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ふるさと納税|私たちの生活にどう影響しているか知っていますか?

第1回は身近な「ふるさと納税」についてのお話です。
ふるさと納税に対して、皆さんはどんなイメージをお持ちでしょうか?

「居住地域以外の地域への納税で、一部の自己負担金のみで返礼品ももらえるお得な制度。生活費の節約にもなる。」
というようなイメージをお持ちの方が多いのではないでしょうか。

一見すると、税金納付という義務を果たした上で、ちょっとしたお礼まで貰える、とても素敵な制度に思えますよね。
しかし、果たして本当に「ただ素敵な制度」なのでしょうか?
実は、この制度が私たちの生活に思わぬ影響を与えているかもしれません。

ここからは、以下の3つのポイントで「ふるさと納税」と私たちの生活との関わりについて見ていきたいと思います。

  1. 「ふるさと納税」は誰のため?

  2. 「ふるさと納税」のメリット・デメリット

  3. これから私たちはどう行動すべきか


「ふるさと納税」は誰のため?

まず、ふるさと納税について改めて説明します。
実際には、ふるさと納税は「納税」ではなく、都道府県や市区町村への「寄附」です。自治体に寄附をすると、確定申告を行うことで、その寄附金額の一部が所得税や住民税から控除されます。
※最大5つの自治体までは「ワンストップ制度」が利用でき、確定申告は不要です

ふるさと納税では、原則として自己負担額の2,000円を除いた全額が控除の対象となります。控除といっても、税金が安くなるわけではなく、翌年の税金を前払いする形で、自己負担分の2,000円を除いた金額が翌年の税額から差し引かれる仕組みなので注意してください。

たとえば、2025年12月31日までにふるさと納税で40,000円を納めた場合、自己負担金2,000円を除いた38,000円が翌年の税金から差し引かれます。翌年の税金が安くなったように感じるかもしれませんが、実際には前払いをしただけなのです。

そして、この制度が誕生した背景は次のようなものです。

多くの人が地方のふるさとで生まれ、医療や教育などの住民サービスを受けて育ち、進学や就職で都市部に移住し、都市部で納税を行う。しかし、地方には税収が入りません。そこで、今は都会に住んでいても、自分を育んでくれた「ふるさと」に寄附できる制度があっても良いのではないか、という問題提起からふるさと納税が始まりました。

総務省 ふるさと納税ポータルサイト:よく分かる!ふるさと納税

都市部への人口流出によって生じる地域間格差を埋めるための制度として登場したのですね。
また、近年では災害の被災地を応援するためにふるさと納税を活用する動きも見られます。


「ふるさと納税」のメリット・デメリット

次に、ふるさと納税のメリットとデメリットを見ていきましょう。

メリット

  • 自身が選んだ自治体に納税できる
    ふるさと納税では、自分が応援したい自治体に納税することができます。例えば、災害に見舞われた地域に寄附したり、自分のふるさとに寄附することが可能です。

  • 自己負担金2,000円のみで「返礼品」がもらえる
    自己負担金2,000円だけで返礼品がもらえるのが大きな魅力です。地産・名産の食品だったり、トイレットペーパーや有名ブランドの化粧品だったり。寄付をすることで生活費、娯楽費を抑えられるとても嬉しいポイントですよね。

デメリット

  • 都市部の税収が減少する
    ふるさと納税が増えることで、都市部の税収が減少し、行政やサービスの質の低下を招く恐れがあります。例えば、東京都世田谷区では、ふるさと納税による住民税の流出が110億円を超えており、行政サービスの維持が困難になる可能性があると区長が述べています。さらに一部の地域は減少した税収の75%を補填する国の仕組みの対象とならないため、税収減少の打撃は大きいと言えます。

  • 本来の趣旨の逸脱
    地域貢献を目的とした寄付から、返礼品をもらうための手段になっているとの指摘もあります。返礼品目当てに納税を行うことが多く、地域の支援よりも個人のメリットを重視する傾向が強まっています。自治体は寄付を呼びこむためにより魅力的な返礼品を用意する必要に迫られるので、競争過熱による余計な業務負担がかかっている可能性もあります。
    そうしたことから自治体の返礼品にかけるコストは寄附金額の3割以下のコスト、地元産品を返礼品として提供することが求められています。また、2025年10月からはふるさと納税の寄附に伴うポイント付与が禁止される予定です。

勘の良い方はお気づきかもしれませんが、これらのメリットとデメリットは表裏一体です。
納税者の選択が地域間の格差を広げる結果になるなんて、なんとも皮肉な事実ですよね。


私たちはどう行動すべきか

では、ふるさと納税をやめるべきなのでしょうか? そうではありません。
実際に、ふるさと納税によって、都市部から流出していた税収を地方自治体が確保できているケースもあるからです。

ただし、返礼品がすぐに手に入るメリットに対して、行政サービスの恩恵はすぐには実感できないため、税収不足によるサービスの低下を防ぐためにも、寄附の仕方に工夫が必要だと考えています。

  • 自身のふるさとや応援したい地域への寄附を優先する

  • 限度額を超えない範囲で控えめに利用する

  • 返礼品を受け取らず、居住地に寄附する

    • 寄附金の使い道を自分で選べる自治体もあるため、税金の使い道を明確に理解できる

また、災害支援の寄附をする際は、ふるさと納税を利用するのではなく、直接自治体に寄附する方法もあります。
これにより、返礼品のコスト分が直接支援に使われる他、これも控除扱いとなる可能性があるので自治体のホームページから確認してみてください。


まとめ

「ふるさと納税」は地域社会や行政サービスの持続可能性を支えるためのものです。
一時的なメリットにとらわれず、寄付金が地域活性化や社会的な支援にどのように活かされるかを意識することで、ふるさと納税が単なる節税手段にとどまらず、社会全体への貢献にも繋がります。
自分たち、子どもたちの今、そして未来のためにどんな選択をするべきなのか、是非立ち止まって考えてみてさい。

参考サイト


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