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汗の香りがただよう、筋肉のデパート【ミリの妄想日報】
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ジムに行き始めた。
「ジムに行く人」をカッコに入れて外から眺めていた私にとって、このような日が来るとは思いもしなかった。
ブロンズのように美事な姿態のトレーナーに施設の案内を受けて、注意事項の確認をし、スマホのピクセルの中に会員証を埋め込んだ。室内はほんのりと汗の香りがただよい、張り詰めた筋肉がぽつりぽつりと動いている。通りに面した壁はガラス張りで、まるで「筋肉のデパート」のようだ。
今ではすっかり「筋肉のデパート」に見えるこの場所も、学生時代、陸上部に所属していた私にとっては、ただのトレーニングルームだった。あの時はスタート地点に忘れ去られた肉体のことなど気にも留めず、蜃気楼のように揺れるゴールテープに向かって、ただ迷いなく走り続けていた。
そんなことを思い出しながら、私は辺りをキョロキョロと見回し、一番手前にあった器具に腰掛けた。膝を閉じるようにパッドを押し込み、申し訳なさそうに内腿の筋肉を伸ばしたり縮めたりした。
木川田みり(きかわだみり)
1996年生まれ。東京都在住。作家、イラストレーター、UIUX デザイナーとして活動中。ザ・チョイス年度賞優秀賞受賞。
2022年に初の個展『熱いお湯で洗濯したら縮んじゃった』を開催。近年は、触れ合った言葉から妄想を繰り広げた「妄想絵日記」を日々手にする「レシート」の裏に描き、instagram や X にて毎日更新している。
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