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セレンディピティな夜

「セレンディピティ」(Serendipity)という言葉を私に教えてくれたのは、もう10年以上前、レトロフトで出会ったカナダ人の夫婦でした。
彼らは行き先を決めずに世界中を旅しながら写真を撮っていたのですが、鹿児島でレトロフトのオーナーと出会い、旅の間に撮影した作品の展示会をレトロフトのギャラリーで開催することになったのです。
彼らがどうやってレトロフトにたどり着いたのか、詳しい話は忘れてしまったのですが、まるで導かれるように人や街と出会い、レトロフトに滞在しながらギャラリーで展示をすることになった彼らはまさに、セレンディピティーー「幸福な偶然を引き寄せる力」そのものを体現していると感じたのです。

昨日の夕方、友人のカフェが夜まで開いている事を知った私は電話で予約し、すっかり暗くなった中車を走らせました。

おかえり、と言ってくれているようなやさしい灯り

2025年のカフェ始めをするならここ、という思いで白い扉を開くと、満面の笑顔のオーナーさんが出迎えてくれました。

白い空間にセンスよく置かれた無垢材のアンティーク家具、シンプルなうつわ、そして遊び心とホスピタリティを感じさせるメニューやお手拭き。
隠れ家のような雰囲気とオーナーさんの人柄そのものがヒーリングになる、そんな場所なのです。

席に着こうとすると、奥のテーブルにいらっしゃった方から呼びかけられてびっくり。
秋のイベントに出展した時に会場に来てくださったお客さま方でした。
オーナーさんも交えてブロカントなどのお話をするうちに、フランス旅の話に。
お気に入りの場所に集まる人々は、たとえ面識がなかったとしても同じような価値観を持っていることがほとんど。ましてや、私のお店にも来てくださる方なら好きなもののポイントも似ているわけで……そうなると、どんな旅をしたいのか、どんな雰囲気ならより充実した滞在になるかもイメージしやすくなるのです。


最後にはまた旅の作戦会議をしましょう!と約束して帰宅したのですが、帰り道、私もわくわくした余韻をずっと感じていました。

「自分で作る旅」は自由な分、ツアーとは違っていろいろなリスクもあります。
けれど旅の計画を自分で立て、それを実行することで、普段の暮らしでは曖昧になりがちな決断力や判断力、臨機応変に対応する柔軟性などが一気に磨かれ、それが自分を成長させるのだとも思います。旅人に「行動力」が備わるのは、これらの経験を繰り返しているからかもしれません。

コロナ禍の少し前からずっと、私は旅で得てきた経験を誰かの役に立てられないかと考え続けてきました。その答えが、昨夜訪れたカフェで出会った方々とお話ししたことでより輪郭を持って見えてきたような気がします。

こんな素敵なセレンディピティを得られたのも
いつも心地いい空間とおいしいものを用意して待っててくださるあの方のおかげ。
merci mille fois!

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