途上国の貧困層向け私立学校と新型コロナ
こんにちは、理事の畠山です。クラウドファンディングへのご協力ありがとうございました。おかげさまで目標を達成できたので、学校閉鎖中も子供達の学習が継続できるように全力で支援していきたいと思います。また、セカンドゴールは達成することができず、こちらのページで解説しているように、子供達の学習支援のためには皆さまのさらなるお力添えを必要としているので、どうぞ引き続きよろしくお願いします。
話は変わりますが、サルタック・ネパールの初代代表と一緒に執筆した、ネパールの幼児教育セクターに関する報告書が世界銀行・ユニセフから出版されましたので、ご笑覧ください。折角幼児教育に関する色々な知見を有しているので、より多くの方々からのご支援を頂いて、サルタックとしても幼児教育分野に踏み出していけると良いなと考えています、どうぞよろしくお願いします。
さて、本題に入ります。今回は新型コロナと教育の民営化についてお話しようと思います。世界的に新型コロナの影響が教育セクターに及び、今なお多くの子供達が学校に通えない事態となっています。その影響については、インターンの古谷さんが女子教育に着目してまとめてくれたり(記事)、理事の山田がネパールを事例に解説してくれているので(記事)、ぜひご覧ください。
古谷さんや山田の記事と違い、やや不要不急なトピックではありますが、私は教育の民営化、特に貧困層向けの私立学校の観点から新型コロナと教育の話をしようと思います。新型コロナと教育の民営化は、確かに不要不急ではあるのですが、国際教育協力分野の旗艦誌であるユネスコのGlobal Education Monitoring Reportの来年のトピックがNon-State Actors in Educationと、ホットトピックではあります。これに関する主な論点は、こちらの記事で解説しているので参照下さい→私立教育は是か非か?世界を揺るがす私立教育論争
21世紀に入ってから、世界的に見ると私立学校で学ぶ子供の割合は倍増しており(日本も例外ではなく、私立学校や選択制下にある公立学校で学ぶ子供の割合は増加しています)、もはや如何なる教育政策を考える際にも、このセクターを無視して立案すると、とんでもない事になってしまいます。
これの良い例がインクルーシブ教育です。例えば、公立学校でのインクルーシブ教育をどんどん進めていっても、教育の民営化がどんどん進んでいる場合、私立学校の大半は障害児を受け入れていないので、教育セクター全体で見ると、どんどん非インクルーシブなものになっていくし、誰が公立学校で学び、誰が私立学校で学ぶかを考えると、社会全体としてなかなかの地獄絵図が出来上がっていく事が分かります、というのはこちらの記事で解説してみました→障害児をクラスメイトに持つと学びが阻害されるのか?-障害児教育の教育経済学
(話が脱線するので簡潔にまとめますが、ミルトン・フリードマンがなぜ教育は民営化されるべきか論じた時、①効果、②効率、③多様なニーズからそう主張していましたが、この中で③の観点は研究でも比較的見落とされていると思います。途上国の公立学校にインクルーシブ教育を適切に運用できるキャパがあるなら、そもそも現在の学びの貧困のような事態に陥っていないわけで、色んな関係者にインタビューをしてみて、規制と補助金を上手く活用して民営化を進めれば、途上国の不就学児の1/3を占めると言われる障害児の教育ニーズに私立学校が反応して、障害児がより教育にアクセスできるようになるポテンシャルを持っている、と私は考えています。まあその規制と助成金のシステムを考えるのが難しいのですが。あと、今年のGlobal Education Monitoring Reportのテーマと、来年のテーマを見て、畠山の問題意識は単にミーハーなだけじゃないかと思われた方は、大体合っているのでそれ以上は攻め込んでこないでください苦笑)
というわけで、新型コロナと教育を考える際にも、民営化を無視するのはあんまりよくないんじゃないかと考えるので、今回の記事はこれについてお話していきます。
1. 教育の民営化の多様さ
指導教官と関連する共著を提出した所ですが、教育の民営化とその影響を論じる時に、民営化の多様性を無視した議論は、往々にして方向を間違えます。
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