[感想]君たちはどう生きるか

観た後に浮かんだのは「悪夢」の一文字。
宮崎駿の夢の中に入り込んだ2時間だった。
冒頭、火事の中走る少年の足、
頭を石で叩き流れる血、
青鷺が歯を見せて少年を誘い出すところ、
カエルやコイが少年を呑み込もうとする描写、
懐かしい海や建築、
紙に襲われ2人が倒れ込み幕が落ちる演出。
少年が積み木を積むことをせず、自分の世界を生きると決意する言葉。

断片的な記憶と景色が流れ次々と切り替わる場面、それを導く青鷺の俯瞰的で独白のような言葉は、舞台を観ている感覚に近かった。

直ぐに忘れちまうさ、という言葉に全て詰まっているような気がして、全てが崩れ去りそれを悲しみ別れを告げる少女と自分を重ねた。ここは涙が出そうだった。寂しく、でも前を向かねばという覚悟を感じるシーンだった。

でも、死が常に付きまとう世界観が恐ろしくて、私にとって鳥はかなり生命として脆い生き物と捉えていて、今回はそのオンパレードが映画全体を不安定でファンタジーな恐さに仕立てていると感じた。もう一度じっくり観たいけれど、映画を思い出すとゾッとするものだから、悪夢は一度で十分とも思ってしまう。

空を飛び気持ちよく旋回する駿のアニメーションがやっぱり観たいと思う私もいた。好きだから。

でも、劇中の違和感や破綻、このめちゃくちゃな制作風景、個々の強さや熱、技術が集結するとこんなことになるのですよと、混沌ゆえの美しさが人間臭く、宮崎駿がにやにや笑うのが浮かぶ。

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