(2021)『イリュミナシオン』創刊号につきまして
編集、翻訳で関わった冊子『イリュミナシオン』が無事(?)刊行されました。冊子の主旨に反し「死」を理解できない自分に可能な関わり方を模索した一年間でした。
お手にとっていただけたら幸いです。
所収のトリスタン・ツァラ後期詩劇「逃走」部分訳で、メーストル研究/『表現者 クライテリオン』執筆陣の平坂純一氏に監修・共訳いただきました。地上ならざるものの存在を十二分に知りつつ地を凝視する保守論客の密かな激烈さをおいて自分は「死者」にアクセスできないと思ったのと、自分の語学力がポンコツだからです。「どうしてこうなった」と言いつつ協力してくださった氏に感謝します。
かつてジャック・ヴァシェの訳を上梓された原智広氏にお声がけいただいて参加したわけですが、百年前、ヴァシェとツァラはニアミスにより協働したことがありません。百年前ツァラができなかったことをやろうと思い、ツァラならどうしたろうと考えながらやりました(問題は、自分にはツァラの声が聞こえないということです)。
おそらく原氏は、山本の他の活動を(おそらくうっすら)知りつつ参加させたことで、不利益を被ったこともあるのではないかと思います。〇〇イストを名乗る人間はそれを名乗らない人間に蹴っ飛ばされて原理的にそこそこ当然な中、考え方は反せど、協働の一点を探ってくださった氏に感謝しています。
編集部の、理にかなった美しい動き方をされる矢田真麻氏、在るかもしれないのに見えないものを人に見える形に受肉させてくださる栗原雪彦氏には、尊敬以外ありません。頭の下がる思いです。
執筆陣の、すでに著名なかたはもちろん、若手のかたの作品の中に、これを知れてよかった、これから先も折に触れ思い出すだろう、もっと知りたい、と思わせられるものがどのかたにもありました。見せてくださりありがたかったです。
本を手にとられるかたが、それぞれにそれぞれの忘れがたい何かに出会うことと信じております。
山本 桜子
※ 『イリュミナシオン』創刊号 は各地の書店で販売しています。品切れの書店には随時入荷される予定です。