SOMPO美術館でモンドリアンと旅に想いを馳せる
モンドリアン展
純粋な絵画を求めて
緊急事態宣言が発令される1週間前の日曜日、SOMPO美術館に行きました。
地下駐車場から、美術館までの道のりを、新緑を照らす柔らかい春の日差しと一緒に歩きました。
モンドリアンの代表作〈赤、青、黒、黄、灰色のコンポジション〉が企画展のポスターに使われていました。モンドリアンの作品名でよく使われるコンポジションとは、構図、構成と訳されます。
1.絵画、写真などで仕上がりの効果を配慮した画面の構成。コンポジション。
2.構成された図形
構図の意味 ーデジタル大辞典
ピエト・モンドリアンの思想理念「新造形主義」に基づき、画家や建築家と共に結成された雑誌とそのグループ「デ・ステイル」
フォトスポットでは「デ・ステイル」のプロダクト商品を展示しています。背景の写真は世界遺産にも認定されたオランダにある建築家G.T.リートフェルトの代表作「シュレーダー邸」。手前にある向かって右が、レッド&ブルーチェア(赤と青のチェア)、左に置かれているのがジグザグチェア、2点ともG.T.リートフェルトの作品です。
また、イブ・サンローランが手がけたモンドリアンルックのワンピースもトルソーに展示されていました。
モンドリアン理念の間口の広さを感じます。
好きな絵の前で立ち止まる時間
ドンブルグの教会塔(1911年作)
オランダのデン・ハーグ美術館所蔵の初期のハーグ派様式の風景画です。
モンドリアン晩年の作品、水平垂直線と原色平面の「コンポジション」シリーズとは、全く趣きが違います。柔らかい色と優しいタッチで描かれた作品のピンクとブルーに心が惹かれ、足が、止まりました。
今回、一番心惹かれた作品が、「線と色のコンポジション:Ⅲ」1937年の作品です。
ドンブルグの教会から26年の歳月が経っています。
この作品は、ジャスとリズムをイメージして描かれたと説明がありました。
デ・ステイルの基本コンセプトは、水平、垂直、三原色赤・青・黄・白・グレー・黒です。
この作品は、黒と白にほんの少し青を加えて、構成されています。
分量と配置のバランスが絶妙です。
そのため、美しさが記憶に残ります。
絵画の鑑賞スタイルは、人それぞれ。1つ1つ丁寧に説明を読みながら見ている人、絵を指差して何か楽しそうに小声で話している人たち、大きな声で子供に絵の説明をしている人。(学芸員さんに睨まれていましたが…)
シュレーダー邸を紹介する短いフィルムを3回続けて見入りました。
部屋を仕切るための上吊り戸を引いていくと、天井に青と黄色のレールが現れます。本来ならノイズ(雑音)とみなされ、隠すことを考えるレールの存在さえも、思想に裏付けされています。
オランダにあるシュレーダー邸を見に行きたいと思いました。
ニューヨークMOMAの思い出
ミュージアムショップで買い求めたA4サイズのクリアファイルとハガキは、
線と色のコンポジション:Ⅲ。
チケットファイルは、ポスターと同じ代表的な作品。
昨年、モンドリアンが好きな夫の誕生日に、MoMAデザインストアで買ったマグカップをプレゼントしました。
お湯を注ぐと、赤、黄、青が現れます。
今回のモンドリアン展も、夫に誘われて出かけました。
2人ではじめて訪れたニューヨークのMoMA近代美術館で、モンドリアンに強く惹かれた彼が自分のお土産にと買い求めたものが、モンドリアンのグラスでした。安定感のある形と厚みのあるガラスでできたグラスは、何年も夫の傍にいました。突然、割れてしまったのは、落としたからではなく、経年劣化で弱っていたからだと思います。
MoMA近代美術館には、その後も息子たちを連れて出かけました。小学生だった長男が、モネの「睡蓮」の前で立ち尽くしていたことが印象的でした。
彼が何かに感動すると、立ち尽くす姿をその後も何度か見てきました。
私は、建物の美しさと何よりも絵画の展示の仕方が、記憶に残っています。
一番惹かれた絵は、マチスの「ダンス」フラットな展示室ではなく、階段の踊り場のように設えた場所に展示されていました。「ダンス」を見るためだけに存在する贅沢な空間を忘れることはできません。
シュレーダー邸の窓
SOMPO美術館の窓
どちらの佇まいも美しいと思います。