独立
妻から「親権で争うつもりはないから、離婚したいの。」と切り出される1~2カ月前のこと。
秋の風が吹き抜ける夜、我が家は静寂に包まれていた。その静けさの中、夫婦関係に微かな亀裂が入る音が聞こえてきそうなほどの静寂。
「ちょっと聞いてほしいことがあるの」
妻の瞳には新たな決意の光が宿り、何かを隠すように僕の目を避けていた。そのまなざしは、どこか遠くへと向けられているように感じられた。
「社内で一番優秀な同僚がね、起業するんだって。その人から、一緒にやらないかって誘われているの…」
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