開幕ナイスはナワバリバトルの勝率を上げるか？ ―計画的な実戦データ取得に基づく検証―
はじめに ―なぜ思いついたか―
ことの起こりは、スプラトゥーン３をプレイしている最中に生じたささやかな疑問でした。「開幕の時にナイスを放つこと（以下、開幕ナイス）によって、勝つ確率が上がったりしないかな？」
最初にお断りしておきますが、筆者はもともと開幕ナイス推進派ではありません。ふだんのスタンスとしては、開幕ナイスをしてくる仲間がいた時に余裕があれば返す、フレンドと一緒になれた時やフェスで100倍マッチに遭遇した時など嬉しいことがあった時に開幕ナイスを発する、そんな感じ。嫌いでもないが、特別好んでするわけでもありません。
ただまあ、みんなでナイスし合う時って、なんだかちょっとうれしくなるじゃないですか。状況によっては「このチームのため頑張ろう！」という気分が醸成されたりもする。このちょっとした「気分の乗り具合」が、実は勝率を上げるほど勝負全体の趨勢に影響することもあり得るのでは？ と思ったのです。
一方で、開幕直後にナイスを放つ行為についてネットを検索すると、ネガティブな意見も少なからず目にしました。曰く「開幕ナイスをするプレイヤーは地雷」「ナイス返しで行動が遅れる分、勝率が下がる」等。前者はともかく、後者についてはそれはそれであり得ることのような気がします。
そんなこんなで、「実際のところどうなのだろう～」とモヤモヤ思いつつ、たまに開幕ナイスをしたり、ナイスをもらったらナイス返しをしたりするうちに、ある日ふと思い至りました。「自分で検証すればいいじゃん！」
ちょうどスプラトゥーン３発売直後の興奮が落ち着き、個人的には日々の戦いにややマンネリを感じ始めていた時期でもありました。これは楽しそうじゃなイカ？
というわけで、筆者は「スプラトゥーン３において、開幕ナイスをすることによって勝率は上がる」という仮説を立て、そのことを自分が実行可能な範囲で客観的に検証していくこととしました。本稿はその記録です。
方法 ―できるだけ客観的に―
試合
検証するための試合としては、レギュラーマッチを選びました。レギュラーマッチはスプラトゥーン３における最も基本的な試合形式であり、また、さまざまなルールが入り乱れるバンカラマッチよりもレギュラーマッチの方が検証条件を平準化しやすいところが利点でした。試合時間が3分と短いレギュラーマッチの方が、5分かかるバンカラマッチよりもデータ収集が容易と予想されたことも理由のひとつです。
仮説検証のため、レギュラーマッチ開始3秒以内に筆者の操るプレイヤーが「ナイス！」と発する試合（以下、開幕ナイスをした試合）と、自分からナイスをいっさいしない試合（以下、開幕ナイスをしない試合）とを50試合ずつ行い、合計100戦分のデータを収集することとしました。
プレイヤーのコンディションや、存在が噂されている「勝率調整」などが結果に及ぼす影響などを最小化するために、データ収集に際しては以下の配慮を行いました。
・開幕ナイスをした試合としなかった試合は、必ず1試合ずつ交互におこなう。
・100戦データ収集が終わるまでは、他の目的でのレギュラーマッチは一切行わない。バンカラマッチにも参加しない。
・100戦を通して同一のイカ、同一のブキ、同一のギアで参加し続ける。
・1試合ごとに部屋を抜ける。
・フレンドをまじえての対戦は行わない。
・常に全力で遊ぶ。
また、回線落ちプレイヤーが発生した試合はなかったものとして扱い、その次の試合でまた、回線落ちが発生した試合と同じように開幕ナイスを行い、もしくは行いませんでした。
開幕ナイスの有無およびその結果の勝敗のデータはスマホよりgoogle スプレッドシートに入力して管理しました。
プレイヤースキル
筆者が操るイカのランクは、当時のスクショから判断すると、開始まもない時点で28でした。バンカラマッチのウデマエはこれまでで最高A-、サーモンランでは最高でたつじん+2、ド初心者でもないけれどガチ勢から見れば雑魚、そのくらいのレベルです。おそらくスプラトゥーン３エンジョイ勢としてはボリュームゾーンに位置する実力ではないかと思います。
ブキはシャープマーカーを用いました。ギアパワーは57表記でイカニンジャ10、イカ速度アップ22、ヒト速度アップ13、相手インク影響軽減6、サブインク効率3、復活時間短縮3でした。
結果 ―個人的には衝撃的な―
100戦分のデータ収集は、2022年11月26日より開始し、2022年12月29日に終了しました。1日平均３試合ほどこなしていた計算ですが、実際には8試合ほど戦った日とまったく戦わなかった日と混じっています。全体で60勝40敗と勝率ちょうど6割で、最大6連勝、最低8連敗しました。
さて、一番肝心な、開幕ナイスの有無と勝敗についての集計結果はどうだったのでしょうか…！
こちらが結果です！
…もうね、この結果を見た瞬間、ガクっときましたね。
ま っ た く 違 い が ね え じ ゃ ん !
開幕ナイスをしようがしまいが、勝率は全く、変化しません！
いや、まあ、検証の半ばを過ぎた頃から、開幕ナイスが勝敗に有意に関連するわけではないという結果になりそうだなーという予感は薄々してきていたんですが、いくらなんでもこのキリが良すぎるデータは酷い、酷いよ！ もうちょっとこう、19とか31とか端数が出てくれた方がもっともらしいじゃん！ ていうか100個データを集めたらカイ二乗検定しよう♪ とか楽しみにしてきたのに、この結果だと、計算するまでもなくP = 1.00だし！
…すみません、取り乱しました。
あとは一応、ナイスに対して応答があったかどうかもデータを取っていたので、そのことが勝敗に影響を及ぼすのか、交互作用というものについて一応解析をしましたが、そこにも有意な違いはないということでした、はい。
考察 ―と言いつつだいたい感想―
改めて冷静に申し上げますと、今回の検証において、「スプラトゥーン３において、開幕ナイスをすることによってレギュラーマッチの勝率は上がる」という仮説は立証されませんでした。むしろ、（今回の結果から直接断言できるわけではないのですが）、「開幕ナイスをしてもしなくてもレギュラーマッチの勝率は変わらない」という説が妥当である可能性が極めて高そうに思われます。すなわち、開幕ナイスによる心理的な影響は勝敗に影響を及ぼすほどではなかった、あるいは、開幕ナイスによるプラス点は、マイナス点とちょうど相殺できる程度のものだったということなのでしょう。
…結果の数字がキレイすぎることはやっぱりなんだか残念なんだけど、たくさんデータを集めた結果として、もともとのきっかけとなった疑問は解決させられたわけだし、うん、これはこれでヨシ！
開幕ナイスをすれば勝てるようになるわけじゃない。でも、開幕ナイスをすることが利敵行為になるわけでもない。みんな、その時の気分次第で好きにすればいいんだよ…という風に皆さまには受け取っていただけたらいいんじゃないかな、と思います。
今回の検証は、多数の試合のデータを、結果に影響しそうな要因は可能な限り排除しながら取得し客観的に検討した点が強みであると考えます。
一方で、この検証の限界をいくつか挙げておきます。まず、レギュラーマッチに限定した検証であるためバンカラマッチではまた違う結果となる可能性があること。次に、単一のプレイヤーによる検証であるため、条件の違うプレイヤーだとまた違う結果となる可能性があること。さらに、同じ開幕ナイスでも、野良で初対面のイカがいきなり放つのと、何試合もすでに共にした仲間同士やフレンド同士だと与える影響が異なって来る可能性があること。
以上のことについても今後の検証をだれかしてくれたら、楽しそうー。だれかやってくれないかなー。
おわりに
以上の通り、「何の意外性もない結果だな！」と思われそうなことがわかっただけの調査となりましたが、検証のためデータを集めていくプロセス自体がとても楽しかったため、せっかくだからとまとめさせていただきました。この検証のためナワバリバトルをしていた頃は、勝っても負けても「また一つデータが取れたな」という心境で満足できたため、負けが続く時でもずっと穏やかな気分でいられました。そのことが自分的には大変良かったです。
シャープマーカーが大好きなので、100戦ずっと同じブキでの連戦は楽しかったけれど、途中でアプデによって追加されたもみじシューターを使ってみたいなと心が揺れた日々もありました。もはや縛りはなくなったので、今さらですが新ブキをナワバリで使ってみたり、久々にバンカラマッチに飛び込んだりと、調査中の1か月間できなかった方向でこれからはまたスプラトゥーン３を満喫していこうと思います。
長い文章となりましたがここまでお付き合いいただきありがとうございました！ 読んでくださったあなたと、いつかどこかのステージでご対面できればうれしいです。