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最高のしおむすび

サキコが高校生の頃、親戚のおじちゃんがやっていたちょっと高級な和食屋さんがあった。人手が足らなくてちょっと手伝ってと言われてバイトをした時のこと。

その日はお盆で予約がいっぱいだった。団体での集まりが多くお店も座敷も満席だった。

慣れないサキコは裏でお手伝い。

お客様が帰った後の片付けと洗い場で洗い場の人と一緒に山のような食器をせっせと洗う。

本当に山のよう…

サキコはあまりバイトをしたことがなかったのでちょっとびっくりしていた。当たり前なのだが出したものは全て下がってくる。和食なので小鉢やらおちょこやらとやたらとこまごました食器が多い。

形もまるやしかくだけでは済まない。ひょうたんの形や葉っぱの形、花の形に大皿まで様々である。

それを丁寧に割らないように洗っていく。ちょっと高級なだけあって器もそこそこ高そうだ。ひたすら洗っていると厨房を切り盛りする少しご年配の方がせっせとおむすびを握っている。お客さんのかぁ…美味しそう。サキコはお腹がすいたなぁと思いながら目の前にどんどん下がってくるお皿たちを《綺麗になぁれ》と洗っていく。

時計を見ると夜8時を回っていた。体力はある方だがさすがにサキコも疲れていた。まぁやっていればいつか終わりは来るのだがとにかくお腹がすいていた!

すると親戚のおばちゃんが『おむすびができてるからみんな適当に食べてね!』とみんなに聞こえるように言った。

早く食べたい‼︎

大皿を洗い終えて手早く手を拭きおむすびに手を伸ばす。

『いただきますッ‼︎』

ひとくち頬張る…

《美味しい‼︎めちゃくちゃ美味しい‼︎》

どうして美味しいのか?

お腹が空いている
おむすびだから
塩の加減
おむすびの形
握った人が誰だかわかっている
食べるまでのプロセス
食べている時の状況
色。
大きさ…

サキコが今まで食べて来たおむすびの中でいちばん美味しいおむすびだった♪

サキコはこのおむすびがダントツで1番だという事を握ってくれた人にそのまま伝えた。塩加減が絶妙だったのだ。どうしたらこんな味になるのか不思議だった。塩だけじゃなくこの人の手には旨味成分があるのだろうか⁉︎とさえ思える(笑

『おむすびめちゃくちゃ美味しかったです!私が今まで食べたおむすびの中でいちばん美味しかった♪』

するとその人は

『本当♪うわぁ嬉しい。そんなこと言ってもらえるなんて』とニコニコしながらサキコに言う。

おむすびを食べたほんのわずかな時間は至福のひと時でまた洗浄の戦場へ戻る。

洗い終えたものが溜まったので食洗機にかける。

ここでサキコの本領発揮である。

食器を入れず空っぽの食洗機で食洗機を回す(笑!

美味しすぎて洗浄の現場に気持ちが戻って来ていなかったのか⁉︎(笑

あともう少し!

エネルギーチャージしたのでこの後もノンストップで行ける!

そう思いながらサキコはサキコに『手伝って』と言ってくれたおじちゃんに感謝した。

だってあんなに美味しい最高のしおむすびが食べられたんだもん♪

ここによんでくれてくれてありがとう。






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