ペースト状になった過去のあれこれ【ミリの妄想日報】
10月の末から長いこと体調を崩し、お布団とすっかり仲良しになった私は、激しい吐き気に襲われていた。冷たい汗を纏いながら足早に洗面所に向かうと、ついに口からペースト状のものが吐き出された。
目の前に流れ出たそれは、まさに過去のさまざまな情景であった。
「ナンシー関の記憶スケッチアカデミー」という本をリビングのソファで読み、目を食いしばるように笑い泣いていた母の姿。毎回浴槽に入ると、ざぶんざぶんと荒波を漕ぐような音を立てる父のお風呂航海の音。「どこ行くの?」と問うと「ソトォ!」と吐き捨てるように言って外へ出かけて行った、反抗期の姉の後ろ姿。中学生の頃、喧嘩中なのにいつもの癖で私のポニーテールを指でくるくると弄ってしまった、決まり悪そうなりなちゃんの顔…。
あれやこれやが混ざり合い、一気にペースト状になって私の目の前に現れる。その記憶の数々はまだ艶があって、ほんのりと温かい。
ああ、私はまだ頑張れる…。口元を綺麗に拭い、再びお布団のぬくもりに身を預けた。
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