1分で読める短編小説【自販機の名前】最終話6話/全6話
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【自動販売機】
それが私だ。
今日はアメリカでの名前を教えてもらった。
教えてくれたのは、前に私を殴った、七三分けのサラリーマンだ。
手にはカップ酒、ほろ酔いの所を奥さんと喧嘩をして追い出されたらしい。
私の隣で屈んでチビチビをお酒を飲みながら、私に愚痴をこぼしている。
私に話しかけるのは、小さな子供か、酔っぱらいくらいだ。
今回は、後者の方らしいが。
「俺だって…俺だってな。○○に憧れていたんだ。」
私は初めて聞く言葉に、最初は何に憧れていたのかわからなかった。
だが、話を聞いていくと、どうやらそれは、アメリカでの私の事のようだ。
私に憧れるとは不思議な人だ。
彼は明確に自動販売機と言ったわけではないが、良く似ているので、おそらく私の事なんだろう。
彼は日本人だから、アメリカでの私の給料の話はしていなかったが、
憧れの彼は多くの人に、ありがとうと言われているらしい。
憧れの彼は時々、理不尽に怒られたり、理不尽な目に合うらしい。
憧れの彼は、誰かの危機を救ったりするらしい。
憧れの彼は、特に仕事でもないのに、恋のキューピットになったりするらしい。
やはり、私だ。
【自動販売機】
それが私だ。
この国の方からは親しみを込めて「自販機」なんて愛称で呼ばれたりする。
そして、
【クラーク・ケント】
アメリカでは親しみを込めて「スーパーマン」と呼ばれているらしい。
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自動販売機の名前。以上で最終回となります。
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