見出し画像

吃音が学業や就職に与える影響

はじめに

この記事では、吃音が当事者の学業や就職、キャリアアップに影響を与えたかを調査した研究について簡単にまとめます。

内容

2022年に報告されたオーストラリアでの大規模な研究(Self-reported impact of developmental stuttering across the lifespan. Developmental Medicine & Child Neurology)を引用します。

オンラインで吃音のある成人713名の回答を集計し、統計解析を行いました。
回答は下記の通りです。

Self-reported impact of developmental stuttering across the lifespan.

この表は、吃音が教育や雇用に対してどのような影響を与えたと参加者が感じているかを示しています。具体的には、次の4つのカテゴリに分けて結果が報告されています。

  1. 教育達成に対する影響:

    • 713人の吃音を持つ成人のうち、459人(64.4%)が「吃音が自身の教育達成に影響を与えた」と感じていました。これは、吃音が教育機会を制約し、学業成績や最終学歴に影響を与えたと考えられることを示しています。

  2. 雇用機会に対する障壁:

    • 同じく713人のうち、395人(55.4%)が「吃音が雇用機会に対する障壁となった」と感じています。吃音が就職活動や採用面接でのコミュニケーション能力に影響を与え、希望する職に就くことが難しくなった可能性があります。

  3. キャリアアップに対する障壁:

    • また、467人(65.5%)が「吃音がキャリアアップに対する障壁となった」と回答しています。これは、職場での昇進や重要な役職への配置が吃音のために妨げられたと感じていることを反映しています。

  4. 少なくとも一つの領域に影響を与えたと感じた参加者:

    • 575人(80.7%)が、上記の3つのカテゴリのうち、少なくとも一つの領域で吃音が否定的な影響を与えたと感じています。つまり、これらの参加者は、教育や雇用、キャリアアップのいずれか、またはすべてにおいて吃音がマイナスの影響を及ぼしたと認識しています。

この表のデータから、教育と雇用において吃音が障害となるケースが多いことが示されており、これは吃音が単なるコミュニケーションの問題にとどまらず、個人の社会的および経済的な成功にも深刻な影響を及ぼすことを示唆しています。

吃音を持つ人々の多くが、教育やキャリアの発展において吃音が障壁となっていると感じている一方で、これが自己認識にどのような影響を与え、どのような心理的負担を強いているかも重要な課題です。この結果は、吃音が持つ社会的影響の深刻さを再認識させ、吃音のある人々へのより包括的な支援と理解が必要であることを示しています。

注意点

この研究は、参加者自身が報告したデータに基づいています。自己申告データは、記憶の偏りや社会的望ましさのバイアスによって影響を受ける可能性があります。
またこの研究は観察研究であり、因果関係を直接示すものではありません。例えば、吃音が教育や雇用に与える影響についての結果は、吃音が直接的にそれらに影響を与えているのか、あるいは他の要因が関与しているのかを明確に示すものではありません。

私の場合

私の場合をお伝えすると、全部該当します!笑
学業では、例えば

・分からないところがあるけど質問できない
・将来に絶望してて夢がないので勉強のやる気がない
・言えないから分からないふりをする
・英検の面接が通らない(当時は合理的配慮なし)
・文理選択で、文系職は無理(話す能力が必要と思い)と諦めて理系を選択
・受験で面接がある高校、大学はNG
・まともに話せない自分がこんな勉強したところで…という気持ち  など

就職の場合

・話す能力が必要なものはNG(かなり消える)
・消去法で職業を選択
・面接が予期不安と自己嫌悪でかなり苦しい
・面接で言いたいことがあるのに言えない、自己PRできない など

キャリアアップの場合

・やれば評価が上がる発表ができない
・報告連絡相談がキツイ
・電話ができなくて仕事のパフォーマンスが超悪い など

いやぁ~、キツイですね涙

参考文献
Boyce, J. O., Jackson, V. E., Van Reyk, O., Parker, R., Vogel, A. P., Eising, E., Horton, S. E., Gillespie, N. A., Scheffer, I. E., Amor, D. J., Hildebrand, M. S., Fisher, S. E., Martin, N. G., Reilly, S., Bahlo, M., & Morgan, A. T. (2022). Self-reported impact of developmental stuttering across the lifespan. Developmental Medicine & Child Neurology.

いいなと思ったら応援しよう!