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アメリカのがん治療=高額治療?

「治療費は大丈夫なのか?ちゃんとやっていけるのか?」がん治療が始まってからというもの、日本にいる親が毎日のように心配してくれました。確かに、アメリカといえば日本では当たり前の国民健康保険制度、というものがありません。日本からの旅行者の方が救急車に運ばれたら何十万もの治療費を請求されただとか、保険に加入できる環境に恵まれなかったアメリカ人の方が高額な治療費で生活苦だとか、そんなニュースを私も日本で目にしていたので、アメリカで治療を受けるイコール高額治療、というイメージを抱くのも無理はないかと思います。

とはいえ、アメリカのがん治療は高額になるから、諦めるしかないのか、というと、そうではないと私は考えています。確かに、治療費の額面自体は高額なものであることは確かなのですが、保険を活用すれば、アメリカで外国人の私でも、アメリカでも治療を受ける際に高額な支払いを防ぐ仕組みがきちんとあるということを知ったためです。私のような会社員は、会社が福利厚生の一つとして提供してくれている民間の保険に加入できることがほとんどかと思います。その保険を有効活用することができれば、場合によっては日本よりも安く検査や治療が受けられるということも実際の経験からわかってきました。

アメリカの保険の頻出単語。
Co-pay(コーペイ): 患者が提供されたサービスに対して払う、決められた自己負担額。

普段たまに歯医者や診察に行く程度だと、その場で払うのはこのco-payのみ。診療を受けた時にその場で払う、患者の自己負担額の事を指します。私はだいたい$15や、$30ドル程度払うことが多いです。私は診察やカウンセリングなどを受けた時に払う料金、という風に捉えています。これは受け取る保険証に支払う額が明示されていることが多く、一般的な内科医の先生の診察なら$15、執刀医などspecialistの先生から診察を受けた時は$30、などと保険によって決まっています。これに加えて実際に受ける治療については、後から保険の控除額が発生され、後ほど別途請求が来ます。

Deductible(ディダクタブル): 保険による医療費負担が発生するまでの、自己負担額上限。
これが高額な支払いを防ぐための仕組みの一つです。co-payの他に、実際の治療に発生する費用(手術代、入院費用、検査費用など)に関しては、治療を受けた直後に支払うのではなく、医療機関から保険会社に請求が行ったあと、保険が適用された後の自己負担分を支払っていきます。自己負担分の総額がdeductibleに設定されている額に達すると、それ以降の支払いには自己負担分より保険会社の負担分の割合が増え、自分で支払いをする医療費の増加のスピードが緩やかになっていきます。

Out-of-pocket(アウトオブポケット): 年間の最高自己負担額。
高額な支払いを防ぐ仕組みのもう一つがこれ。年間で自身が払わなければならない医療負担の総額、というのが決められていて、この総額を超える医療費に関しては保険会社が負担してくれる、という仕組みです。

deductibleとout-of-pocketの関係を絵に表すとしたら、私が思い浮かぶのは枡酒、といったイメージ。医療費がグラスに注がれる日本酒だとしたら、deductibleは升の中に入ったグラス、out-of-pocketは升、といった感じ。グラスと升がいっぱいになるまでは自分で払わなければならないけれど、それ以上に溢れてしまったものは支払わなくていいわけです。


診察を受ける前にネットワークの確認が大事。
日本の保険には無い、「ネットワーク」という概念があります。自分の加入している保険が有効な医療機関をin-network(イン・ネットワーク。ネットワーク内)、自分の加入している保険は適用外となる医療機関をout-of-network(アウト・オブ・ネットワーク。ネットワーク外)と分類分けする、というものです。先ほど挙げたco-pay, deductibleなどの保険で利用できるサービスを最大限利用し、医療費を最小限に抑えるためには、できるだけin-networkの医療機関にかかるようにするのが一番良いかと思います。

Always, always negotiate....常に交渉するのを忘れちゃダメよ。
がんの検診センターの受付のおばちゃんが、積み上がる医療費に軽くパニックになっている私を見かねてこう一言。内心、がんと診断されるかもしれないっていう思いだけで崖っぷちにいるような気分なのに、医療費まで自分が交渉するなんて、やってられるかい!と叫びたい気持ちになりました(^^;)でも、アメリカで医療を受けるなら、これは自分で立ち向かわなければならない現実。受付のおばちゃんも私を心配してアドバイスしてくれているわけです。周りの日本人の方にも相談してみたところ、実際にお子さんの手術の時に(がんではないですが)、こんなに高額の手術費は払えない、と会計の時に相談したところ、半額にしてもらったこともあるそう。(何で最初から半額じゃないの?と思ってしまいますが。。。)今のところ、私はがんを治療する上で交渉したら割引してもらえた、という経験をしたことはありません。「これは最大の割引がすでに適用されてるんだよ」と説明されることが多いです。今のところがん患者さんに対する対応というのはとても優しいというか、がんに関する治療は最大限に割引がすでに効いている、みたいな経験をすることの方が多いです。とはいえIs there any way for me to get a discount?(割引してもらえる方法とかないかしら)となるべく毎回聞くようにしています。がん治療でお金がかかって大変で。。。なんて話をしながら。もしかしたら割引してもらえる機会があるかもしれないので。

もしかしたら日本よりも安い?...ときもある治療費
アメリカでがん治療を受けて良かった、と時々思うのは、おそらく日本だと保険適用外になってしまうのでは、という医療が保険適用内で受けられたことです。(私は利用したことが無いのでわからないのですが、日本では高額療養費制度を組み合わせることで同様に抑えられるのかもしれません)私の経験では、まず乳房再建手術に保険が適用され8万円程度に費用を抑えてもらえることができました。そして手術後に再発の可能性を測るOncotype DXという検査も適用内で受けることができました。この検査、日本ではまだ適用外で40万円程度かかるというのを目にしました。今後の治療方針を決める上で決め手となった検査でもあったので、気軽に受けられて良かったなあ、としみじみ思います。
※乳房再建手術には、アメリカではWomen’s Health and
Cancer Rights Actという法律が適用されていて、女性が保険の適用を受けて乳房再建手術を受ける権利を保証しています。


アメリカで医療を受ける=治療費は自分で管理する、という覚悟。
私の場合実際がん治療を始めてみて、先生が勧めてくれた治療や医療機関が保険適用外だった、ということもありました。保険を100%活用できている、とは言えず一筋縄では行かなかった実感があります。保険適用外の医療機関ではあったものの、先生が非常に親身になってくれ、治療内容に関して疑問の無いようにきちんと説明してくれる素晴らしい先生だったので、適用内の機関で再び別の先生を探し直すことなく治療を受けたということもありました。
日本に住んでいるときは、医療費について何の疑問も持たず気軽に医療サービスを受けて費用を支払っていましたが、今はその環境が大変恵まれたものであったのだなあ、と思っています。今は医療を受ける上で、保険の仕組みを自分で学んで理解しておかないといけないし、今自分は年間でどれくらい支払っているのか、各医療サービスにはどれくらい保険会社に負担してもらえるのか、など常に気を配っていなければと感じています。時々ストレスに感じることもありますが、わからないことがあれば保険会社や、病院の会計の方に相談してみると、親切に教えてもらえることが多々あるので、とりあえずわからない時は周りに同じ質問を聞きまくってみると理解が深まると思います。


参考にさせていただいた資料:



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さらみ
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