![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/152266133/rectangle_large_type_2_1976d7b44d32de0757904151d5c8980f.jpeg?width=1200)
あいつは羽が折れたからって急に飛んだんだ【ミリの妄想日報】
![](https://assets.st-note.com/img/1724831322383-m2snhcW2zQ.jpg?width=1200)
不謹慎の星に生まれたと思っている。
仕事の関係者が「飛んだらしい」と聞いたこの日、私は高鳴る胸の鼓動を密かに抑えていた。
「飛んだ」という言葉がよくないことを指すのは社会に生きてきて当然承知している。少なくとも、仕事を放り投げ、周囲に迷惑をかける行為であることに違いない。
それでも、「飛んだ」と聞いて最初に思い描くのは大空を自由に飛び回る一羽の鷲の姿だ。
豊かな笑顔で飛び立とうとしたその鷲は、なぜか羽が折れて痛そうにしている。
飛んでいるのに飛べない。あれ?飛んだのに、飛べないなんておかしい。そうか、僕は羽が折れてしまったから飛んだんだった…。
苦しそうな表情を浮かべた彼は、空を飛ぶことを諦め、地上で不器用なステップを踏み出した。今まで真面目に飛ぼうとしていた自分が急に馬鹿らしくなり、ちょうちん踊りでもするかのようにヨタヨタと街へ繰り出していく。
そんな姿を想像しながら、私は彼といつかどこかで遭遇して、一杯交わすことを夢見ている。
木川田みり(きかわだみり)
1996年生まれ。東京都在住。作家、イラストレーター、UIUX デザイナーとして活動中。ザ・チョイス年度賞優秀賞受賞。2022年に初の個展『熱いお湯で洗濯したら縮んじゃった』を開催。近年は、触れ合った言葉から妄想を繰り広げた「妄想絵日記」を日々手にする「レシート」の裏に描き、instagram や X にて毎日更新している。https://www.instagram.com/sarasaranokami
https://twitter.com/sarasaranokami2
「PARK GALLERY」で連載していた過去のエッセイ読めます↓↓