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【UWC体験記⑨】Conference ―2日間1つのテーマを探索(LGBTQ、フェミニズム、インド亜大陸)

ACの大きな特徴は、年3回、Conferenceと呼ばれる1つのテーマを2日間じっくり体験するイベントがあることです。

金曜日と土曜日の2日間で実施され、学校の公式行事とされるので金曜日は授業が無しになります。企画・運営は全て生徒で行われます。1年目の終わりに運営したいConferenceのテーマとともに出願することができ、選考が行われ、次年度の3つのConferenceおよびその主催者が決定します。

1年目はQueer Conference(LGBTQ)、 Nirvana Conference(インド亜大陸)、 Feminism Conference(フェミニズム)の3つでした。

スタンダードな形式は、1日目にまずオープニングセレモニーから始まり、ワークショップ(誰でも開催可能)に2つ参加、そしてその夜ショーが披露されます。2日目も2つワークショップに参加し、クロージングセレモニーで終わる、といった行程です。

Queer Conferenceのスケジュール

Queer Conference

1年目の12月に開催された私たちの初めてのConference。P6というLBGTQのグループのリーダー3人がメインで運営したConferenceでした。

オープニングセレモニーからLGBTQのシンボルである虹色で飾られた体育館でスピーチやパフォーマンスなど、圧倒されました。(カバー写真)

LGBTQのシンボルのpride flagの装飾

最初のワークショップに参加した後はランチ。デザートが虹色のアイシングが乗ったカップケーキなど、少しアレンジがされていました。

ワークショップの開催

私がやっていたCASの1つが、”Narrative for Social Change”といい、博物館などの手法を通して過去から学ぶことで未来をよくしよう、という取り組みをするものでした。

1年間の最後に集大成として校内にポップアップ博物館を設置したのですが、この時期にお試しのプロジェクトとしてちょうどAC(学校)のLGBTQへの配慮に関する歴史についてドキュメンタリーを作成したところでした。

ワークショップはこのドキュメンタリーを流したあとに内容についてディスカッションし、未来について考える、というものにしました。

ワークショップは同じ時間帯で10個ほど開催されており、参加者は事前にそれぞれの時間帯で行われるワークショップから1つずつサインアップするというもの。それぞれの参加者は2-30人となります。

昼食後メインのファシリテーターとなるもう一人のCASのメンバーと最終準備をし、ワークショップの開始。教室いっぱいとなる30もの人が参加してくれました。

最初にゲームを。設定は自分が30年前のACのLGBTQの生徒。朝起きたところから始め、思いついた人が前の人の分にストーリーにつながるように1文を加えるの続けて、1日を完成させようというもの。

最初は参加者も困惑気味で沈黙が続くこともあったのですが、次第にどんどん盛り上がっていき、「部屋で着替えるけど同性に見られていることに違和感を感じる」や「同性愛に関する悪意あるジョークを聞いた」など30年前の学校について想像を膨らませました。

5分ほど経過し、「では、実際にどうだったのかを見てみましょう」ということでドキュメンタリーを流しました。60年前、50年前、40年前、30年前、20年前、10年前の卒業生と在校生へのインタビューや過去の映像などをまとめたものでした。過去には校長が「LGBTQの人は存在しない」という発言をしたことがあったなど、生徒の力でどれだけ自分の学校が変化を遂げてこられたのか、作成過程でも誇りに思うような内容でした。

そして最後のアクティビティへ。小グループに分かれ、未来の学校、そして世界がどのようになってほしいかの希望や予想をタイムラインに書き記しました。

以上で1時間のワークショップは終了に。多くの参加者から「すごい良かった!」との感想をもらい、一緒にファシリテーターをやった子と「やったね!」と。

のちのち色んなConferenceで数多くのワークショップに参加する中で、あの時のワークショップの盛り上がりや参加者の意欲の高さは稀に見るものだったと気付きました。

参加ワークショップやショーについて

他に参加したワークショップのうち一つは、生徒と先生の2人で実施されたもの。2人のカミングアウト(自分のセクシュアリティを他人に初めて伝えること)についての話を聞きました。

もう一つは、ヴォーグというLGBTQコミュニティ独特のダンス方法を体験するもの。実際に一通りの動きを習った後、1人ずつみんなの前でヴォ―グのフリースタイルのパフォーマンスをやる、というものでした。

そして1日目の夜に実施されたショーは、LGBTQの様々なセクシュアリティをそれぞれ国に例え、主人公が色んな国を旅する、というストーリーでダンスや歌、ダイアログが混ざった劇でした。

全体的にこのQueer Conferenceは私がこのトピックに関してかなり無知だったこともあり、新しいことばかりでとても学ぶことが多かった2日間でした。正直日本の感覚で私はLGBTQの人々への偏見が完全には抜けてなかった部分もあったと思うのですが、この2日間を通してかなりきちんと理解できるところに近づけたと思います。

Feminism Conference (FemiCon)

学校内の生徒グループの1つであるFEMOによって開催されたConference。ワークショップは、アフガニスタンの女子教育、スポーツでのフェミニズムについて、セクシュアリティとフェミニズムの関係など、とても面白いものばかりでした。

スケジュール表
FemiConのTシャツ
事前に公開されたポスターの一つ

ここでは、私が活動していたF21という月経貧困に取り組む団体でのファンドレイジングを実施しました。

1日目には赤いソースを塗ったワッフルを売り、2日目にはVulva(外陰部) Cupcakeの販売をしました。どちらもとても好評で特にVulva Cupcakeはすぐに売り切れました。

Vulva Cupcake

1日目の終わりのショーですが、このConferenceではHere I Amという父権性による体験を生徒が共有するイベントが開かれることに。

このイベントはとても印象深いものなので後の記事で詳しく書くつもりですが、内容が過激すぎるという学校の判断でこの時は一旦中止となりました。

生徒たちからの猛抗議の末、結局その翌週に開催され、これがどれほど大切なイベントであったかについて気付かされることになります。

Nirvana Conference

Subcontiというインド亜大陸ナショナルグループにより開かれたConference。このナショナルグループのリーダー数人がメインの主催者となっていました。

体育館に置かれたバナー
事前に公開されたポスター

ワークショップは、ジュエリーメイキング、サブコンティの人たちが経験する人種差別、植民地支配の影響などについてのものに参加しました。1日目の終わりのショーはNational Eveningとなり、サブコンティの文化を劇、歌、ダンスで表現されたものでした。

National Evening

ランチはインドカレーとサブコンティのテーマに沿ったものに。external speakerとして児童結婚の専門家の講演を聞くこともできました。

1年目の他の2つのConferenceと違い、Cultural Conferenceと呼ばれるナショナルグループ主催のConferenceは非常に1つの地域に本当にそれぞれの生徒が没入できる機会だと感じました。

特設アートギャラリーの一部

この2日間では、周りをどこを見てもヘナをしている人ばっかりだったり、学校内どこでも、深夜の寮の中でも大音量のボリウッド音楽が聞こえてくるような、Subcontiのナショナルグループが学校の中心になっていました。


改善の余地がありすぎる

ACでのイベントに参加するたびに毎回思うことではあったのですが、とても学びの多く今までの人生では経験できなかったことである一方、

もったいない!ちょっとここを努力すれば良くなるのに!

と思うことが多すぎる。そのせいで私の場合は完全に「これは素晴らしい経験だった」では終わらせられず、少し悔しい思いが残ります。

改善点① ワークショップの参加意欲が低い

公式な学校行事でありながら実はそれぞれのConferenceで3~4個参加するワークショップでは出欠は取られず、参加してもしなくても何も変わりません。

高校生ぐらいではマストでないものはさぼる人も多いわけです。最初のConferenceでは一年生は一応みんな参加するのですが、その後はひどい時だとワークショップに参加するべき30人ほどのうち5、6人しか来ていないなど。

そういう時にワークショップが非常によく準備されていたりすると、ワークショップを開催している人に私までが申し訳ない気持ちになる上、さぼっている人に対しても、本当にもったいないなーと思ってしまいます。

改善点② クオリティがまだら

特にワークショップに関してなのですが、完全にワークショップ開催者によってクオリティが左右されてしまいます。私たちがやったQueer Conferenceでのワークショップのようにドキュメンタリー作成を含むと何十時間も準備にかかっているものがある一方で、生徒1人が自分の経験をぶっつけで話すだけ、といったものも。

そして残念ながら全体の割合としては準備時間一時間以下のようなものの方が多く、それに参加した人は当然自分でワークショップをやろうと思ってもそのクオリティが基準になってしまいます。その上、参加する側でも得るものが少ない可能性の方が大きい場合、ワークショップに参加する時間を宿題をやる時間に費やしたいと思うのは割と合理的だとも言えてしまうのです。

改善点③ スケジュールが非効率

どのConferenceもワークショップ間、そしてセレモニーの前など休憩時間のようなものがとても多く、実際に何かに参加している時間は少ないのに朝から午後4時、5時まで拘束され、参加者の時間の無駄がとても多くなっています。

一日のスケジュールが終わっただけでなんとなく長時間続けていたような感覚で疲れてしまい、その日は何も他にできない、というようなことも多い。そして当然、間に休憩が多ければその時間に寮に帰ったっきり戻って来ない人もどんどん出てくるわけです。

改善点④ 表面的な経験にとどまる

特にCultural ConferenceのNirvanaで感じたことですが、ヘナや食べものなどの文化体験はワークショップとしてもやりやすいので多く、その一方でもう一歩深いところへは中々踏み込みません。

実際にサブコンティの生徒たちの生活はどうなのか、どう他の地域と違うのかといったことから、現在の政治的対立、そして「なぜ」この文化や特徴が生まれたのか、といったところまでは届きません。

たった二日間の、しかも自分の文化の良さを伝えたい生徒たちの主催なのでしょうがなくも思えるのですが、もっと出来ると思ってしまうのです。


では私たちがConferenceをやろう!

Nirvana Conference二日目のランチの時。横に座ったのが普段から仲の良い台湾人の同級生2人。そして前には中国人の友達が。

「今回のConferenceどう思う?」という会話が始まると、「勉強にはなるけど…」という前置きを挟んでまさに私が上にあげたような改善点がみんなから出てくる事態に。

そして私が「東アジアでConferenceやったらどうだろう」と言った途端、みなが「自分もそう思ってた!」と。

そしてそれを皮切りにどんどんアイデアが出てきて、大盛り上がりになりました。

「本当に参加者が東アジアにいるように感じられるには」「自主的にでも参加したいと思えるには」を考えていき、最終的に「これはすごいConferenceになる!」とみんなで実感しとても興奮していました。

とは言ってもこの話をしたのは一年目の一月。あくまでもアイデアとしての話でした。

そしてこの年の5月。私たちの二年目のConference3つを決める選考の時期が来て、私たち東アジアナショナルグループが応募。多数の他に応募したナショナルグループの中から選出され、二年目の一月に実際に、まさにあの時に食堂で一緒に座ったメンバーで開催することになります。

想像の何倍も難しい中、一切の妥協を許さず、二年間の中で最も楽しかった経験になりました。


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