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#21 アドバイザー・コンサルタントと相談員ってどう違うの?【FPに求められる姿勢とは】
ハローワーク職業訓練で人生が変わる?大人の学び直し体験記
FPのロールプレイングで学んだこと
訓練校ではロールプレイングの授業もあります。
ある相談者の例を出し、「今まで学んだお金や生活の知識を生かして、あなたならファイナンシャルプランナーとしてどのようなアドバイスをしますか?」という授業です。
もちろん、私たち訓練生は最近知識を学んだばかりのひよっこなので、その知識を総動員して必死にアドバイスをします。
ここの無駄はこう省いたほうがいい、車は手放したほうがいい、節約をして資産運用したほうがいいetc….
それを見ていた講師から最後にアドバイス。
みなさん一生懸命アドバイスされていましたね。
でも私だったら「あれやるな、これやるな」は絶対に言いません。
お客さんに気持ちよく帰ってもらうために、もっと大切なことがあるんです。
アドバイザー、コンサルタント、相談員
これらの違いって分かりますか?
いずれも「相談に乗る」「助言を与える」職業ですが、それぞれニュアンスや役割が異なります。
・アドバイザー(Adviser / Advisor)
意味:「助言者」「指導者」という意味を持ち、特定の分野において専門知識を活かして助言を行う人。
特徴:比較的軽めのアドバイスが中心で、実際の業務執行には関わらないことが多い。一般的に長期的な関係を築きながら継続的に助言を行う。
例:「ファイナンシャルアドバイザー」「キャリアアドバイザー」
・コンサルタント(Consultant)
意味:「専門家としての診断・分析を行い、具体的な改善策を提案する人」
特徴:分析やリサーチを通じて課題を特定し、具体的な解決策を提示する。
企業や個人に対して、より専門的・戦略的なアドバイスを提供することが多い。実際の業務に深く関与し、プロジェクト単位で契約することが多い。
例:「経営コンサルタント」「ITコンサルタント」
・相談員(Counselor / Advisor)
意味:「相談を受け、問題解決のための支援や助言をする人」
特徴:企業よりも公共機関や福祉・医療分野に多い。
一般的に専門知識を持ちながらも、コンサルタントほど戦略的ではなく、寄り添う形での支援が多い。
例:「福祉相談員」「消費生活相談員」
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アドバイザーは「助言」、コンサルタントは「助言」+「実行支援」、
相談員は上記二つに比べると、助言をするというより、寄り添って一緒に答えを導くという感じでニュアンスがやや違います。
さて、先の講師が言っていたもっと大切なこととは、FPは「相談員として相談者に寄り添う」ということです。
アドバイザーやコンサルタントのように「正解を持っていて」それを助言するのではなく、相談員として「正解を持っていない」状態からスタートし、相談者に寄り添い、肯定して肯定して肯定した先に、相談者が自分で答えに辿り着くよう導く、これがFPにとっては重要なのです。
「聞く」のではなく、「聴く」
相談者に寄り添うと一言に言っても、実行するのはなかなか難しいものです。寄り添うためにはまず、相手の言っていることによく耳を傾けなければなりません。
「聞く」は読んで(書いて?)字のごとく、門の中に耳があります。あまりオープンな感じはしませんね。
対して、「聴く」は耳を傍に置いて10個の目と心で聞くという感じです。全力全開、フルオープンです。
さて、聴くためにはいくつかの具体的な方法があります。
頷き
相槌
要約
1や2は普通の会話でもよくやるテクニックです、聞いてるよ、共感してるよというサイン。
会話中などに相手と同じ動作をするミラーリングというテクニックがありますが、共感を示すという点では同じカテゴリーになると思います。
逆に相談者の話が著しく脱線した場合には、適当な相槌を打つことであまり聞いていないよ、という態度を示して本来の会話に引き戻すなど、場を支配するテクニックでもあります。(こちらは高等テクなので上級者が限られた場で使う)
3は、「それってこういうことですよね?」「〇〇とおっしゃっていましたが、こういうお考えなんですね」など、オウム返しや復唱をしながら相手の言ったことを要約し、お互いの理解にズレがないかを擦り合わせていく作業です。これはやってみるとかなり難しい。オウム返しまではできたとしても、そもそもちゃんと理解していないと要約することができません。
それにしてもオウム返しするだけで、なかなかどうして相談者は自分の気持ちや考えがクリアになっていくものだと感じました。
「すごく悲しかったんです」「なるほど、すごく悲しかったんですね」
相手の口から話されるのを聞くだけで、客観的になれる気がします。
「聴く」一つでもこんなに奥が深かったんだ。
寄り添ってもらうと人はどうなるのか
Case1 老後資金が一千万円足りない50代専業主婦Aさん
Aさんは夫の稼ぎには不満があるものの、自分で働く気はなく、近所のママ友とランチで愚痴を言う典型的な(?)主婦です。相談内容は、自分で調べたところ老後に一千万ほど不足しそうなのでどうしたらよいか、ということ。
FPはまず、Aさんが自分で老後のお金を試算したことに着眼して褒めちぎりました。
確かに、漠然と不安になることはあっても、具体的な額を試算する人は少ないものです。
褒められたことに気をよくしたAさんにFPはさらにたたみかけ、お金を貯めるために今どのようなことが出来そうか10個程度挙げてもらいます。
始めから10個聞くのではなく、Aさんが一つ答えるごとに「いいですね、他には?」と褒めながら掘り下げる。
結局Aさんは会話の中で自分で答えを見つけ出し、自力で一千万円埋められそう、と納得して帰ったそうです。
Case2 家族と会話がない70代のBさん
Bさんは遺産相続に関して、妻に全額相続させたく公正証書遺言の作成を考えている70代の男性です。
今回の相談の前に別な場所で何回か遺言について相談をしたものの、その工程の複雑さから別な選択肢を提案されていました。
FPは公正証書遺言を作りたいというBさんの意思を尊重して徹底的に話を聞くと、実はBさんは相続をさせたい妻はおろか、法定相続人である子どもたちともほとんどこの話をしないまま一人で遺言のことを考えていたようでした。
本来の主訴である遺言よりも、問題は家族とのコミュニケーション不足だったことが判明したということでした。
Bさんは他の相談では自分の意見が否定されたことにより意固地になり気持ちを話すことができませんでしたが、今回は入り口で肯定してもらったことがきっかけになり、趣味や家族との話をたくさん話したことが解決の糸口となりました。
上記のケースのように、相談者を肯定して寄り添って話を聴くことで、相談者自身が自分で解決策に気づけるためには、「もっと話したい」、「この人なら分かってもらえるかも」と思わせる相談員の力量が問われるところですね。
習った知識だけを使って、相談者の意見を曲げようとしていた私たちは目から鱗でした。(豊富な知識はもちろん必須ですが)
ロープレ、初めはちょっと戸惑いましたが真剣にやると面白かったです。相談員の役をやったとき、相手を肯定するのが意外に難しくて早々に言うことがなくなってしまいました。でもネタがなくなったその先に一生懸命捻り出すことで解決の糸口が見つかることもありました。
筋トレも、辛くてもう無理って思ってからが筋肉が本気出したりするもんね(違う?)
実は「聴く」は普段の生活でも超有効!
ロープレをしている時、夫婦間のコミュニケーションや子どもとのやりとり、仕事においても重要なメソッドだなぁと感じました。
普段話している内容って意外に相手にうまく伝わっていなかったり、自分もうまく理解できず、いつの間にか方向性がずれていることってありますよね。
バックグラウンドが違う人や、年が離れている人とのやりとりならなおさら。
そんな時にこの「聴く」とりわけ「要約」のスキルを使えば理解の齟齬が防げそう…
「それってこう言うことだよね?」私も日常生活で使ってみようと思います!
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