女性向けソーシャルゲームにおけるキリスト教の表現について〜エリオスライジングヒーローズ編〜
昨今の女性向けソーシャルゲームに必ずと言っていいほど登場する神父服を着たキャラや教会をモチーフにしたイベント。
しかしキリスト教とは複雑なもので全くキリスト教に触れたことがない人にとっては理解すら難しい代物です。
今回はソシャゲにおけるキリスト教の表現の仕方をHappy Elementsのゲーム、「エリオスライジングヒーローズ」で見ていきたいと思います。
1.キリスト教の宗派について
大前提としてキリスト教にはいくつか宗派があり、大きく分けると
・カトリック
・プロテスタント
が有名な宗派となります。
イメージとしては仏教の真言宗や天台宗などと似たようなものと考えて大丈夫です。
カトリックとプロテスタントに分裂したのは16世紀にルターが起こした宗教改革がきっかけ。
当時のカトリックは腐敗しており、免罪符などを売り捌き金で罪を償うことを良しとしていました。
そういった思想に異議を唱えたのがルター。
世界史などでも触れていますが、ルターはそういった腐敗した制度を撤廃し、純粋な信仰と祈りによる罪の償いを認める宗派としてプロテスタントを起こしました。
もちろん現在ではカトリック、プロテスタントにそれぞれの理念がありどちらも純粋な信仰を目的としています。
次にカトリックとプロテスタントの違いですが、大きく言うと「形式的なものを重視するのがカトリック、内面的な知識を重視するのがプロテスタント」だと私は考えています。
分かりやすい例だと大きなステンドグラスや大聖堂と言われる教会、ロザリオなどを使ってお祈りをするのがカトリック。対してプロテスタントは教会に派手な装飾をせず小さな教会でお祈りをする…というイメージ。
実際有名なノートルダム大聖堂などはカトリックですね。
聖職者の呼び方にも差がありカトリックでは「神父様」や「シスター」、プロテスタントは男性女性どちらも「牧師さん」と呼びます。
ここにはカトリックの聖職者は神と人々を繋ぐ存在であり先導する者、プロテスタントの聖職者は教会へ来た人々を同じ立場で教え導く者として扱うという考え方の差があります。
実際にプロテスタントの教会では牧師さんのことを「先生」と呼んだりすることもあります。
さて、キリスト教の前提についてお話ししたところでそろそろ本題に入っていきたいと思います。
2.ニューミリオンのモデルとなった国について
サブスタンスの飛来により発展した架空の大都市、ニューミリオン。
セントラルスクエア、レッドサウス、ブルーノース、イエローウエスト、グリーンイーストの5つの街に分かれており、その中で"ヒーロー"たちが物語を繰り広げる…というのがエリオスライジングヒーローズの設定です。
さてここでなぜニューミリオンのモデルを調べていくのかについてですが、これには各国の宗教傾向にあります。
例えば日本は仏教(多宗教)、アメリカはキリスト教、インドはヒンドゥー教などが主流…というのは有名な話ですよね。
キリスト教圏でいくとアメリカやフランスなどが大きな国になります。
そういったキリスト教が主流な国の中でもプロテスタントが主流な国とカトリックが主流な国に分かれるため、ニューミリオンがどこをモデルにしているか調べることでニューミリオンでカトリックとプロテスタントどちらが主流か割り出すことができる…というわけですが。
既に有能な司令さんたちが調べてくれていました。
結論から言うとニューミリオンのモデルとなっているのはニューヨーク。アメリカらしいです。名前も似ていますね。
詳しくはこちらの方が調べてくださっているのでぜひご覧になってください。
https://ja.namu.wiki/w/HELIOS%20Rising%20Heroes#s-4.1
さて、アメリカで主流なのはずばりプロテスタントです。
"ヒーロー"たちはどうやら多国籍(アキラやレンは日系でビアンキは中国系のようですしガストはドイツ系という噂もありますよね。ヴィクターの姓のヴァレンタインもヨーロッパ系らしいです。ぽいですね。)のようですが国的にはおそらくプロテスタントが主流なのでしょう。
キリスト教が普及していることはイベストなどで判明していますし(これは後ほど掘り下げます)、先日のあんスタコラボイベントでおそらくエリオスの時空は未来であることが示唆されていましたね。
ここまででニューミリオンが「現代のアメリカによく似ている、キリスト教が存在する未来都市」であることが分かりました。
ここから少し、いくつかの特定のストーリーにスポットを当てていきたいと思います。
3.ノースハロウィンイベント「ゴーストたちのGothic Halloween」のレンについて
まず最初にレンの衣装を見てもらいたいと思います。
左手に十字架、右手に銃を持ち神父服(カソック)を身に纏うレン。かっこいいですね。
さて、このハロウィンのストーリー。主にレンの家族やお姉さんのシオンさんの話が主でした。
メモリアルクエストで読めるのでぜひ実際に読んでほしいストーリーではありますが初期のノースらしくチーム内でギスギスしていたり、レンの思いが少しだけ見えたり、ノヴァ博士とレンの関連性が見えてきたり…とメインストを読む上でも欠かせない話となっています。
さて、もちろんこちらのレンはハロウィンということで仮装をした上での神父服なのですが。
私が気になったのは「なぜ神父なのか」ということです。
前述した通りニューミリオンではおそらくプロテスタントが主流。
プロテスタントの男性聖職者は牧師であり、神父とは少し正装が違います。
ここでカードの背景、レンのいる場所に注目してみると眼下に(レンがなぜこんな高所にいるか分かりませんが)大きなステンドグラスやカリヨン(鐘)が見えますね。
やはりその辺を考慮してもレンがいる場所も着ている服もカトリック系に寄っていることが分かります。
もちろんニューミリオンでプロテスタントが主流(仮)と言ってもカトリックの人がいないわけではありませんから如月家がカトリック系のお家だった可能性もあります。
カトリックとプロテスタントで考え方に大きな違いもないため如月家が日本でキリスト教としての印象が強いカトリック系の家だったとしてニューミリオンやHEROESで大きく浮くこともないでしょう。
さて、ここまではゲーム内でのことを考えた話です。
実際にメタ的なことを考えるとやはり衣装を実装するにあたり牧師よりも神父の方が日本人への印象が強いという点、そしてイラストとして映えるという点が大きくなってくるのでしょう。
そもそも自分と思想の違う敵を暴力でねじ伏せるという行為そのものがキリスト教の信念的にそぐわないためやはりこの衣装や設定はプレイヤーが見た時にいかに魅力的に見えるか、ということを意識して作られたものだと思います。
まあ大前提として如月家はクリスチャンでしたがどうやら現在のレンは無宗教の様子。この辺りはストーリー内でなんとなく読み取れるところなのであまり詳しくは言及しませんが、バトル開始時のセリフで「俺は神を信じない」とはっきり断言してしまっていますしストーリー的にもこの衣装はあくまでハロウィンの仮装でありそれ以上でも以下でも無いということでしょうね。
4.シンとセイジの関係について
次にストーリーではなくキャラ設定について見ていきたいと思います。
ここから先、メインストーリー「side in the darkness」や第3部のOverFlow後編のネタバレが多くなりますので見たくないという方はこのままブラウザを閉じることをおすすめします。
さて、タイトルにも書いたシンとセイジ。この記事を読んでいる方は大丈夫だと思いますがこの後の内容のため"私の言葉で"軽くそれぞれのキャラについて説明しておきます。
・シン
イクリプスの幹部、「トリニティ」のうちの1人。
自分の外見に酷く気を使い、少し服が汚れるだけで激昂する。
吸うと体が全く動かなくなる毒を使い、度々「毒蛇」と称されることがある。
実際に舌を出しているスチルが多く、どことなく蛇を想起させられる部分も多い。
頭が回る部分が多く、気分の変化が激しい。
のらりくらりとしており同じトリニティのシャムスのことを馬鹿にしている。
"家族"に対してなにか思い入れがあるようで何故かジェイのことを気に入っている。
レンの家族を殺した張本人であり、オスカーと家族のような存在…の様子。
嫌いなものは宗教。
・セイジ・スカイフォール
12期研修チーム、通称ロビンズの1人で現在はサウスセクター所属のヒーロー。
12期研修チームのメンター、ロビン・グッドウェザーに拾われ同居していた。
幼少期の記憶が曖昧であり、気が付いた時にはニューミリオンでロビンに拾われていたため自分はニューミリオンの外からやって来たのだと思っていたが実際はニューミリオンの地下、ロストガーデンを拠点にする宗教組織「トロニス」の"救世主"であり、同じくトロニスでセイジの世話係を任されていたロビンが幼いセイジを不憫に思い自分の人生と引き換えにセイジを地上に助け出していた。
好きな食べ物はアップルパイ。
さてここまで説明をしたところで本題に入っていきたいと思います。
と、本当はここで「実はセイジとシンって関係あるんじゃない?」という話をしたかったのですが先に公式から情報が出てしまいました。
どうやらシンもセイジと同じくトロニスにいたようです。
まだ私はストーリーを読めていないので(これを書いている日の15:00にストーリーが公開されているんですよね。)今回は私がなぜ「セイジとシンに関係があると思ったのか」について書いていきたいと思います。
この仮説のキーワードは2人の2つ名と好物になります。
「毒蛇」と「アップルパイ」ですね。
もう少し分かりやすく言うと「蛇」と「林檎」になります。
蛇と林檎が関連してくるもの。それは聖書に出てくる「アダムとイブが犯した原罪」にモロに被ってきます。
ここで簡単にこの話を説明したいと思います。
神様は世界を作る時、まず最初にアダムという人間の男性を作りました。このアダムが世界で一番最初に生まれた人間です。
ですが神様はアダムが1人だけいるのは良くないと思い、寝ているアダムのあばら骨からもう1人、人間の女性を作りました。これがイブです。
アダムとイブは神様が作った楽園、「エデンの園」で何不自由なく暮らしていました。
ですが、神様は2人に「エデンの園の中心にある木の実だけは食べてはいけない」と言っていました。
2人は言いつけを守り過ごしていましたが悪魔の化身である蛇がイブに「あの実はとても美味しいから食べてみるといい」と囁き、それをイブはアダムに伝え、2人はその実を食べてしまいました。
2人が言いつけを破ったことを知った神様は非常に落胆し、2人を苦労の多い地上へと下ろしてしまいました。
これが人間の「原罪」です。
この原罪がどのようにして償われたのかはまた別の話ですが、こうして人間を唆した蛇も罰を与えられ今の私たちが知る地を這う姿になったとされています。
さて、ここで神様が食べてはいけないと言った木の実、これが林檎だと言われている、というのはそれなりに有名な話だと思います。
この話、なんとなくロビン達トロニスの話に似ていると思いませんか?
トロニスはサブスタンスを穢れているものとし、触れることを許しません。
故にサブスタンスが普及している地上に出ることができず、サブスタンスの普及していないロストガーデンや田舎の牧場などに逃げていたわけです。
ここでロビンのしたこと、人生を振り返ってみたいと思います。
ロビンは"救世主"とされていた幼いセイジの世話係でした。
ですが生まれた時から大人たちの過度な期待を背負っているセイジを不憫に思いセイジを地上に送り出そうとします。
どうやらこの辺りにもシリウスがかかわっているようですが、セイジを逃がそうとしたことが見つかったロビンは罰としてトロニスにとって最も恐ろしいことであろう「サブスタンスを体内に入れることでサブスタンスに対抗する」"ヒーロー"となることになります。
そしてこれは今回のイベントで判明したことですが、どうやらシンもセイジの世話係をしていた頃のロビンに懐いているようなんですね。
さて、ここだけで「林檎(セイジ)」「蛇(シン)」「罪」「罰」「地上へ追い出す」という単語が出てきました。
明らかにリンクしてるじゃないですか!?
確信犯ですよね?
「林檎(セイジ)」に過度に接触してしまったという「罪」を犯した「罰」により「穢れた地上へ追い出された」ロビン。
もしロビンがセイジを助けようと思ったきっかけが蛇(シン)の言葉だったとしたら…
あまりにも完璧に回収されすぎていて興奮で眠れません。
しかもその上ロストガーデンはたびたび「楽園」と言われます。
つまりロビンは「楽園」から「地上」へ追い出されたわけです。
まさかこんなところで聖書ネタがこんなに突っ込まれてくるとは思っていませんでした。
今回のイベントでより掘り下げられるかと思うので今後のストーリー展開もより楽しみになってきますね。
さて、いかがでしたか?
海外を舞台にしているせいか私が当初予想していたよりもキリスト教に関するネタが散りばめられていて私も書いていてとても楽しかったです。
今後ストーリーが進むにつれてまた新しい要素や話が出てくる可能性もありますのでその時はまた書けたらいいなぁ…と思っています。飽き性なので確証はありませんが。
まずは今回のリンクストーリーが楽しみですね。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
今後もエリオスライジングヒーローズをよろしくお願いいたします。