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せんすい島とすうちゃん

「うわ!なんだこれ!」
外からの大きな声にビックリして飛び起きた。
「は!え?なに!」
「あ、すうちゃんおはよー」
「おはよー」
「起きた?誰か来たみたいだよー」
「?うーん、おはよう…誰だろう」
ベットから起きて窓から外を見ると青いランドセルを背負ったうーちゃんと赤い手提げを持ったカメちゃんがキノコのお家を見上げている、私はパジャマのまま慌てて外に出るとうーちゃんが私の姿を見て呆れた顔で
「すう…まだ寝てたのかよ、もう学校に行く時間だぞ!」
首を傾げて
「学校?」
カメちゃんがニッコリと笑い
「すうちゃんおはよう。そう学校に一緒に行こうと思って迎えに来たの」
確かに向こうに居た時は朝から学校に行ってたけど…学校には行かないと決めたのに…こっちで通うなんて…嫌だ
「…私はいいよ、お家にいるから!」
逃げるようにお家に入ると、2人も後から慌てたように
「おい!待てよ、すう!」
「お邪魔します。すうちゃん?どうかした?体調が悪い?」
私は2人から視線を反らして、いい言い訳はないかと考えて
「えっと…体調は悪くないんだけど…そうだ!私ランドセルとか教科書とか色んな物が無いし!学校は無理だよ」
うーちゃんが不思議そうに
「ランドセルなら其処にあるだろ?」
うーちゃんが指差した先を見るとテーブルの上に私のランドセルがあった。
「え?何で…こんな所に私のランドセルが有るの?」
ランドセルを開けると、教科書やら私の筆記用具が全部揃ってる。
まるで誰かが私の為に用意してくれたように…でも誰が?お母さん?でもどうやって?分からない…ランドセルを見ているとカメちゃんが
「すうちゃん、とりあえずお洋服着替えようか?うーちゃんは外で待ってて?」
カメちゃんがうーちゃんに言うとうーちゃんは
「おー分かった。」
気が抜けた声で出ていった。そして振り返ったカメちゃんが心配そうに
「学校行くの嫌?」
渋々頷くと
「…何かあった?」
「…私元々勉強が苦手で…前の学校でも私が授業止めちゃったりして皆に迷惑かけちゃって…それが嫌で…学校行くの止めたの…だから」
「迷惑?それは大丈夫だよ、学校は勉強が全てじゃないよ?皆が皆勉強する為に学校に行ってるわけじゃないよ?」
カメちゃんの言葉に疑問が生まれた。もしかして、私が通っていた学校とこっちの学校って違うのかな?
「一度で良いのお願い!一度学校に来て皆と会って欲しいの…どうかな?駄目かな?」
カメちゃんに、そこまで言われると一度くらいいいかなと
「…うん分かった。一回学校に行って見るよ」
「ありがとう、すうちゃん!もし無理だったら直ぐに言って?私達はすうちゃんに無理させたい訳じゃあないから」
私が頷くとカメちゃんが
「じゃあ準備しようか」
そう言われベットを見ると昨日とは違う服が畳まれて置いてあった。一体誰が?と疑問だったけど今は早く準備をしないと!急いで服を着替えて、顔を洗い歯を磨き終えて戻ると、カメちゃんが部屋をキョロキョロと部屋を見渡していた。
「どうしたの?」
聞くとカメちゃんが
「…もしかして、このお家ってキノコさん達が作ったの?」
「うん!そうカメちゃん達が帰った後流石にベットだけじゃ寒くて、それでキノコ達が作ったの」
「やっぱりそうなんだー!凄く可愛いお家だね!私もこんなお家に住みたいな」
カメちゃんの言葉にキノコ達が
「凄い?」
「えっへん!」
「食べれるよ!」
「え?嘘!これ食べれるの?」
「うん、食べれるよー!すうちゃん」
「イヤイヤ!食べたらお家に穴が空くから!駄目だよ!」
カメちゃんが笑いながら
「大丈夫食べないよ、今日はすうちゃんと学校に行くから、また今度ね?ほら、すうちゃんここに座って?」
カメちゃんの手には櫛が、そしてテーブルの上には赤いパンが置いてあった。
私はそれを手にとってかじると、ホットケーキの味がした…美味しいけど…本当になんだろうこれ…食べ終わってカゴを見るとやっぱり赤い実は3つ有る…不思議と思っていると
「はい、これ」
カメちゃんが飲み物を渡してくれた、それを飲んでいるとカメちゃんが私の髪をとかし
「うんよし!これでいいかな?すうちゃん行こうか」
「うん」
返事をするとカメちゃんは私のランドセルを持って外に出た。待っていてくれたうーちゃんが
「もういいのか?」
「うん、じゃあ行こう?すうちゃん」
カメちゃんからランドセルをもらい背負うと
「…ねえ、私学校に行っても大丈夫かな?」
不安で聞くとうーちゃんが
「大丈夫に決まってるだろ?何言ってるんだよ!」
…本当に大丈夫なんだろうか、カメちゃんを見ると
「私達がいるから安心して、ね?うーちゃん?」
「そうだぞ!大船に乗った気持ちでいいぞ!」
その言葉で余計不安になるんだけど…
「大船って…そんな、いきなり私みたいなのが行っても怒られない?」
「怒られないよ、むしろ歓迎されるはずよ?」
「そうだぞー!俺だって嫌いな授業があっても、ちゃんと学校に行ってるんだぞ?偉いだろ?」
「…うーちゃんのその自信は、どこからくるの?」
「うるせーな!良いだろ!さっさと行くぞ!遅刻するぞ!」
そういい早歩きで歩き出した。私はカメちゃんが急いで付いて行きながら、色々な事を話した。
「私勉強が嫌いで…付いて行けるかな?」
心配になり聞くとうーちゃんが
「俺も勉強嫌い、前の算数のテスト0点だったぞ!」
「それは…凄いね」
私の言葉を誉められたと勘違いしたのかうーちゃんが
「おう!凄いだろー?全然分かんなくてよー!」
「それで、いいの?」
「うん?いいんだよ、わかんねーんだもん!」
自信満々に言われ、強いと思ってるとカメちゃんがため息を付いた。
「もう、うーちゃんったら!そんなだから…」
いいかけると、うーちゃんが
「ほら!学校見えて来たぞ!」
うーちゃんの言葉に顔を上げると確かに小学校らしい校舎が見えた。
すると今まで見なかった子供らしき動物達が校舎に入っていく、私は目立たない様に2人の後ろに付いて行くと
「あ、おはよう!カメちゃん、うーちゃん!」
声の方を見ると、そこにはコアラの女の子が手を振ってる。
するとカメちゃんが私の背中を押してコアラの女の子の前に押し出されてしまった。
「おはよう!」
私は焦りながらコアラの女の子を見ると、
「あれ?カメちゃんこの子は?」
「この子は、すうちゃんって言うの今日から一緒なの」
カメちゃんがそう言うとコアラの女の子は私をじっと見て
「そうなんだ!私の名前はコーラって言うの、よろしくすうちゃん!」
「あ、うん!よろしくコーラちゃん」
挨拶するとコーラちゃんがニッコリと笑い
「じゃ!一緒に行こうか!ほら、うーちゃんもカメちゃんも早く行こうよ!すうちゃん教室はこっちだよ」
コーラちゃんが私の手を引っ張ぱり教室に付くと大きな声で
「皆おはよう!」
すると、教室に居た動物達が一斉にこっちを見た。私は咄嗟にカメちゃんの後ろに隠れた。
「おはよう!コーラちゃん!うーちゃん!カメちゃん」
次々と声が掛かる、それを少し羨ましいなと付いていくと、皆がカメちゃんの後ろに居る私を見て
「あれ?新しい子がいる!」
「誰?」
「やった!新しい友達だ!」
クラスの中が騒ぎ出した。その騒ぎにどうしようと困ってると、後ろのドアがガラリと開いて、ドスン!ドスン!と大きな足音をさせながらピンクのスーツを着た大きな熊が入ってきた。
いくらこっちの住民は動物しかいないと分かっていても熊は流石にビックリする。カメちゃん達が普通にしているから大丈夫なんだろうけど…でも怖い…大きな熊は私を見て頬に手を当てて
「あら?あら?知らない子がいるわ?どちら様かしら?」
優しい口調だけど声は低い、どうしょう何か言わないと…するとカメちゃんが私の前に立って
「クマ先生!今日からこの学校に通う事になった、すうちゃんです!」
カメちゃんの言葉にクマ先生は、ニッコリと笑いながら
「あら!あら!そうなの?分かったわ、それじゃあ私から自己紹介するわね?私はこのクラスの担任のクマ先生です。分からない事や困った事色々聞いてください。何も無くても聞いてちょうだいね?」
見た目は大きくて怖いと思ったけど、そうじゃなくてホッとしていると、うーちゃんが大きな声で
「クマ先生は普段は優しいけど、怒らせると怖いからな!気を付けろよ!すう」
その言葉にクマ先生は、ほほほ!と笑いながら
「うーちゃん?先生と、すこーしお話しましょうか?」
うーちゃんは、ヤバイと顔して
「クマ先生!オレ早く授業したいです。」
さっさと自分の席に座った。とたんクラス中から笑い声が響いた。カメちゃんもやれやれと顔で
「すうちゃん、こっちだよ」
と手を引かれ私の席に案内された。案内された席はうーちゃんとカメちゃんの間の席だった。
私が席に着くとクマ先生が
「それでは、授業を始めたいと思いますが、まず始めに新しいお友達に挨拶してもらいます。それでは、すうさんクラスのお友達に挨拶をしてください」
今まで、ざわついていた教室がシーンとなって心臓がドキドキした。
「がんばって!すうちゃん!」
カメちゃんの言葉に、うん、と頷き立ち上がると、うーちゃんが心配そうに
「大丈夫か?オレやってやろうか?」
見かねて言ってくれたけど、首を横に振った。これは私の事だと勢いよく立ち上がり
「あの!私…今日からこの学校に通う…す、すうって言います!あの…色々迷惑かけてしまう事もあるけど…仲良くしてくれると嬉しいです、よろしくお願いします!」
早口だったけど言えた。すると教室からパチパチと拍手が…
「はい、すうさん、挨拶ありがとうございます。皆さん、すうさんと仲良くしてくださいね?それでは授業をはじめましょうか、まず国語からですね、すうさん今日の所はカメさんから教科書を見せて貰ってください」
分かりましたと言うとカメちゃんが机をくっけて私に見えやすいように教科書を広げてくれた。ありがとうと言うとカメちゃんが笑いながら
「いいよ」
そして、授業を受けた。
「キーンコーンカーンコーン」
鐘の音がして授業が終わった…なんか、あっと言う間だった。それぐらいクマ先生の授業は分かりやすかった。クマ先生は丁寧でここが間違え易いから気を付けてと、何故ここが間違え易いのかも教えてくれた。私はカメちゃんに
「クマ先生の授業凄い分かりやすかったね!授業がこんな面白いなんて思ってなかったよ!」
興奮気味に言うとカメちゃんがホッとした顔で
「ほんとう?よかったー。少し心配だったの」
「…心配してくれて、ありがとうねカメちゃん」
「いいの、でも私すうちゃんに謝らないと…」
「え?何かあったっけ?」
思い当たる事が無いけど…なんだろう?
「私すうちゃんに試しで良いって言ったのに…私教室で皆に、今日から通うっていっちゃったから…本当にごめんなさい!」
そこまで考えてくれてたなんて、申し訳なかったなと思ってると、うーちゃんが呆れた顔で
「相変わらずカメは、頭が固いよなー大丈夫に決まってる、うちのクラスの奴らは良い奴ばっかだし、クマ先生なんて怒らせなけりゃ優しい良い先生だろう」
自信満々のうーちゃんに、カメちゃんが怒った
「その優しいクマ先生をしょっちゅう怒らせてるのは誰?うーちゃん?」
その言葉にうーちゃんは横を向き口笛をふいてる…しらじらしい…でも一体優しいクマ先生を何で怒らせているのは気になるけど…聞くのが怖いから黙っている事にした。
「ま、そんな事は、良いじゃねーか、それにすうが学校嫌って言っても、どうせカメが勉強ぐらいだったら教えられるんだし」
「そうやって、直ぐ誤魔化そうとするんだからうーちゃんは」
「カメちゃん勉強教えるの上手だよね」
「どうかな?分からないけど私小さい子達と一緒に勉強するの好きだから」
「ああ、やっぱり、さっきの授業で分からない所教えてくれた時とっても分かりやすかったよ」
「ほんとう?よかった!いつも教えるの…これでいいのかなって悩んでいたの…」
「とっても分かりやすかったよ!私今まで分からないのは、自分の理解が足りないせいだと思っていたけど、もしかすると教えてくれる人が上手だと、とても分かりやすいんだなって思ったぐらいだよ!」
「…そういってもらって嬉しい!最近教える事が少し不安に思ってたから…ね?うーちゃん?」
ああ、なんとなく分かった。犯人はうーちゃんか…うーちゃんを見ると気まずそうに目をそらし
「しょーがねーだろ!興味がねーんだから!そもそもオレは教えてくれなんていってねーぞ!」
「…はぁ、それは分かってたけど…せめて基礎ぐらいはと思ったの」
「いらーねよ!」
カメちゃんは、ため息をついて私を見た。私が首を横に振るとカメちゃんはうーちゃんに
「もう、せめて授業だけは、ちゃんと受けようね?」
カメちゃんの言葉にうーちゃんは生返事で答えた。これは…無理だろうなと考えて、私は一つの疑問を思い出した。
「あの2人に聞きたい事があるんだけど…」
すると
「オレは勉強はおしえられねーからな!」
「……」
カメちゃんと2人黙ってうーちゃんを見ると
「…なんだよ?」
「なんでもないよ、それで?すうちゃん?」
「あ、そうだった!うーちゃんが変な事言うから!」
「オレのせいか?」
「うーちゃん、うるさいから少し黙ってて!それで?どうしたの?すうちゃん?」
うーちゃんがなにやら騒いだけど黙殺されていた。私は
「ずっと疑問だったんだけどクマ先生って性別はどっちなの?」
そうなのだ最初見た時は大きかったから、てっきり男の人だと思ってたけど…話し方とか服の色がピンクだったりして女の人なのかな?と疑問に思ったりして、結局どっちなのか分かんなかった…すると2人は納得した顔で
「クマ先生は心が女性なの」
「と言う事は…」
「体は男性らしいぜー」
「そうなんだ、私どっちなんだろうって…」
「まあ、オレからすればどっちでもいいけどなーお怒らなきゃの話だけどな」
「…そっか、そうだね、うーちゃんはクマ先生を怒らせないようにする努力してよ」
「ヘイヘイ」
「もう!それでうーちゃんテーマは決まったの?」
カメちゃんの言葉にうーちゃんが、うげっと声を出し
「…きまった。」
絶対に嘘だ。
昨日今日の付き合いだけど…嘘だ。
私はカメちゃんに
「カメちゃんテーマってなに?」
「ああ、まだ、すうちゃんには言ってなかったけど…皆それぞれ自分で決めたテーマがあるの、それを自分の好きな時間に勉強してるの」
「皆やってるの?」
「やってねー奴もいるぞ!オレみたいに」
「え、でも今カメちゃんにテーマ決めろって…」
訳がわからずカメちゃんを見ると
「…あまりにも、うーちゃんが勉強しないからクマ先生が困って勉強以外でうーちゃんの評価しないといけないからテーマを決めて勉強しなさいってクマ先生がいったのに…未だにこれで…」
「オレは、このままでいいんだよ、無理やりは良くないと思うんだ!うん!」
「…本音は?」
「めんどくせー」
「…カメちゃん」
「うん、私あきらめる…」
「それが良いと思うよカメちゃん」
「話終わったんならさっさと帰ろうぜ?」
私とカメちゃんは顔を見合せ頷いた。それから友達の事やら最近のうーちゃんが見た事件や噂話を面白可笑しく話ながら帰った。楽しかった。そしてあっという間にキノコのお家に着いた。
「今日は本当に楽しかったー」
「よかった」
「明日も迎えに来るから準備しとけよ?」
私はうん、と頷き
「分かった!でもワザワザ家までは大変じゃない?私学校の近くの所で待ち合わせでも良いよ?」
そうなのだ、私のキノコのお家は学校に行く道から少し外れていた。だから2人がワザワザ来てくれるのは大変だろうと
「何いってんだよ!すうの家面白いから何ともないぜ!な、カメ?」
「うん、全然大変じゃないよ、むしろ楽しいから、明日も迎えに来ても良い?」
私は照れながら
「ありがとうカメちゃんうーちゃん」
「オレ達友達なんだし、当たり前だろう!」
「そうだよすうちゃん私達友達だもん」
「分かった!それじゃあ、また明日ね!」
「おう、また明日!」
「お休みなさいすうちゃん!」
2人は、私に手を振って帰っていった。私も2人の姿が見えなくなるまで手を振って、お家に入った。
「ただいまー!」
大きな声で言うと
「おかえりー」
「楽しかった?」
「帰ってきた!」
キノコ達に迎えられた。私はランドセルをテーブルに置いて、キノコソファに座り
「あー今日疲れたけど楽しかったー、ふー、でも何とかやっていけそうでよかったよー」
疲れたけど、こんなに楽しかったのはいつぶりだろう、明日もがんばろうっ!