パン作りで近づく二人の女性『モロッコ、彼女たちの朝』【ムスンメン作ってみた】
9/17公開『モロッコ、彼女たちの朝』
この作品、日本で初めて劇場公開されるモロッコの長編劇映画で、モロッコ女性監督初のアカデミー賞代表なのです。
モロッコやカサブランカが舞台の作品は沢山ありますが、こちらはモロッコに住んでいる人たちの物語。
舞台はアブラが営むパン屋が中心ですので、聞いたことのない名前のパンがたくさん出てきます。映画を観ているとこのお店の売れ筋商品は「ムスンメン」というパンのよう。全編にわたり売れ続ける美味しそうな「ムスンメン」とはどのようなパンなのか。複雑な事情を抱えながらも近づいていく二人の女性の心情を想像しつつ、「ムスンメン」作ってみました。
あらすじ
臨月のお腹を抱えてカサブランカの路地をさまようサミア。イスラーム社会では未婚の母はタブー。美容師の仕事も住まいも失った。ある晩、路上で眠るサミアを家に招き入れたのは、小さなパン屋を営むアブラだった。アブラは夫の死後、幼い娘のワルダとの生活を守るために、心を閉ざして働き続けてきた。パン作りが得意でおしゃれ好きなサミアの登場は、孤独だった親子の生活に光をもたらす。商売は波に乗り、町中が祭りの興奮に包まれたある日、サミアに陣痛が始まった。生まれ来る子の幸せを願い、養子に出すと覚悟していた彼女だが……。
ムスンメンとはモロッコの軽食やおやつ
店頭で販売するのはもちろん、アブラの一人娘のワルダのおやつとしても食べられている「ムスンメン」。美味しそうと思っていたら、配給会社のチャンネルでクッキング動画が公開されていましたので見てみました。
これは簡単に揃えられる材料で作れる!映画の中で出てくる料理って気になりますよね。なんだか美味しそうに見えるし。今日のおやつとして食べることを目標に早速調理開始。(材料は動画をご覧ください。パンフレットにも作り方が載っています。)
材料が強力粉、薄力粉、セモリナ粉でなかなか歯ごたえのありそうなものが出来そうな予感。
早速レシピどおりに材料を混ぜ、こね始めるも水の量の調節を誤り、手に生地がくっついてベッタベタに。ここで予定外のセモリナ粉追加大量投入し、何とか生地をまとめて、1時間生地を寝かします。
生地をこねるってとても集中する作業で、無心になれる時間ですが、アブラは毎日これを繰り返して、生活のためにひたすらこねているのだろうかと考えてしまいました。心を固めて単調な毎日を送るアブラはある日、未婚で妊娠しているサミアと出会います。
成形して焼く
1時間寝かすも、まだベタベタな生地を無理やり成形。溶かしバターと油を手にぬり、5等分した生地を一つ一つ薄く延ばしては畳んでいきます。畳むたびにこれでもかと油とバターをかけ、水調整失敗で増量しまくったセモリナ粉をまた追加で振りかけていきます。
いよいよ焼き作業に!
四角く畳んで成形した生地をさらに薄く延ばし、温めたフライパンへ投入。ここでも油とバターを振りかけていきます。パチパチと軽やかに音を立て、膨らむ生地。
劇中アブラもサミアも素手で裏返していて、生地も鉄板も熱いだろうに何故フライ返しを使わないのか?疑問に感じていましたが、油とバターでぬるぬるの手を見て思いました。「他の道具触りたくない」と。油とバターでコーティングされているこの手なら触れそうな気持になるも、そもそも油とバターを大量に含んでいる生地はセルフで揚がってるような状態で、ムスンメン初心者の私にはハードルが高かった…。
フライ返しを使って何度か返すうちにパリパリのムスンメンの出来上がり!
畳んで延ばすことで層ができ、パリパリのサクサクになります。
小麦の風味とバターの香りは匂いから美味しそうで、これは早く食べたい!
砂糖が入っていないので、甘みは好みで調節。はちみつをたっぷりかけていただきました。ワルダちゃんみたいにチョコレートをかけてもいいし、ジャムやピーナッツバター、アイスクリームを乗せても美味しそう。ミントティーには絶対合うと思います。簡単に作れるので是非挑戦して、モロッコの文化を体験してみてください。
映画の中でアブラがサミアを認めるきっかけは、サミアが作るパン「ルジザ」の美味しさでした。一緒に手作業をすることは、向かい合って話をするよりお互いを理解出来るのかもしれません。特に複雑な事情を抱える二人は。
やがてサミアは出産し、産んだら養子に出すと決めていた心が母性によって揺らいでいきます。サミアの生き方によって前向きに生きることに一歩踏み出したアブラは、サミアに何を伝えるのか。是非サミアの選択を劇場で見守ってください。
モロッコの社会において女性の立場が低く、劇中でも描かれていますがそれが当たり前の国で、この映画がアカデミー賞モロッコ代表に選ばれたことは希望なのではないかと思いました。
9/17~9/23 ①11:45
9/24~9/30 ①9:50 ②13:45
https://longride.jp/morocco-asa/