【キングダム】原泰久先生の経歴|プログラマーから脱サラして大人気漫画家へ
こんにちは。saraです。
今回ご紹介するのは、長編歴史大河漫画「キングダム」の作者として有名な原泰久先生です。
「キングダム」は、2006年から週刊ヤングジャンプにて連載が開始され、2022年現在までのコミックス累計発行部数は8,300万部を突破。
アニメ化、実写映画化も果たし、長年週刊ヤングジャンプを支える看板漫画として人気を博しています。
知略と戦略が巡り合う最上級の頭脳戦、何万もの兵が織りなす迫力満点の合戦シーン、個性豊かなキャラクターによる熱い人間ドラマなど、数多くのたまらない魅力で読者を魅了し、大ヒット作品となったキングダムですが、
連載当初、「キングダム」は人気が出ずに、過去には読者アンケートで最下位を記録したこともあり、一時は打ち切り候補の漫画となってしまったこともあるなど、大ヒットに至るまでは決して順風満帆な道のりではありませんでした。
また、原先生は元々はシステムエンジニアとして会社に勤めるサラリーマンであり、そこから退職して「キングダム」の連載をスタートさせた脱サラ漫画家さんでもあります。
今回は、そんな原先生の経歴や「キングダム」が誕生して大ヒット漫画となるまでの経緯についてご紹介していきます。
動画版はこちら。
経歴
1975年6月9日生まれ、佐賀県出身。
小学生の頃から絵が上手いと評判で、自由帳にキン肉マンの絵を描くと、友達に「描いて!描いて!」と頼まれて行列ができるほどだったそうですが、この頃はまだ「絵を描くこと」が仕事になるとは一切意識していなかったそうです。
この頃から、映画や漫画がとても好きで、特にジャンプは毎週親に買ってもらってとにかく隅々まで読んでいたそうですね。
ちなみに、原先生いわく、「キングダム」は、昔のジャンプっぽいと言われることが多いらしいんですが、
これは学生時代に読んでいたジャンプが潜在的にエッセンスとして自分の中に入っていて、それが作品に出ているからだそうです。
また、学生時代に大河ドラマや歴史物の漫画にハマり、その影響でこの頃から自然に「歴史」に興味を持つようになります。
そんな学生時代を過ごし、高校卒業後は、映画が好きだった影響から、映画監督を目指すようになり、九州芸術工科大学へと進学します。
映画監督を目指していた当時は、物語を作るのがとても好きだったそうで、漫画用・映画用・小説用など、とにかくいろんな物語を考えて100本以上は作っていたそうです。
しかし、芸術系の大学に入り、さまざまな情報に触れるなかで「現実的に映画監督として食べていくのは難しい...」と感じ始め、
大学3年生の頃、「映画は一人では作れないけど、漫画は一人で作れる!」と思いたち、脚本・作画・演技すべてを自分で手掛けられる漫画家を志すようになります。
そして、本格的に漫画を描き始めてから約1年後の1997年・大学4年の頃に「上田君の退化論」で第36回ちばてつや賞ヤング部門にて期待賞を受賞します。
初めて賞を受賞した時、原先生は「跳び上がるくらいびっくりして嬉しかった。人生で1番興奮した」と振り返っており、この時に初めて漫画家という職業が現実味を帯びたそうです。
大学卒業後は大学院でプログラミングを学びながら漫画制作を続け、1999年に「於兎松」で第40回ちばてつや賞ヤング部門にて準大賞を受賞し、
これがそのまま「別冊ヤングマガジン」にて掲載され、漫画家デビューを果たします。
その後、在学中に連載を目指していくつかの読み切りを描きますが、残念ながら連載には届かず、大学院卒業後はシステムエンジニアとして企業に就職することになります。
会社員時代
システムエンジニアとして入社した会社では、少人数のチームがいくつもあり、原先生はその中の検索エンジンのシステムを作るチームに配属されます。
少人数のチームの中で仕事をしていくうちに、原先生はチームにはそれぞれ役割があり、それぞれが有機的に動いていることに気がつきます。
そしてチームの中で切磋琢磨したり、チームリーダーが上長と戦ったりなど、一人一人がアグレッシブに動いていることがドラマチックだと感じ、
この少人数のチームで働いた経験が「キングダム」の「伍」へと色濃く反映されているそうです。
また、少人数のチームで働く中で上司とも深く関わり、この経験が、先輩に叱られたり、かわいがられたりしながら学んで成長していく信へと繋がっていきます。
このような会社員としての様々な経験は、「キングダム」を描く上で欠かせない経験であり、原先生は「キングダムは会社員の経験がなかったら描けなかった」と振り返っています。
入社当初は「早く抜け出して漫画家デビューしよう」と考えていたそうですが、毎日の仕事が多忙で漫画を描く時間を取ることができなかったため、
「漫画と向き合って、ちゃんと描きたい」という思いから、2003年・27歳の時に会社を退職して、本格的に漫画家を目指し始めます。
下積み時代
退職後は、ひたすら漫画制作に打ち込み、雑誌のコンテストに応募したり、12社の出版社に持ち込みを行なったりした結果、「少年マガジン」と「ヤングジャンプ」に作品が評価され、最終的には「ヤングジャンプ」で連載を目指して活動することになります。
そして2003年には、読み切り作品「覇と仙」で第23回ヤングジャンプMANGAグランプリにて奨励賞を受賞します。
「覇と仙」は、春秋戦国時代を舞台にしたファンタジー路線の作品でしたが、原先生の中で、次第にアイデアがなくなっていったため、ここで新たに春秋戦国時代を舞台にした「キングダム」の前身となる読み切り作品を描き始めます。
読み切りの段階では、主人公は「政」だけと考えており、「信」は引き立て役のようなポジションでしたが、「政」だけを主人公にしてしまうと「王宮の話が中心になってしまい、自分が描きたい「合戦」や「歩兵の前線」が描けない」と感じたため、最終的に「信」を主人公にしたそうです。
「キングダム」は中国の歴史書である「史記」をベースに物語が展開されていますが、原先生は、退職後に「史記」を読み、「ドラマチックだ。これは絶対にウケるはずだ。」と確信したそうです。
また、一般的によく知られている三国志までの歴史を舞台にすると、制約が多く自由に物語を展開させることができない恐れがありますが、
その点、現存する文献のうち「史記」に関する記述はほとんど残っておらず、数行の記述ばかりだったため、「記述のない部分を自分で想像して自由に決められるから自分にはぴったりだ」と感じ、
そこから「史記」をベースに物語を展開させていくことを決めたそうです。
こうして完成した「キングダム」は、「週刊ヤングジャンプ」にて連載が決定します。
原先生は、アシスタント経験がなかったこともあり、「キングダム」の連載決定から連載開始までの4ヶ月間は編集部の勧めで、「SLAM DUNK」や「バガボンド」の著者で有名な井上雄彦先生の元でアシスタントを経験しています。
のちに原先生は井上先生のことを、「漫画家としての指針となる人」と称しており、この出会いは原先生にとって、大きな財産となっています。
キングダム
そして2006年・30歳の時に「週刊ヤングジャンプ」にて「キングダム」の連載をスタートさせます。
「キングダム」は春秋戦国時代の中国を舞台に、天下の大将軍を目指す信と、後の第31代秦王・嬴政が中華統一を成し遂げるまでの物語を描いた長編歴史大河漫画です。
キングダムは「史記」をベースに構想を練り上げ、そこに肉付けをしていく形で物語が作られていますが、
原先生は「キングダムは設計が命」と語っており、Excelで年表を作り、その縛りの中でどう盛り上げるか逆算してかなり細かく設計図を作っているそうです。
キングダムの根底にあるのは「ゴールとなる目的(勝利)があって、そこに至るにはいくつものプロセスがある。」というサラリーマン時代に培ったプログラミング的な考え方であり、
それにより描かれる勝機の見えない絶望的な戦場をひっくり返す知略のぶつかり合いや、針の穴に糸を通すようなギリギリを極める攻防の数々は、「キングダム」の大きな魅力となっていますね。
また、原先生は、キングダムを描く際に、史記に書かれた事実と異なることは描かないと心がける一方で、史記に明確に書かれていること以外は自由に描いており、
例えば、「羌瘣」が女性なのは、「史記」には性別が明確に書かれていないからだそうですね。
また、「完全なる歴史もの」になってしまうと読者との間に距離感が生じてしまうため、衣装や建物などはあえて歴史ものっぽさを避けて現代とシンクロするように描いているとのことです。
そんな「キングダム」ですが、連載当初はなかなか人気が出ず、読者アンケートで最下位を記録してしまうこともあり、一時はいつ連載が終了してもおかしくはない状況でした。
このままだとまずいと感じた原先生が、師匠である井上先生に相談したところ、井上先生から「ストーリーは面白い、信の黒目が小さいだけだ」とのアドバイスを受けたそうです。
井上先生から受けたアドバイスを基に、信の黒目をひとまわり大きくすることで、必然的に全体的なタッチにも手を加えることになり、その結果、信は主人公らしい躍動感のある絵になりました。
絵を変えたことをきっかけにキングダムは徐々に人気が出始め、その後は読者アンケートで連続一位を獲得するまでに至ります。
そして、2012年にアニメ化、翌2013年には、第17回手塚治虫文化賞にてマンガ大賞を受賞。
2019年と2022年には実写映画化もされ、現在までのコミックス累計発行部数は8,300万部を越えるなど、爆発的な人気を誇るロングヒット作品となっています。
キングダムは、「史記」をベースに作られているため、この先の大筋のストーリーや物語の終わり方は既に原先生の中で決まっているとのことで、
自身が健康である限りキングダムは必ず予定通りに完結すると原先生は語っています。
2016年の段階で、80巻~100巻くらいになるのでは...と発言しているため、まだまだキングダムを楽しむことができそうですね。
まとめ
今回は「キングダム」の作者として有名な原泰久先生についてご紹介しました。
漫画家という夢を追い続け、脱サラ後に見事大ヒット作品を生み出した原先生。
最上級の頭脳戦を、臨場感溢れる戦いと共に楽しめる「キングダム」は2022年の春からアニメのシーズン4が放映予定なので、今後の本誌での展開と共にめちゃくちゃ楽しみですね。
最後までご視聴頂きありがとうございました。
またね。