
ラリーの続かないバトミントンを、原っぱはそのやさしい青で眺めた【ミリの妄想絵日記】

近所の原っぱでフリスビーをしていた時、勢いよくジャンプして取った!と思って前を向くと、そこにはバトミントンをしているカップルがいた。
彼らはシャトルの代わりに軟式ボールを使用していて、互いに言葉を投げつけ合っているような、全くラリーの続かない、ぎこちない会話のような投げ合いをしていた。
けれどなんだか「楽しそう」に見えるその2人の顔に滲んだ確かな「幸福感」に私は圧倒されていた。青い芝生に反射する柔らかな陽光が、彼らを優しく眺めているようで、私もその光と一緒になって眺めた。
思い出していた。身体を動かして、関節の動くその直感的な動きをひたすら確かめるように運動していた学生時代のことを。とてもシンプルだった。嬉しかった。逆上がりができた。側転ができた。ちょうどいいタイミングで信号を渡れた…。
あらゆる嬉しかったことを思い出しながら、右足の前腿に力を込め、勢いよくフリスビーを放った。
木川田みり(きかわだみり)
1996年生まれ。東京都在住。作家、イラストレーター、UIUX デザイナーとして活動中。ザ・チョイス年度賞優秀賞受賞。2022年に初の個展『熱いお湯で洗濯したら縮んじゃった』を開催。近年は、触れ合った言葉から妄想を繰り広げた「妄想絵日記」を日々手にする「レシート」の裏に描き、instagram や X にて毎日更新している。https://www.instagram.com/sarasaranokami
https://twitter.com/sarasaranokami2
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