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幸福な記憶を手繰り寄せてくれるもの


私には、

わざと“記憶”と“香り”を結びつけておく

という習慣があります。


忘れたくない出来事に遭遇しそうな時、

未来の自分が、香りを頼りに今日の日の記憶を手繰り寄せられるように。

あらかじめ特別なフレグランスを纏っておく。


そんな、秘密の習慣があるんです。



鮮明な想起によって幸福感で満たされる


私には愛おしくて堪らない人がいます。


彼と出会ったのは、もう2年近く前のこと。

暫く距離を置いていましたが、

半年程前に再会してからは、再び月に1回程度、時間を共にするようになりました。


彼と初めて会った日に、偶然纏っていた練り香水。

これが愛おしい人を象徴する香りとなりました。


ジャスミンをベースとした、女性らしいフレグランス。

時間と共に体温に溶け、柔らかな香りへと変化し、愛おしい人の肌へと移る。

優しい空間で緩まったジャスミンの香りは、

私の鼻孔を擽りながら、特別な記憶と共に脳内に刷り込まれていきました。


あの人の純粋さ溢れる声、

少しだけカサカサとした男性らしい手の質感、

猫のように柔らかい髪、

安心させてくれる体温と鼓動、

時折見せる縋るような瞳、


ジャスミンの香りを身に纏い目を閉じると、彼の存在を鮮明に思い出す。

愛おしさと幸福感で、胸が満たされるんです。


そうして鏡を見てみると、

彼と過ごす日の自分と同じ顔をしているんですよね。


愛おしい人と一緒に過ごす日の私の表情は、自分でも驚く程に穏やか。

それでいて内側からの発光を感じます。


香りが手繰り寄せてくれた記憶が、いつも私を幸福感で満たしてくれる。

愛おしい人を鮮明に想起し、また今日も強く前を向いていけるんです。

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