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【UWC体験記①】初めにー伝えたい私の2年間

こんにちは。18歳の杉田さらと申します。

私は現在、2年間のボーディングスクール、UWC Atlantic を卒業したところです。

2年間常に走り続け、長期休みもやらなきゃいけないことは山積みできちんと立ち止まり、この経験を消化できていませんでした。

ただ、1つ分かっていることは、この2年間は全く予想できなかったものであり、全く予想していなかったスピード、形で成長した時間だったということ。

UWCとの出会い

私が初めてUWC(United World Colleges)を知ったのは小学校6年生の12月でした。毎年恒例の大繩大会の日の朝、誰よりも早く体育館に行くと担任の体育の先生が。雑談をしていたところ、「この学校知ってる?」と過去に卒業生が行ったUWCのウェブサイトを見せてもらいました。「あなたに向いてるかもよ」と。

いつも国際情勢に興味を持ち、討論形式の授業になると若干冷めたクラスの雰囲気の中でも1人燃えるような私は(他のいろいろな意味でも)少々浮いていたのですが、その先生はいつもそんな私を肯定してくださっていました。

なのでかえって早速そのUWCを調べてみると、見れば見るほど胸の鼓動が止まらなくなりました。100か国以上から集まる生徒たち、ディスカッションベースの授業、世界平和を本気で目指す学校、、これが私が欲しかったものだ!とその数日後には担任の先生に「私あの学校行きたいです」と宣言していました。

その時は受験さえまだ4年後、入学は5年後だったためその先生には「もうちょっとゆっくり考えな」と言われたのですがもちろん気が変わるわけもなくUWC愛はどんどん強くなるばかりでした。

中学では硬式テニス部に入り3年間テニス漬け、高校でもテニス部に入ろうと思いましたが全国常連のテニス部を途中で辞めることで迷惑をかけられないと入部はせず、ずっと興味のあった空手道部に入りました。

そして無事5年越しの夢がかない、2021年の8月にイギリス・ウェールズのUWC Atlanticに渡航したのです。

伝えたい理由

私がなぜここまでUWCでの経験を多くの人に伝えたいのか、少し説明させてください。

美化される記憶

UWCでの在学中常に感じていたのは、もちろんとんでもなく嬉しい、楽しい経験はたくさんあるものの、時間で比べるとしんどい時間の方が圧倒的に多いということ。なので2年間の中での自分の感情を平均するとおそらくだいぶ負の方向に寄ります。

日本の家族や友達からたまに「UWCを一言で表すなら?」と聞かれることがあったのですが、毎回「一言では表せません」と答えていました。「楽しい」というのも「きつい」というのはあまりにも一面しか表現できず、それは失礼になると思ったから。

ただ、在学前・在学中に良く聞いたUWC卒業生のお話の中では、ほとんどポジティブな言葉しか出てこない。特に在学中は卒業生のスピーチやUWCについての文章を目にするたび、かなりうわべっつらな、猫をかぶったような違和感を感じました。

先日の卒業式、卒業生代表のスピーチにて。始まって5秒、「まただ…」と感じました。いつもの輝かしい思い出を並べ、多文化理解の美しさばかりを並べる文章。ただ、自分で驚くことに、なぜかその文章が少しだけ、共感できるものになっている。

正直、怖くなりました。

なるほど、こういうことか。通常の学校生活が終わり3週間の試験期間をはさんだだけでUWCの実体験から少し離れた、良い部分だけを取り出して讃えようとする心理が私にも働き始めている。そりゃ卒業後5年、10年、30年経って振り返ればなおさらでしょう。

幸いなことに、私は今でもまだ2年間の感情、感覚がはっきりと残っています。そして2年間毎日欠かさずつけた日記もあります。今これを残さなければ、と自分を急かすような気持ちになりました。

ロイヤルスクール?

私のUWCへの渡航が決まってからしばらくした時、とある記事が友人から送られてきました。

「スペイン王女、ウェールズのボーディングスクール進学へ」

スペインの次の女王、レオノール王女が私と同じタイミングでUWC Atlanticに進学するそう。皇族がいることはあるよーと事前に聞いてはいたのであまり驚きはしなかったのですが、記事を読み進めるうち、正直、強烈な違和感を感じました。

これから私が行こうとする学校が、あたかも貴族がこぞって子供を送るロイヤルファミリー養成学校のように書かれている…!

正直数日間かなり落ち込み、自分の選択肢を何回も疑問に思いました。もちろん渡航までにきちんと切り替え、そのような外部の情報は信頼してはいけないと思い直したのですが、もしこのような記事を受験直前に見ていたらと思うと少し怖くなります。

渡航後も「世界のロイヤルスクール」といった記事に乗馬や上流階級の作法を学ぶ学校と並べて私の学校が書いてあるのを目にし、気にはしないものの私の友達にはなるべく読まないでほしい、と思ってしまいました。

確かに私が行ったUWC Atlanticは校舎がお城であり、過去にも皇族が通うことは多いのですが、ロイヤルスクールとは全くかけ離れたものです。このような誤解を少しでも解きたい、と思ったのも実態を詳しく書こうと思った一つの理由です。

少人数のみの経験

UWCは日本のISAK含め世界に17校あるのですが、ほとんどの学校が1学年100人程度で全校でも2学年200人のかなり小さな学校です。私のUWC Atlanticは1学年175人で全校350人とこれでも規模は大きい方でした。

日本協会から派遣されるのは毎年合計15人ほど。日本にいる高校2年生は約100万人だとしてこの経験ができるのはほんとうにわずか。そして近年は日本協会や学校側から提供される奨学金額も減ってきておりで出願時点でもハードルはかなり上がっているのが事実です(収入制限のある全額奨学金枠もあります)。

出願できたこと、合格できたこと、渡航できたこと、最高の経験を得られたこと、全てにおいて自分がどれだけ幸運でprivilegedだったかをひしひしと感じ、これを私だけのものにするにはあまりにも自己中だと感じています。

なのでこれから私が記していく2年間の経験はぜひ、UWCに行きたかったけど行けなかった方UWCというものを大人になってから知った方に読んでいただきたいです。

もちろんこれから行く方、受験生の方も大歓迎ですが、特に私が行ったUWC Atlanticについてはかなりネタバレを含むと思います(笑)。私は渡航前は実際に学校で起こっていることについては何も情報がなかったのですが、あった方がより計画性を持って有意義に過ごすことが出来るというのでしたらぜひ使ってください。出願するかどうかを迷っている方にはぴったりだとおもいます。


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