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めっちゃピンチ【ミリの妄想日報】


2025年2月4日(火)の妄想絵日記

仕事が忙しい。

やることが多い上に、リングの向こうにいるヘビー級チャンピオン的な大企業を相手に、週に何度も打ち合わせで説明しなければならない。説明と質問の応酬、沈黙の圧力、そのたびに前頭葉がじんわり溶けていく。

その夜、同居人と半ば投げやりに足を転がすように近所を歩いていた。激務でふらつく思考を散らすように空を見上げると、街灯に照らされたアパートの2階のベランダが目に入る。

そこにはピンチハンガーが2つ、何も干されていないままぶら下がっていた。

「これは…何かのメッセージに違いない」
「2つのピンチハンガー、ダブル・ピンチ・ハンガーか…」
「頭文字を取ってD・P・Hとすると…うーん、ダブル・ピンチ・ハゲ?」

…そうか、めっちゃピンチで、禿げそうってことか。

自宅にも同じようにピンチハンガーが2つあるのを思い出す。
そうだ、ピンチのときはベランダにピンチハンガーを吊るしておこう。誰かが気づいて私たちみたいに笑ってくれるかもしれない。


木川田みり(きかわだみり)
1996年生まれ。東京都在住。作家、イラストレーター、UIUX デザイナーとして活動中。ザ・チョイス年度賞優秀賞受賞。
2022年に初の個展『熱いお湯で洗濯したら縮んじゃった』を開催。近年は、触れ合った言葉から妄想を繰り広げた「妄想絵日記」を日々手にする「レシート」の裏に描き、instagram や X にて毎日更新している。
https://www.instagram.com/sarasaranokami
https://x.com/makimakinokami

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