国際比較教育学は終わった学問か?―日本は外国の教育から学ぶ必要などないのか?
前回の記事の末尾で少し触れましたが、米国では教育の国際比較はもういらないのではないか?、という議論が巻き起こっています。この議論は、国際比較教育学の重鎮であり、Comparative and International Education Society (CIES)の会長も務めた、スタンフォード大学のマーティン・カーノイ教授が、国際比較よりも国内比較の方が有用であると主張したことに端を発しています。
日本よりも圧倒的にコスパの低い基礎教育を実施している米国ですら国際比較教育学はもういらないというのであれば、公教育支出はOECD諸国の中で最低レベルなのに対し、国際学力調査の結果を見ると常にOECD諸国の中でトップクラスにいる、世界でも類を見ないほどコスパが高い基礎教育を運営している日本も、もはや外国の基礎教育から学ぶことなどないのでしょうか?
国際比較教育学が終わった学問であるという議論は、あまり国際教育協力とは関係ない話の様に思われるかもしれませんが、国際教育協力を仕事にしている人の大学院での専攻を調べると、トップに立つのは恐らくこの国際比較教育学(International Comparative Education)です。ここ米国でも、東はコロンビア大学のティーチャーズカレッジ、西はスタンフォード大学と、教育大学院の超名門校にはこの専攻があります。
ではカーノイ教授が主張するように国際比較よりも国内比較の方が有益で、ひいては国際比較教育学は既に終わった学問で、さらに言えばコスパの高い基礎教育を実施している日本は国際比較教育学を通じて外国の教育から学ぶものなどないのでしょうか?今回の記事ではこれらの点について考えていきたいと思います。
1. そもそも比較教育学とはどのような学問か?
比較教育学を理解するうえで外せない論文は、CIESの会長を務められた、香港大学のマーク・ブレイ教授の会長就任演説のペーパーだと思います。
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