吃音研究紹介~Efficacy of Prolonged Speech Technique in Persian Persons with Severe Stuttering~
はじめに
吃音は、特に重度の場合、個人の社会生活や職業生活に深刻な影響を与えることがあります。本研究では、イランにおける重度吃音患者に対するProlonged Speech Technique( PST)の効果を検証しました。
PSTは、発話速度を遅くし、言葉の引き伸ばしや間を置くことで流暢さを向上させる治療法です。
研究の目的
この研究では、PSTが重度吃音患者の発話流暢性にどのように影響するかについて、治療直後および治療終了後4ヶ月間の持続効果を検証しました。
方法
参加者の選定
対象者は20歳から30歳の男性および女性で、全員が重度の吃音と診断されていました。診断は、Stuttering Severity Instrument-3 (SSI-3:後述) を使用して行われました。
治療プログラム
治療プログラムは以下の段階で構成されました。
概念理解:PSTの基本概念とその重要性を説明。
基本練習:単語や短いフレーズを用いて発話する練習。
ストーリーテリング:短い物語を語る練習。
会話練習:日常会話でPSTを適用する練習。
各セッションは1時間で、週に3回、合計24セッションが実施されました。治療は、言語療法士によって行われました。
評価方法
治療の効果を評価するために、以下の評価方法が使用されました。
SSI-3スコア:吃音の重症度を測定するための標準的な評価ツール。
発話流暢性評価:治療前、治療直後、および治療終了後4ヶ月にわたって行われました。
SSI-3スコア
SSI-3 (Stuttering Severity Instrument-3) は、吃音の重症度を評価するためのツールであり、吃音の頻度、持続時間、身体的反応(顔のひきつりや体の動きなど)を評価します。
発話流暢性評価
発話流暢性評価は、治療の効果を評価するためのもう一つの指標です。発話速度、言葉の引き伸ばし、間の取り方、吃音の頻度など、複数の基準に基づいて行われます。
評価は治療開始前、治療終了直後、治療後4ヶ月の3回にわたって行われました。評価者は、参加者が吃音治療を受けていることを知らない盲検方式で評価を行いました。
結果
治療群の結果
治療群の参加者は、治療前と比較して治療直後および治療終了後4ヶ月のフォローアップにおいて、SSI-3スコア(低いほど良い)と発話流暢性スコア(高いほど良い)の両方で著しい改善が見られました。
考察
本研究の結果は、PSTが重度吃音患者に対して有効な治療法であり、その効果が少なくとも4ヶ月間持続することを示しています。PSTは、発話速度を遅くし、言葉を引き伸ばすことで、脳における発話計画と実行の間の調整を改善し、発話の流暢性を向上させることができます。
本研究の結果は、先行研究の結果とも一致しています。例えば、Santosh & Savithri (2007) の研究では、PSTが吃音の重症度を軽減する効果が確認されました。また、O'Brian et al. (2003) は、PSTが長期間にわたって効果を維持することを示しています。これらの研究と結果が一致することで、PSTの有効性と持続性が再確認されました。
本研究の限界と注意点
フォローアップ期間の限定
フォローアップ期間は治療後4ヶ月までとなっています。長期的な効果を確認するためには、さらに長期間のフォローアップが必要です。
参考文献
Zamani, P., Amiri, M., Seyfi, A., & Tahmasebi, H. (2010). Efficacy of Prolonged Speech Technique in Persian Persons with Severe Stuttering. Journal of Rehabilitation, 43(4), 83-86.