【UWC体験記⑥】生徒運営のCouncil(委員会)についてー生徒会寮代表に!
ACには生徒によって運営されているcouncil、日本でいう委員会のようなものがいくつかあります。
それぞれの委員会に対して7つある寮ごとに選挙を行い1人か2人のrep(代表者)が選ばれ、その合計7名/14名で主な運営を行うことになります。そして1年目の後期にそのrepの中から(他の人も立候補は可能)委員会のchair(会長)が2人選ばれることになります。
日本にある委員会との大きな違いは2点。1点目は、日本の学校のような「生徒会」という傘の下に専門委員会がある構造ではなく、生徒会はあくまでの委員会の1つとして、その他の委員会もそれぞれ独立しているという点です。
2点目は委員会のメンバーだけでの仕事だけでなく、全校生徒向けのセッションが毎週それぞれのcouncilで開かれるということ。ここでいうセッションというのは、それぞれの委員会に関連するトピックについて生徒の誰かがプレゼンテーション、及びディスカッションを行うものです。これは週のどこかの曜日の夜にGreat Hallという場所で実施され、生徒の中で行きたい人が自由に参加できます。
Student Council (StuCo) ー生徒会
StuCoでは唯一上記のようなセッションの形式ではなく、毎週学校が抱えている課題についてディスカッションを行います。
StuCo repの他のcouncilと異なっている点は、StuCoの寮代表になるだけでなく、House repという一般的な寮の代表も兼任する点です。私はStuCo自体にはそこまで興味はなかったのですが、寮の雰囲気を良くしたい!という思いが強く立候補することにしました。
寮代表選挙
この選挙はなんと10月末というかなり1年目の早い時期なのでまだまだ英語のスピーチもなれていなく、とても静かな子という印象だったの思うので、立候補した際には寮のメンバーはみんなびっくり。
Repは最終的には2人選ばれるのですが、2週のhouse meetingに分けて行われ、1回目で落選の人も2回目で再立候補が可能、という仕組みです。1回目の立候補者は私含めて5人。
2年生ともすでに仲の良く学校で力を持っているような人も立候補しており、友達からは「今回は可能性低いから手の内明かさないで来週にしたら?」との助言を受けていました。
ですが、立候補する勇気を持てたんだからここで弱気になってはいけない!となんとかスピーチをやりきり、まさかのこの選挙で当選することができました。
あとから友達に聞くと、「あなたのスピーチが一番一生懸命さと人柄の良さが伝わったよ」と。他の立候補者はみな自信満々ゆえ熱意があまり感じられなかったそう。
そして2人目のrepが選ばれる前からそれまでごちゃごちゃだったキッチンや掃除当番の整理、カレンダーの設置、共有スペースの棚のラベル付けなどのまずはシステム作りから。
そして有志を集めどうやってもっと温かい寮にできるかのディスカッションを実施し全員の誕生日を記載したバナーの掲示を行いました。
生徒会のセッションでも誰も他に手を挙げなかったので書記となり、毎週のセッションでの全ての発言を記録し続けました。
その後、生徒会長選挙の時期になり、周りに立候補を勧められてはいたのですが他の役割がいくつかあったので断り、2年目の10月に無事に1年生に役割を引き渡しました。
1年目のこの選挙で自分のスピーチで当選したことは、当時何もチャレンジできていないと焦っていた私にとっては非常に大きな自信になりました。ここをターニングポイントとして、恐れずに発言できるようになったり、英語のスピーチやプレゼンへの苦手意識を克服していったので、この時の自分の勇気には本当に感謝しています。
Sustainability Council (SusCo)ー環境委員会
その名の通り、環境問題に対してアクションを起こす委員会で、おそらく全ての委員会の中で最も熱意の強い、行動力の高い生徒が集まる委員会です。毎週のセッションの他にも様々な取り組みをしているSusCoで、私は中心となっている子たちのあまりにも強い熱意に圧倒されて、セッションにはなるべく参加するもあまり手伝うことはできませんでした。
Amazon ボイコット
到着したわずか数日後、SusCoから、「Amazonからのオーダーを控えるように」との全校メールが。どうやらAmazonでオーダーするとカーボンフットプリント(過程での温室効果ガス排出量)が実は非常に高いとのこと。
これは全くの初耳で、Amazonと環境問題なんて関連して考えたことはありませんでしたが、以降かなり気を付けるようになりました。
また、似た理由でなるべくオンラインショッピングの頻度を減らすように、とも呼びかけられており、学校として多くのオンラインオーダーをしている人は少し白い目で見られる傾向があります。
環境プロテスト
定期的にSusCoが主催して有志が参加する環境プロテストに私も1年目に参加しました。コロナ禍だったこともあり学校から遠出はできなかったので一番近くの町(とはいっても徒歩40分)まで歩き、そこで事前に作ったプラカードを掲げて抗議をしながら歩きました。
正直、その町は大半の人口がお年寄りな田舎町なのでプロテストの効果はほとんどなかったとは思います。ですが、当時は直近に控えていたcop 26についてのプロテストだったので、私もそのあとはcop 26について進捗をチェックし続けるきっかけになりました。
学校から2名実際にcop 26にいった人もおり、帰ってきてから全校集会で見てきたもの、会議が成し遂げたものなどを発表してくれました。
食堂をベジタリアンに
これも私はACに行くまで知らなかったのですが、実は肉を食べることはベジタリアンに比べてはるかに環境に悪影響をもたらします。
ということでSusCoの中心メンバーはほぼ全員ベジタリアンもしくはビーガン、そしてもちろん、より環境に優しい学校にしようと食堂のメニューを変えようと活動します。
ですが当然生徒のほとんどはベジタリアンではなく、この学校に来る前は毎日のように肉を食べていた人ばかりなので、かなりの反発があります。一時期はほとんど完全ベジタリアン、一時期は毎食肉食、といろいろな調整を重ねた結果、私の2年目には「1日1食に肉が出る」という方針で落ちつき、一番全校生徒の中で上手くいっていました。
Peace Council (PeaCo)ー平和委員会
PeaCoは毎週のセッションが主な活動内容で、毎週誰かが自分の出身国が関連している国際問題についてプレゼンをしてくれます。アフガニスタンの戦争、パレスチナ難民、ホロコースト等、自分の経験及び親族から聞いた経験を含めて詳しく説明してくれ、最後にディスカッションを行います。
FIFAワールドカップの擁護?
印象に残っているのは、FIFAワールドカップ直前のセッションのこと。スタジアム建設の劣悪労働環境下で死者が出たことに関してでした。当然ながら多くの人が批判的な意見を述べ、興味のある先生も参加して「全ての試合の視聴をボイコットするべきだ」と発言します。
ただ一方で、今回ワールドカップ初出場のウェールズ出身の生徒が「母国が初めて出場できた舞台で勝って国家を歌う時に目撃しないことは罪悪感を感じる」と。誰もがスポーツの力、自国の応援をする時に感じる一体感の喜びは知っています。反論の声は出ませんでした。
実際に私は学校中が日本チームの大活躍で盛り上がっている中試合を1つも見ないことに決めていました。ただやはり、日本の歴史的快挙のニュースをあとから友達から聞いたり、ニュースで見たりするとその感覚を味わえなかったことに少しがっかりしたのは確かです。
国際問題に対して批判をし、一番ポピュラーな立場の意見を述べることは簡単ですが、その中でも他の視点を探し、それもきちんと表に出すこと。それが安心してできる環境にいれたのは大きな学びになりました。
他にもPeaCoが行う大きなイベント、PeaCo Monologuesについては以下を↓
Wellbeing Council (WellCo)ー健康委員会
こちらはwellbeing、つまり精神と体の健康面に取り組む委員会です。この委員会は睡眠に関する情報セッション、マインドフルネス、ストレスを岩につぶやいて水に投げ入れて別れを告げるセッション、など様々な取り組みをしています。
この委員会が数年前に設立された理由としては、ACでは生徒のmental healthがよく課題としてあげられていることです。
IBだけでなく他の様々なアクティビティに生徒が参加する中でストレスがたまり休学をせざるを得ない生徒や、2年間を終えずに退学する生徒も毎年数名います。毎日の授業でもメンタルの理由で複数の生徒が欠席し、普通のこととされています。
日本の学校、そして体育会系の部活でひたすら根性と忍耐を叩きこまれた経験のある私からするとメンタルヘルスなんてものが存在するんだ、と驚きで正直最初はかなり見下していました。
ですが日本の何倍も責任が大きく、複雑な状況に立ち向かわないといけない経験を何度もし、心と体の健康の大切さをやっと実感することができるようになりました。
Student Life at Atlantic College (SLAAC)ーイベント委員会
具体的にSLACCが開催するイベントは毎週末のディスコ、寮対抗運動会、お化け屋敷など本当に息抜きのためのイベントになります。
中心メンバーもヨーロッパ系の同じ友達グループの人ばかりで、私のような人には正直少し近寄りがたい、いわゆるスクールカースト上位の人たちのグループの印象があります。
Platform 6(P6)ーLGBTQグループ
ACは特にLGBTQの生徒への理解が強く、非常にオープンな雰囲気で多くの生徒が自分の性について公に話せる文化があります。そのグループがP6となり、こちらも委員会では無いのですが3人のリーダーを中心に活動しています。
Percentage Ball
ここでのpercentageとは、生徒の中でのLGBTQの割合を指します。年度初めにpercentage countと言って匿名のセクシュアリティアンケートがあり、そのアンケートのをもとにしたpercentageが発表されます。
2年間で合計3回発表されたのですが、毎回30%台。約3人に1人というのは私はかなり驚きだったのですが多くの人がバイセクシャル(異性も同性も恋愛対象)。異性と付き合っていてヘテロセクシャル(異性愛者)だと思っていた人もバイセクシャルだった、ということがかなり頻繁にあり、見えるものだけで偏見を持たないことの大切さを感じました。
そしてpercentage ballは、そのpercentageを祝うパーティになります。パーティと言っても、暗い会場でディスコボールが周り、爆音の音楽が流れ皆がひたすらジャンプする、という毎週のディスコとあまり変わらず、少し装飾がきらびやかになったぐらいです。
ただ少しいつもより特別なディスコということで、1年目はみなはめを外しまくり。通常よりも大量のお酒を多くの人が飲み、一部の人は会場の外で失神するなど、救急車が発動する自体になりました。この結果を受け、2年目のpercentageは先生方がそこら中に配置され、非常に厳しくなり、私はとても安全になったと感じました。
Queer Fashion Show
こちらも毎年の恒例行事としてpercentage ballと同じ週に行われる、主にLGBTQの生徒の自由な自己表現をしたfashion showとして行われます。QueerとはLGBTQとようするに同じ意味で、より包括的な単語と捉えられています。
Fashion showは様々なテーマで年中何回も行われるのですが、食堂の真ん中の通る、なんとも見た目は豪華な感じになります。
ただこのQueer Fashion Show、1年目に見たときにはあっけに取られて頭の整理がつきませんでした。要するに、多くの人がほとんど服を着ていない状況。これは見ていいものなのかよく分からず、ただ熱狂的な声援が観客からあがるので、「ACではこれが普通なの?」と戸惑うばかりでした。
ですが、数日後に緊急の全校集会が。どうやらFashion showでの動画をtik tokに上げた生徒がいたらしく、その動画が王女が通っているスペインで拡散され、次期女王はどんな学校に行っているんだと大炎上したそう。おそらくジャーナリストや一般の人から私たちにSNSで質問を聞かれたりするだろうが、答えないようにとのことでした。
あー私の感覚はあながち変ではなかったんだと安心すると同時に、まさか自分の学校がそんな他国での炎上のトピックになるとは衝撃でした。
そしてもちろん、この教訓を受けて2年目のQueer Fashion Showは事前に学校から厳しく服装規定が通知され、当日も何人もの先生が見守っているという状況のもと、とても常識の範囲内の色んなクレイジーな表現を楽しむことができました。
Feminist Movement(FEMO) ーフェミニズム運動
FEMOは公式には委員会ではないのですが、最近発足した生徒グループになります。他の委員会と同じく毎週のセッションを開催するほか、国際女性デーなどにイベントを開催するなど学校内でのフェミニズムへの意識向上を目指しています。