見出し画像

いつもと逆のことをしたなら、それはもう既に旅だ。

突然ですが、みなさんは赤瀬川源平改め尾辻克彦氏の「父が消えた」という作品をご存知だろうか。

「いや、旅行というのはただ動けばいいんだなと思って」
「動く」
「動くといってもね、いつもと反対に動く。いつもと反対に動けば旅行ができる」
「うわ、それ、教訓みたいですね」
「うーん教訓というか、でもこれ、やっぱり意外と教訓だよ」
—『父が消えた (文春文庫)』尾辻 克彦著

https://a.co/dZGfoVk

旅が好きではない人は少数派ではないだろうか。
では旅とは何かと考えたとき、私はこの言葉を幾度となく思い出す。このような思考を採用すると日常が旅たり得るからだ。

”いつもとは逆”という意味で、先日の石垣島の旅はかなり旅だった。今回はその話をさせていただきたい。

旅の経緯

ことの始まりは1ヶ月ほど有給休暇をいただいていた最中、共通の友人を訪ねて何人かで福岡に1泊する企画を立てたところから。現地集合・現地解散の大変自由な会合だったため、帰りは陸路でふらっと行ったみたかった土地に行こうかなぁなどと考えていた私にある提案が降ってきた。同じくそのまま福岡を起点に旅行を計画中だったふみさん(@fumi_fe)からの女子旅のお誘い。しかもなんと現地でバースデーを迎えようとしているらしい…
これは断るわけにはいかない!と秒で判断して話に乗った。以下やりとり↓

普段は1人がスタンダード。そして海や南国より山や北国を好み、夜はだいたい飲み歩くのでホテルは最小限のドミトリーを選択するといったところ。
今回ははじめから石垣島が目的地なのは決まっていて、さらにご褒美ということでいつもよりは値段のはるホテルに泊まり、1人ではない。まさに真逆だ。

旅というのは計画している時から既に始まっている。調べ物をしながらどこに行くかあれこれ検討している時間も旅の一部ではないだろうか。そんなこんなで私の旅が始まったのは出発の3日前だった。用意周到に準備をするこの度の相棒が既に計画中の旅とあったら、もはやついていく以外に選択肢はない。2択くらいまで絞ってもらって最後なんとなく口を出すという塩梅が丁度良いのではないかという勝手な決めつけにより、いつも通りふみさんにお任せの旅となった。彼女的には行き当たりばったりが多い旅だったとのことだが、行きたい飲食店の情報はかなりピンしていただいていたようだしホテルも最高だった。

いつもの一人旅ならば、飲食店の事前リサーチはほとんどしない。宿泊を食事付きにするか否か判断するために飲食店が周辺に存在するかはさすがに確認する。コロナ禍において外食の機会は激減しかなり勘は鈍っているが、気になる店は現地で嗅ぎつける能力がある程度備わっており、たまたま入った店を後で調べたら有名店だったということはままある。美味しくなくても面白い人と出会えたりと行き当たりばったりはトータルで満足度が高いことが多いため、この方式を採用している。

脳内覗いた1日目。

1日目。
まず福岡でサンダルを探すところからはじまったのだが、1日通して時間がとにかく濃厚に感じた。
誰かと行動を共にするとその人の思考を垣間見ることができる。彼女の思考回路がどうなっているのかというのも実は今回の旅の興味の対象ではあった。
一緒に過ごしてみて感じたのは、1日の長さというか思考の量が私とは桁違いなのである。「こうして、こうしよう!」という提案のたどった思考の経路を紐解いていくととにかく情報量と配慮の量が多い。彼女は仕事ができて気遣いもできるオタクのスーパーウーマンであることはなんとなく把握していたのだが、私の日常と全く違うテンポでものを考えて生きている!!すげー!!

ちなみに、とにかく財布を出すのがはやいのでその横でその半額をPayPay送金しまくるという謎のやりとりが行わていた。のちに確認したら履歴が大変なことになっていた。
加えて彼女は写真も撮れる人でもあるが、被写体の人間ががほぼ私しかいないのでいい感じの写真をいっぱい撮っていただいた。あまり写真を撮られるのは得意ではないのだけど(瞬き率が異常に高いためカメラマン泣かせな被写体らしい…)あんな風にとってもらえるなら悪くないなと思えた。
同じ土地で同じものを見ているはずなのに写真の構図、加工の仕方が違い過ぎて別の場所に見える。
さらっとクリエイティブをやってのける現場も目の当たりにした。

飲みのノリもカラオケのノリも良い感じのふみさん。そのまま誕生日を迎えられました。

ショートする瞬間を目の当たりにした2日目。

2日目。
王道いいホテルから、私たち世代にちょうどいいおしゃホテル(って言葉はないとはおもいますが 笑)へ移動。
オンラインの用事があるとのことでもくもくタイムもありつつ、私はその時間に必死にバースデーガールのための寄せ書きを整えていた。ワーケーションにもぴったりな空間でコンセプトが一貫しているホテルでとても好感が持てる。


午後になってようやく地元住民とお話しする機会を得た。お相手はレンタサイクルのおじさん。竹富島の買い物事情や医療事情など様々なお話がきけて(ここでは割愛する)これこそ旅の醍醐味だよなぁなんて感じながら。

夕飯の時間には2人ともやや疲れ果てていたが、「本日これが1杯目なんて優秀じゃない?」なんて笑い合っていた午後7時。
ところが、突然「(首にかけていた)カメラがない!」と言い出す彼女。これまでの行動パターンから、しっかりしている印象しか受けてこなかったのだが、流石に遊び呆けたりこれからの重大な決断をした後とあってお疲れだったようだ。そんな一面を垣間見られるのも長時間行動を共にしてこそだな、と密かに感じていた。カメラの方は夕飯前に宿に立ち寄った際自室に置いてきていたようでことなきを得た。

とりあえず飲みたい思考なところや、共通の話題にもことかかないのでなんだかお喋りしている間にあっという間に時が過ぎた旅だった。

むすびに

ある種空気のような存在でもあり、被写体でもありほとんど自発的に調べ物をしようとしないが、やたら酒を飲みたがる突然の同行者を彼女がどう思っていたかは恐ろしくてしばらくは知りたくなかったけれど、その心配は杞憂だったようだ。
いや、杞憂だったことにしてください 笑

↑↑↑
旅の詳細や、ふみさんサイドの旅の様子がご覧いただけます。こちらはしっかり具体的な旅のレポートとなっている。

そもそも私が一人旅を好むのは、自分の底が知れるのが恐ろしいという思考が根底に僅かに存在する。
これは人と深く関わるのが恐ろしいということでもある。つまんないヤツだとバレたらどうしよう、仕事の場面では使えないヤツだとバレたらどうしよう…一緒にいる時間が長くなるほど底が知れるリスクは上がる。

しかし今回の旅で、最近気がつき始めていた考えが確信というか実感に変わった。それは、誰かと関わり行動と共にすることで、ひとりでいるだけでは選択しえなかった体験をすることができるということである。改めて文字にすると当たり前すぎて笑ってしまうけれど。

人はそもそもそこにいるというだけでなにもしなくても誰かに少なからず影響を与えている。良い影響にしろ悪い影響にせよ。そして1人増えるごとに選択肢が何倍にも膨れ上がり、より予測不能な展開が訪れる。それってもはやいつもと違うのだから旅である。

最近キャリアについて小さな決断をした。個人プレイよりチームプレイに身を置いてみることにしたのだ。こちらも同じように、今までにない発見があるのではないかという期待が混じっている。
以前より少しおとなになった私はこうして2人旅も楽しめるし、これからも旅を続けるつもりだ。


いいなと思ったら応援しよう!