ったが、それはなんて無責任なんだろうとも思い直した。それでも何かを祈りたくなって、私は手すりにつかまって身を逸らして曖昧なグラデーションの彼方を見つめながら、自分が見えている世界と、それ以外の世界に、できる限りの幸福と幸運が降り注ぎますようにと本気で祈った。
自分の頭で解説しようのない、身体で太刀打ちできない広大な自然。それを目の当たりにした時、切実に何かを祈りたくなるのはどうしてだろう。旅から帰れば生活に追われてしまうのだけれど、この壮大な祈りは何かを変えられる気がした。絶対に。