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腹の底を見せない大人が爽やかに無双する 戦略人事アニメ「パリピ孔明」

孔明の前にあり得ない単語がついていて、それだけで笑ってしまうのですが、普段ほとんどアニメを見ない私も毎週楽しく視聴してます。
この「パリピ孔明」、タイトルからは想像もできない、非常にレイヤーの厚い、さまざまな角度から分析できる作品なんですよね。

今回はその辺をちょっとまとめておきます。

反転につぐ反転

私も決して詳しいわけではありませんが、多分、転生ものといえば、

超成熟社会である現代日本の知識や文物をもって中世〜近世欧州の文明レベルの異世界に転生して活躍する

のが一般的だと思います。
この作品ではあえてそれを反転させて、

現代日本に過去(約1800年も前の!)から転生してやってくる

というアレンジになっている。まずはそこが面白いなーと思います。

で、現代にやってくるというと、私が思い出すのは「ドラえもん」なんですが、ここもきれいに反転させていると思うんですよ。

ドラえもんは、未来の世界の汎用的なロボットで、未来デパートで販売されている未来の世界では当たり前の量産型の一般的なツールでのび太くんの世話を焼くんですが、

孔明は、過去の歴史的人物であり、天才であり、当時の軍略、当然ですが今もあり、有効な、伝統的な知識・知恵で主君を扶ける。

その辺は彼に助けられる阿斗こと蜀漢の後主・劉禅と、ヒロインの月見英子ちゃんも反転させられていて

劉禅:劉備の後継として生まれてきた男児で、皇帝だけれど、自分自身のためには生きられない人間。

英子:ごくごく普通の平民(!)で、女の子で、自分の夢を叶えるために行動する人間。

ここもすごく面白いなあと思うんですよ。
英子ちゃんは劉備の現代女子アレンジという気もするんですが、私が英子と阿斗との対比の方に視線がいくのは、最初に孔明が五丈原で病死する描写があったせいだと思います。
孔明は阿斗の行く末についてかなり気を揉んだでしょうから、自分の夢、意志を持ち、なおかつ健康な英子ちゃんをサポートするのはきっと単純に気楽ですごく楽しいだろうなあという気がしてならない(笑)。

若者の夢を応援するおじさん

この「パリピ孔明」の転生もののバリエーション、原作というか史実からの反転という層が、

・自分に力を貸してくれる妖精的な存在を得る

という、少年漫画の伝統的な物語を支えているのがまた面白いとこであったりします。

で、「パリピ孔明」がすごいなあと思うところが、孔明がロボットでも宇宙人でも異世界から来た英雄でも王子様でもなく、頭が切れて胆力のあるとても優秀だけど生身のおじさんであるところです。

おじさんなので、面の皮が厚く、目的のためには手段を選ばず、誠実さで360度丸く収めていますけれども、やってることだけを見れば十二分に政治的で腹黒い。

でも、燻っている若者をサポートしながら、腹の底を見せず、さわやかに無双している孔明の人事的な黒さは大人にとっては多分非常に面白いはず(笑)。
1800年前の軍略が効いてしまう、人間の変化のなさに対する皮肉もね。

でもその黒さも皮肉も目的が「若者の夢を叶える」であるために、なんとなく許せてしまうんですよ。

若者に限らず、人の夢を応援することができるってやっぱり尊いことですから。

供養

もう一つの見せ場が、孔明が自分の人生について、彼自身の立場での思いを語るところです。
ここは能と同じく、語ることによって成仏していくという構造になっています。

蜀の顛末を知り、馬謖についての分析など、もちろん本当に孔明が語るわけではありませんが、孔明の過酷な人生を知っている側としては、不思議と救われた気持ちになる。

こうやって新たな解釈を加えられて、現代にも受容されていくことで、三国志の物語が続いていくわけですが、語り継がれることにより蘇るし、浄化されるし、昇華もされていく。
物語を読む側である私たちがそういう連続性に直接触れたような、そんな錯覚を感じさせてくれる。

ほんとによく練られた物語だなあと思います。

まとめ

というわけで「パリピ孔明」については、

英子やサポートされる若者の視点で孔明先生の知的無双を楽しんでもいいし、
大人の視点で孔明の政治的黒さをニヤニヤしてもいいし。
もっと俯瞰して多層的に新しい物語を感嘆するのもいい。

さまざまな味わいを楽しめるお得なアニメだなあと思うわけです。

今期は「SPY x FAMILY」も見ていますが、あちらも総合芸術といっていいような素晴らしい作品で、もしかしてアニメーション制作に世界市場から資金が流れると、もっともっとすごいものが見られるのでしょうか?
楽しみですね😊

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