クマは ハダカの ほうがいい『シチリアを征服したクマ王国の物語』【スタッフブログ】
『シチリアを征服したクマ王国の物語』スタッフブログ
動物が温厚で人間が残酷だった昔。シチリアには今よりずっと高い山がそびえ、山奥にはクマの王国があった。レオンス王は息子のトニオに川で魚採りを教えていたが、トニオが突然いなくなってしまう。失意のレオンス王に家臣がトニオは人の住む里に連れて行かれたのではないかと進言する。レオンス王はクマたちを伴って人の住む里に向かった・・・
やや角ばったポリゴンっぽいクマたちの造形に輪郭のくっきりした人間のキャラクター、濃い目の彩色、という非常に印象的なビジュアルの作品ですが、子供向けのシンプルな話の中にも深い意味合いが込められていて、これがなかなかの秀作。
物語は旅芸人ジェデオンと弟子のアルメリーナが雪山の洞窟でクマに遭遇するところから始まる。
クマに襲われると思ったジェデオンは咄嗟にクマ王国の物語を語って聞かせる。
もうこの辺りからして洞窟のクマとともに物語に没入してしまいます。
人の街では暴君が統治し、クマたちを侵略者と決めつけ、戦争になる。
82分と比較的コンパクトな作品、次々と物語が進み、クマたちの縦横無尽の踊りと闘いに引き込まれます。
写実的描写よりも抽象的・絵画的絵面による表現が観ていてなかなか心地よいのです。
人間の街でレオンス王はトニオと再会し、人とクマが共存する社会が実現する。
めでたし、めでたし・・・
ところが、物語はそこで終わらない。
子供向けの物語と思って油断していると、物語の続きは、世の中によくある犯罪や社会の矛盾、人の不信や偏見に根差した差別、富と権力への欲求など、腐敗の芽が生まれ、王国が危機に瀕する事態に遭遇するのでした。
そこで描かれる物語は、現在のウクライナを巡る危機とまるで相似形で、大昔のシチリアのクマ王国となんら変わらない現実に、軽く眩暈がする気がします。
原作はイタリアの作家ディーノ・ブッツァーティが1945年に書いた同名の童話。
第二次大戦の終結という未曽有の社会的危機の節目に、人の業のなせる悲劇を童話という形で具現化した物語は、世代を超越して訴えかけるものが心に響くのでした。
字幕版のセリフはフランス語、日本語吹き替え版は江本佑、伊藤沙莉、リリーフランキーという豪華なキャスト。
シネ・ギャラリーでは2月18日から24日までが吹き替え版、2月25日から3月3日までが字幕版で上映致します。
物語は最後にちょっとした謎を観る者に与えて、観終わったあとに、あれはどういうことなのだろう?と考える余地を残してくれます。
これがまた心地良い感じ。
軽妙な音楽と鮮やかな映像とともに、さまざまな社会の現実に目を向けざるを得ない、なんとも印象深い作品なのでした。
『シチリアを征服したクマ王国の物語』上映情報
2022/2/18(金)~3/3(木)上映
2/18(金)~2/24(木)まで
【日本語吹替版】①11:50~13:15
2/25(金)~3/3(木)まで
【字幕版】時間未定
決まり次第下記公式HPに掲載
取扱グッズ情報
『シチリアを征服したクマ王国の物語』は、特別版のパンフレットのお取扱がございます。
この機会に是非お買い求めください。
詳細は下記noteにて