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スタッフブログ

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#静岡シネギャラリー

『風よ あらしよ 劇場版』大杉栄・伊藤野枝の墓を訪れる

映画『風よ あらしよ 劇場版』が静岡シネ・ギャラリーにて公開中です。(2024/3/7までの予定) 2月24日に演出の柳川強さん、大杉栄の甥にあたる大杉豊さんをお招きし、『風よ あらしよ 劇場版』の舞台挨拶が行われましたが、その日の朝に静岡市内の沓谷霊園にある大杉栄のお墓を訪ねてきました。 映画の主役である伊藤野枝は福岡の出身、大杉栄は丸亀の出身であり、どうして静岡市にお墓があるのかというと、一旦福岡で埋葬されたものの、伊藤野枝が地元で忌避されていたことによる棄損が相次ぎ

『若き仕立屋の恋 Long version』~濃密な60分間

みなさん、こんにちは。 6/23(金)より『若き仕立屋の恋 Long version』の上映が始まります。 心臓の鼓動が全身を駆け巡る60分間。 是非、心をドレスアップ(するイメージ)してご鑑賞ください。 アジア映画大好きのアジ担としては、本作を当館で上映できるなんて幸せです。 ウォン・カーウァイ監督作「WKW4K」「欲望の翼」に続き、本作も全力でおススメします。 昨日のブログで、同じくアジ担スタッフが素晴らしすぎる内容の作品紹介をしてくれましたので、私が言うことは何も

会員限定「ポスター・ちらし蔵出し感謝祭」開催!!

桜の花が咲き始め、すっかり春の陽気ですね! 春になると意識が外に向き始めて、様々なものや事にわくわくする頻度が増える気がします。 そんなわくわくが発生するこの時期、久しぶりに「ポスター・ちらし蔵出し感謝祭」を開催することになりました!! 「ポスター・ちらし蔵出し感謝祭」とは… 会員の皆様に日頃の感謝を込めまして、これまで上映してきた作品のポスターやちらしを大放出するイベント。 なんと7年ぶりの開催です。前回は2016年に行われ、その際に残ったポスター+ここ7年分(諸事情で直

温めれば、何度でもやり直せる『チョコレートな人々』【久遠チョコレートを買ってみた】

『久遠チョコレート』は豊橋に拠点を置くチョコレートブランド。心や体にハンディキャップのある障がい者や性的マイノリティの人々にも活動の場を提供しようと夏目浩次氏が2003年に創業したもの。そこで働く人々と夏目氏の創業以来の歩みと奮闘を描くドキュメンタリー。 当初パン屋さんとしてはじめた夏目氏がなぜチョコレートブランドをはじめたのか? パンの製造には多くの手間と時間がかかること、一日経つと廃棄しなければならない収益率の悪さ、といった点が経営を圧迫しはじめる。 そうしたときにトッ

百の診療所より、一本の用水路を『荒野に希望の灯をともす』スタッフブログ

パキスタンとアフガニスタンで35年に渡り医療支援と用水路の建設に尽力した中村哲医師の活動を回顧するドキュメンタリー。 2019年12月4日に何者かに銃撃され死去した中村医師の活動は、これまでさまざまなメディアで報じられていますが、こうして改めてその活動全体を通して観てみると、その一貫した意思の強さと、支援の在り方についてのブレない姿勢に胸を打たれるのでした。 1978年にパキスタンのティリチミール登山の日本隊に帯同医師として参加の折、同地でまったく医療を受けられない患者が

『パンズ・ラビリンス』『シェイプ・オブ・ウォーター』の監督が贈る『ギレルモ・デル・トロのピノッキオ』スタッフブログ更新!

誰もが知るピノッキオの物語をギレルモ・デル・トロ監督が大胆に翻案、ストップモーションアニメとして製作。 2008年の企画発表から途中の中断を経てようやく完成をみたもの。 ピノッキオの映画化では昨年本館でも公開の本国イタリア製作、ロベルト・ベニーニがゼペットを演じる『ほんとうのピノッキオ』、劇場公開はないもののディズニープラスでの配信によるロバート・ゼメキスの『ピノキオ』と、このところ連続して新作が登場しているわけですが、原作にほぼ忠実な『ほんとうのピノッキオ』に対し、今作は

その絆が愛を変える。『パラレル・マザーズ』スタッフブログ

映画『パラレル・マザーズ』スタッフブログ※以下には物語全体の構成についての考察を含みます。 映画のタイトル的にもこれは二人のシングルマザーの出逢いについての話という印象ですが、実際は少し違う。 冒頭でジャニスとアルトゥロが話す集団墓地発掘についての会話は二人の出会いの単なるフックかと思きや、物語の大きな要素のひとつ。 ジャニスは集団墓地に曾祖父らが埋められた経緯や、一緒に埋められた人たちの名前や写真を詳細にアルトゥロに説明する。ここでフックにしては描写が丁寧だと感じるのです

運命を狂わす、スリリングな一皿『ボイリング・ポイント/沸騰』スタッフブログ

運命を狂わす、スリリングな一皿アンディの出勤の様子から最後まですべてワンカット、NO編集、CG不使用の文字通りのワンショット作品。 ワンショット映画というと場面転換でのカットや会話での切り返しができないといった制約があることで、物語が文字通り一続きになり、物語の起伏や自然な時間の経過が凝縮されることで独特のテンションを維持できる代わりに、観ている側は一息つくところが殆どなくなり、作品のペースについていくのが大変だったりするのですが、この作品もそうした意味で典型的なワンショット

海に残るか、陸にあがるか。彼は迷い立ち止まる。『ルッツ 海に生きる』スタッフブログ

映画『ルッツ 海に生きる』スタッフブログマルタというとシチリアの南方の小国ということ以外、殆ど知識を持っていませんでしたが、かつては英連邦の構成国で、宗教は98%がカトリックながら、言語はラテン文字を使用するアラビア語の一種、という特異なものとのこと。 本作は日本に紹介されるはじめてのマルタ映画とのことですが、伝統的な漁法を行う漁師もの、という一種ご当地映画的な外形でありながら、時代の変化に押し流される伝統的な生活様式や価値観の持ち主に訪れる試練、というかなりシビアな現実を淡

ついに母が教えてくれた おいしいスープのレシピと「済州4・3事件」の実体験『スープとイデオロギー』スタッフブログ

『スープとイデオロギー』スタッフブログ映画監督のヤン・ヨンヒ(梁 英姫)が在日朝鮮人として生きてきた自らの母、今は亡き父との関係を見つめたドキュメンタリー。 ヤン・ヨンヒ監督はこれまで自らの家族を描いたドキュメンタリー『ディア・ピョンヤン』『愛しきソナ』実兄を描いたほぼ実話のドラマ『かぞくのくに』を監督。 『ディア・ピョンヤン』の後、北朝鮮から謝罪文を書くように言われたがそれを拒否し、『愛しきソナ』を製作、それによって北朝鮮への入国禁止処分となった、とのこと。 ヤン・ヨン

ロシア政府の暗部に切り込む、緊迫のドキュメンタリー『ナワリヌイ』スタッフブログ

映画『ナワリヌイ』スタッフブログ 反体制派の有力者としてプーチンから忌み嫌われ、テレビや新聞など既存のメディアから封殺されたナワリヌイは、ネットでの活動を主軸にしたのでしたが、この映画で描かれる活動の様子を見るに、国境を越え速報性のあるネットでの広報活動の重要性を熟知しているのだと思います。 自らの生命の危機に瀕し、ナワリヌイは中毒事件の真相を追うことでロシアの暗部に切り込んでいきます。 ナワリヌイは英国に本拠を置く調査報道機関ベリングキャット(Bellingcat)の協力

妄想か、現実か、現代ロシアの病か、コロナ禍の世界の予言なのか?『インフル病みのペトロフ家』

2004年エカテリンブルクに住むペトロフは高熱に浮かされながらトロリーバスに乗る。料金を徴収するオバさんをはじめ、乗客はどことなく狂気じみている。バスはいきなり停車させられ、引きずり出されたペトロフは自動小銃を持たされ、連行されてきた特権階級と思しき人々を処刑するように促される・・・ インフルエンザによる幻覚なのか、それとも出会う人々が狂気に侵されているのか判然としないナンセンスな展開に加え、物語はいきなり過去に遡り、それも時間が前後しつつ、ときにリアルな景色がミニチュアに

パリ、モンテーニュ通り。美が生まれる場所『オートクチュール』②

クリスチャン・ディオールの歴史と特徴 引退を目前に控えた孤高のお針子と後代に暮らす移民Ⅱ世の少女の物語「オートクチュール」では、舞台背景であるクリスチャンディオールの幻のドレスや貴重なスケッチ画なども登場します。  クリスチャンディオールというメゾンについて少し知っておくとより映画をお楽しみいただけるかもしれません。 クリスチャンディオールは1946年デザイナークリスチャンディオールがフランスで創設したフランス・モードを代表するオートクチュールメゾン。 「チューリップライ

男はなぜ私の前に現れたのか『白い牛のバラッド』スタッフブログ

『白い牛のバラッド』スタッフブログ冤罪で夫を亡くし、未亡人となった女性がイランで生きていくことがどれほど辛いか。 見知らぬ男を家に入れたのを見られただけで借家を追い出されたり、不動産屋からは麻薬患者などと並んで未亡人に部屋は貸せないという。 夫の家族からは賠償金目当てに同居を迫られたり、ビダの親権を要求されたりする。 そうした暮らしの中にあってレザの登場は「神様が親切な友人を理由もなくくださったのね」との言葉どおり、思わぬ僥倖だったのだろうと思います。 しかし、レザに