『都市伝説、徹底考察』「ひとりかくれんぼ」の真相を暴く!!⑥ 仮説 式神編
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・私は専門家ではありませんので、間違った情報及び知識が含まれている可能性があります。信じるか信じないかは貴方次第です。
・特定の団体及び個人を意図的に批判するものではありません。
・この記事に関して損害及び不利益を被っても、またひとりかくれんぼを実行して何らかのトラブルが発生しても、一切の責任を負いません。
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ここからが本題!!
前回の考察では「ひとりかくれんぼは嘘っぱちの呪術」という風に結論付けましたが、それじゃあロマンが無いですよね。
ということで「本当にちゃんとした呪術の可能性があるんじゃないか?」ということで考察してみた結果、「呪術の可能性もあるぞ」という結論に達したので、それを紹介していきます。
1、この仮説における考察の前提
前回の創作説は基本的に「ひとりかくれんぼの呪術としての欠陥の多さ」が根拠となっていた為に何も無く考察を進めましたが、今回の仮説を考察していく際に前提を立てたので、まずはその前提について解説していきます。
・「ひとりかくれんぼ」は改変されている
「2chに書き込まれたひとりかくれんぼの手順」は口承の中で変化したものであり、元々の手順からはかなり簡略化や要素の追加が行われているのではないか?ということです。
簡単に言えば「今語られているひとりかくれんぼとは別にオリジナル版が存在するはず」ということで「素人が勝手に改変したからひとりかくれんぼに呪術としての欠陥が生まれてしまった」という前提を立てて、欠陥に関する問題点ははクリアしていこうという考えです。
「欠陥だらけの今語られているひとりかくれんぼ」を実行したところで何かが起きるとは思えないので、やっぱり騒いでるYouTuberやブロガー達はバカにしておきます。バーカバーカ♪
・ひとりかくれんぼの噂は実際に存在した
もちろん、ひとりかくれんぼが改変されていたとしても創作では無い以上、最初にひとりかくれんぼの手順を書き込んだ人物も誰から伝え聞いた事になります。(投稿者がアレンジしていたとしても、オリジナル版は誰かから聞いたはず)
じゃあどこで、誰から聞いたのか。
当時の2chで有力視されていたのが近畿地方の京都府、大阪府、兵庫県のあたりです。これらの地域は基本的に考察班の太郎丸氏の聞き込みと、多人数かくれんぼについて書き込んだ多人数氏の証言が主な情報源となっています。
・太郎丸氏の調査
友人関係から「ひとりかくれんぼ」又はそれに似た降霊術を知っているか?という形式で調査。結果は
兵庫:21人、大阪:17人、滋賀4人、京都:5人
が知っていると回答。
大阪府北部から兵庫県南東部について、分布が多かった模様。ただし、太郎丸氏の友人関係上の理由で偏っただけの可能性も。
・多人数の証言
兵庫県出身で「多人数版のひとりかくれんぼ」は中学生の頃に聞いたと証言。
地元の友人関係に話を聞いたところ「ひとりかくれんぼ」としてでは無く、「遊んでいると人数が1人増える怖い話」という形で知っている人が多かった模様。
無論、信頼性については所詮は2chの書き込みなので疑問符は付きますが、Wikipediaを見ようが本を読もうが、他に有力な情報があるわけでもありません。なので今回の考察では、この情報を頼りとしていきます。
ということで前提のまとめです。
・「ひとりかくれんぼ」という噂は存在して、近畿地方(主に兵庫県と大阪府)で語られていたらしい。
・現在のひとりかくれんぼは「改変されたひとりかくれんぼ」であり、別に「オリジナル版ひとりかくれんぼ」が存在したはずである。
2、オリジナル版のひとりかくれんぼとは?
では、オリジナル版のひとりかくれんぼとは、どんなものだったのかという事について、考察していきます。まずひとりかくれんぼを何らかの呪術であるとするならば、私自身が前編後編にわたり指摘した欠陥についてクリアしなければどうしようもありません。
ただ少々無理矢理ですが、言ってしまえば大まかな欠陥については前提の「ひとりかくれんぼは改変されたもの」ということでどうにでも説明はつきます。
「宿水がただの溜めた水になった」とか「洗米を用いるところをただのお米になった」とかは口承されていく上で簡略化されてしまった、何ということは想像に難くないですね。
また、テレビをつけるとか言葉についても付け加えられたり、改変されている可能性が高いとは思います。禊のような呪術から見れば大きな欠陥も、一般人から見たら面倒くさい手順で省かれたなんて事もありえそうですね。
ただ儀式を構成する上で特徴的な部分については改変の余地は少なく、オリジナル版に近い形で伝わっているんじゃないかと思い、それに付随する疑問点は解消していけば呪術としての姿が見えてくるのではないかと思います。
以下が特徴的な部分です。
1、ぬいぐるみを使う
「術者の体の一部を入れる」と「術者以外の名前を付ける」という行為によって、「術者の分身」と「術者以外の存在」という個性が混在していて、ぬいぐるみの役割がハッキリしないものの、ぬいぐるみを使うというのは一つの大きな特徴。
2、隠れるという行為
隠れる場所を用意する、仕切られた空間を用意して、隠れるという行為は他の呪術にはあまり見られない特徴。
3、儀式の流れ全体について
目的意識を持った行動が見られず、何のために儀式を行う(降霊する目的、どういう呪詛を掛けるのか)という事が明確ではないが、逆を言えば「目的が無い」という大きな特徴とも言える。
・オリジナル版の手順
ひとりかくれんぼは、手順の複雑さに対して終了手順があまりにもお粗末なのは問題点編で指摘した通りです。ここで「ひとりかくれんぼは改変されたもの」という前提で考えると、やはりザックリした終了手順と細かな指示のある準備段階や実行手順、注意事項を設定した人物は別人、終了手順は噂として広まる中で誰が勝手に付け足したものと考えるのが自然じゃ無いかなと。
という事は、オリジナル版ひとりかくれんぼの本来の手順は「開始時点から隠れ場所に隠れるまで」という事になります。勿論「開始時点から隠れ場所に隠れるまで」の間でも、手順の簡略化や追加など改変が行われている可能性が高いので、全てがオリジナルとは言えませんが。
しかし、終了手順が付け加えられたとすると、オリジナル版のひとりかくれんぼは「終了手順の無い呪術」ということになります。後処理や終了手順がない呪術なんてあり得るのか?という疑問が湧いてきますが、それは一回スルーして後々説明していきます。
・オリジナル版ひとりかくれんぼの目的
問題点編でも指摘しましたが「ひとりかくれんぼは降霊をしても術者からなんらアプローチする事がない。呪詛を掛けるにしても、相手にどうなって欲しいかという意思表示がない」ということでおおよそひとりかくれんぼを行う目的がハッキリとしないということでした。
しかしひとりかくれんぼは呪術、目的が無いわけがない。ひとりかくれんぼを実行することにより、なんらかの目的を達成していはず。ということは、オリジナルの手順でもあったと考えられる、「開始時点から隠れ場所に隠れるまで」の段階で最終的に達成した事が目的となると思います。
となると考え得るのは降霊術で言えば「ぬいぐるみを幽霊の依代として隠れる」、呪詛説で言えば「ぬいぐるみを自分の見立てして隠れる」という事、これがおそらく「ひとりかくれんぼの目的」となると思います。言い換えると「ひとりかくれんぼは幽霊の依代、若しくは自分の見立てを作り隠れるための呪術」という事になるのでは無いかと。
そしてここで注目すべき点が「隠れる」という行為です。依代や見立てを作るだけなら、わざわざ時間を指定して複雑な手順を実行する意味はありません。という事は勿論、なんの意味も無く隠れている訳では無いということになります。
聞いたことある人も居ると思いますが、平安時代頃に頻繁に行われていた「物忌み」という行為があります。
平安期の貴族社会では、夢見が悪い場合や、何か不吉なことがって気にかかる場合は、門を閉ざし、数日間外出せずに身を慎みながら、家の中に引き籠もっていることがあった。
引用:豊島泰国 著『図説 日本呪術全書』1998年,原書房
簡単に言えば「一定期間中、家から出ずに誰とも合わないこと」というものなのですが、これは凶事を避けたり神職の方が祭事にあたって身を清める為、穢れを自身に寄せ付けないなどを目的として行うものなのですが、ひとりかくれんぼの「隠れる」という行為はこの「物忌み」にあたると考えられます。
ひとりかくれんぼの隠れるという行為が「凶事を避ける、穢れを自身に寄せ付けない」という行為であるとするのであれば、術者はなんらかの良く無い凶事か穢れが迫っている状況にあるということで、そういった脅威から逃れる為に隠れていると考えられます。
ということは「ひとりかくれんぼは幽霊の依代、若しくは自分の見立てを作り、隠れることにより何らかの脅威から身を避ける目的で行う呪術」と言えるのでは無いかと。
・ひとりかくれんぼの特性
「オリジナル版には終了手順が無い」という問題点をスルーしましたが、これについて解決していきます。呪術において終了手順が無い場合は「長い期間、継続して効果を得る為で短期間で終わらせる必要の無い呪術」であるか「結果や場合によって対処の仕方が変わる呪術」というパターンが考えられます。例としては、前者は御守りやお願い事のような願掛け、後者は占いやおみくじなんかありますね。
ひとりかくれんぼの目的は「幽霊の依代、又は自分の見立てを作り、隠れることによって何らかの脅威から身を避ける」こと。脅威になるものが一定でない場合では、勿論対処が異なります。幽霊に対して呪詛返しするわけにも、呪詛に対して成仏してくれと願うわけにもいかないですからね。よって、ひとりかくれんぼには「結果や場合によって対処の仕方が変わる呪術」という性質があると言え「オリジナル版はひとりかくれんぼ単独ではなくなんらかの呪術と併用する性質があった」ということが言えるのではないかと。
ということで、以下まとめです。
・終了手順が無く、「開始時点から隠れ場所に隠れるまで」しかなかった。
・「幽霊の依代、又は自分の見立てを作り、隠れることによって何らかの脅威から身を避ける」という目的を持つ呪術である。
・結果や場合によって対処の仕方が変わる呪術で、ひとりかくれんぼ単独ではなくなんらかの呪術と併用する性質があった
3、オリジナル版ひとりかくれんぼの正体
さて、どうやらオリジナル版のひとりかくれんぼを行う目的やどんな内容の呪術なのか大体分かりました。という事で、疑問点を解消しながら正体に迫りたいと思います。
・ぬいぐるみの役割は「式神」
さて、ひとりかくれんぼに置いて大きな問題として「術者の分身」と「術者以外の存在」という個性が混在していて、ぬいぐるみの役割がハッキリしないという問題がありました。しかし、この問題はそもそも「幽霊の依代もしくは自分の見立て」と考えた場合に発生する矛盾で、それ以外何かで当てはまるものがあれば問題はないわけです。
そう思って私が調べた結果たどり着いたのが「思業式神」という物。
思業式神(しぎょうしきがみ)
・陰陽師が作り出す式神の一つ。依頼者の御度(おど)に相性を合わせ、陰陽師自身の御度を練って作る式神。
最後に陰陽師が上位式神としての名前を与えると、名を与えることで呪(しゅ)をかけて、意志をもたせ、陰陽師の分身として依頼主を守護したりする。
※御度は陰陽道の言葉で「気」や「エネルギー」といった意味合いの言葉
参考:水の陰陽師 安倍成道 ホームページ
http://www.onmyozi.net/zyouishikigami.html
書いてある通り思業式神は「術者の分身でありながら、術者とは別の名前を持つ」という事になり、まさしく「術者の分身」と「術者以外の存在」という個性を持つひとりかくれんぼのぬいぐるみと同じ性質なのです。
作り方などは全く違うため、紹介されている陰陽道における思業式神ではありませんが、修験道には式神と同じような護法童子というものがあったりするので、別の宗派における式神の作り方だったという可能性は大いに有るのではないかなと。また陰陽道についても安倍晴明以外にも系譜があったりとするので、そういった別の陰陽道のものというのも考えられます。
・ひとりかくれんぼの目的は「呪詛返し」
さて、ぬいぐるみの役割は式神だったとして、じゃあ「何の為に式神を作るのか?」ということが明確ではありません。目的としては、ひとりかくれんぼは「幽霊の依代、又は自分の見立てを作り、隠れることによって何らかの脅威から身を避ける」という目的を持つ呪術らしいということだったので、ぬいぐるみの役割が式神だとすると「式神を作り、隠れることによって何らかの脅威から身を避ける」という事が目的となります。
さて、ここで注目するのが実行時間です。ひとりかくれんぼが行われる時間帯というのが、午前3時から2時間の間。ひとりかくれんぼの実行者は丑の刻参りとの同様の時間帯に、何らかの脅威から身を避けようと隠れるわけです。
となると考え易い脅威というのはやはり「丑の刻参りの様な呪詛」。悪霊も考えられますが、そうなるとわざわざ式神を作るより術者自身がお祓いをする方が手っ取り早く、憑坐などそういった方法があるので。
また「ぬいぐるみの中に身体の一部を入れる」というのも、呪詛返しだとすれば隠されて結界の中にいる術者では無く、式神であるぬいぐるみに対して呪詛の矛先が向く様にするため、という捉え方も出来るのではないかと。
・ひとりかくれんぼの発祥は?
前提のところで紹介した通り、ひとりかくれんぼの噂が広まっていたのが近畿地方の京都府、大阪府、兵庫県のあたりらしいという事でした。この当たり、特に京都というのは安倍晴明ゆかりの地だったり、丑の刻参りで有名な貴船神社があったりと、呪術との関わりが強い地域です。
丑の刻参りが呪詛術として流行ったのならば、口裂け女のポマードやカシマさんのカシマレイコの如く、その対処法として呪詛返しの術も流行った可能性も十分に考えられ、それがひとりかくれんぼの原型で、民間に伝わる術が口承により変化してひとりかくれんぼとして広まった可能性もなくは無いんじゃないかと。
ただの想像で確証は何も無いんですけどね….…
4、まとめ
ということで私の結論としては
「オリジナル版のひとりかくれんぼ」は、丑の刻参りの様な呪詛に対する式神を用いた呪詛返しの呪術であり、現在に伝わる「ひとりかくれんぼ」は口承されていく中で基本的な手順の欠落、本来は無い終了手順が付け加えられた物だった。
という事になります。
ひとりかくれんぼは実行者と術者が一貫して同じ人物が行っていますが、恐らく本来は「ぬいぐるみを細工する人物=式神を作る術者=陰陽師」と「実際にひとりかくれんぼの手順を実行する人物(隠れる人物)=依頼者」という2人の人間が居なければならないのかなと。何らかの呪詛にかけられた依頼主に対して、術者が守護となる式神を作り依頼主に渡すシステムだったという気もします。そうなれば後始末が適当なのも、本来は依頼主ではなく式神を作った術者行うか術者の指示によって行われる為に、正しい終了手順が伝わらなったとも考えられるかもしれません。
まぁ、と言ったかんじです。何はともあれ、最後まで読んでいただきありがとうございました。これにて私のひとりかくれんぼに関する考察終了です。
本当はもっと近畿地方の民間信仰を集めたり、陰陽道やら神道やら詳しく調べられたら面白いんだろうなとは思うんですけど、遠いしそんな知識もないんでね……
それじゃあ、後は任せたぞ!オカオタ諸兄の皆!
バッドラックだ!(cv.髙田延彦)
※参考文献
・2ch(現5ch)『【降霊】検証実況スレ本館【交霊】part1〜37』2007年〜2010年
・778氏『778氏まとめサイト』
http://hitorikakurenbo778.web.fc2.com/main/index.html
・水の陰陽師 安倍成道 ホームページ
http://www.onmyozi.net/zyouishikigami.htm
・宮島鏡 著、鬼頭玲 監修『呪い方、教えます。』2001年,作品社
・豊島泰国 著『図説 日本呪術全書』1998年,原書房
・加門七海 著『お咒い日和 その解説と実際』2017年,KADOKAWA
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