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10%の人ではなく、90%の人の話~アライ企業への一歩

11月11日開催の#SAPPORODIVERSITYFORUM「LGBTフレンドリーな企業を目指して」の講師、屋成和昭さんからのメッセージをご紹介します。

アウトジャパンの活動

私たちは主に「LGBTQに関して取り組みを始めたい」という企業のサポートをさせていただいています。
大きく分けて3つの分野があり、1つはLGBTQに関する研修の実施です。こちらは最近では自治体を通した企業向け講演のお手伝いもしています。2つめはコンサルティングです。例えばパートナーシップ制度を企業の中で始める場合に、結婚届をそもそも出せないので何を根拠としていくのか考える必要があります。そうした細かい制度や運用についての情報提供とサポートを行っています。
そして最後に相談窓口ですね。当事者の方に対する相談窓口が必要ですが、自社で対応するのが難しい場合に、社外相談窓口として受け付けています。

ミッションにも掲げていますが、日本全体がアライになっていくために、まずアライ企業を増やしていくというのが大きな目的としてあります。

※アライ:性的マイノリティの人達を理解し支援する人達のこと、またはその考え方。当事者以外の支援者を指すことが多い。

アライの必要性と活動のきっかけ

今LGBTQの当事者はだいたい10%前後(2019年、LGBT総研が実施した「LGBT意識行動調査2019」より。その他の調査では、3.3%といったデータなどもあります。)と言われています。多くの人が、その10%の人をどうしようかという発想になっているのではないかと思います。僕も最初はそう思っていました。僕自身は当事者ではありませんし、もともと詳しいわけでも、興味があったわけでもなく、2016年に当時いた会社がLGBTに特化した人材ビジネス事業を始め、その担当になったのがきっかけです。

当時はよくわからないし、どうすればいいかわからない、そんな人会ったこともないので、まずは知らなくてはいけないという感覚でドキドキしながらスタートしていきました。
そうすると、トランスジェンダーの方から、面接の時にトイレに行きたくないから暑い日にはアイスコーヒーを飲まない、前日から水分は控えていたという話を聞いたり、現役の学生から「同性愛者なので就職も結婚も日本では無理だと思うから海外に行きます」と言われたり、驚きの連続でした。

そうして話を聞けば聞くほど、「これって、彼らの問題なのか?」と思いました。トイレを使えなくさせている、また、海外移住を決心させているのは当事者ではないんですね。それは当事者ががんばることではない。だから10%の人の話ではなく、そうさせている90%の人の問題なんだと思います。

アライ企業が増えていくことのメリット、ゴール

LGBTQについて、圧倒的に知らない人が多いです。だから色々な問題が起こってしまう。特に企業で当事者の方が働きづらいという現状があります。それを生んでいるのは企業側の知識が不足していることだと思います。だから、すでに日本では働けないと思っている人がいるのに、気づいていない。知らないから失っている人材がいます。それは企業がアライとなる必要性の一番大きな理由だと思います。

当事者がいる前提じゃなかったり、「優秀だったら採用する」という姿勢でいるのは、そうした人に「来なくていい」といっているのと同義だと思います。そうした企業は多分LGBTQだけではなく、色々なマイノリティの方から「この会社は感度の薄い会社なんだな」と思われて、気づかないうちに機会や人材を失っていくと思います。

企業としての取組み

私たちにお問い合わせのくる企業には大きく2通りのパターンがあり、1つは従業員の方、あるいは採用予定の方からカミングアウトがあり、どうしようとなっているパターンです。今回はもう1つのパターンの企業が多いと思いますが、そろそろ始めなければいけないけど、何をしたらいいんだろうというパターンです。

前者の方は切実で具体的なので早く進んでいきますが、一方で「今いる当事者の要望を聞く=LGBTQの対応策の正解」となってしまいがちです。あくまで一当事者の意見に過ぎないのに、LGBTQ全体の意見とする傾向があります。もちろん全体的にはLGBTQ当事者のためではありますが、1人の人のためではなく、社会全体、LGBTQ全体を把握した上で会社としてどうあるか、というスタンスが大切です。

アライ企業の必須条件というのはありませんし、逆にこれをやればOKというものもありません。できることをしっかりやりながら、足りていないことは何かを時代とともにアップデートしながら知り続けることが必要です。会社としてどこまでやっていくのか、現状何がたりていないのか、何をできないのかを考えつつ一個ずつ取り組んでいくことが大切だと思います。


屋成 和昭さん (株式会社アウトジャパン 代表取締役)
1974年京都府生まれ。関西大学卒業。
約20年にわたり、新卒採用コンサルティングを行うベンチャー企業にて数多くの企業の採用活動に携わる。2016年にLGBT採用支援を行う。
新会社の立ち上げに関わることで、企業にとってLGBTに配慮しないことがいかに損失を生んでいるかを実感。
「より多くの企業様にLGBTダイバーシティを広めたい」と、株式会社アウト・ジャパンへ2017年入社。現在は大手企業から中小・ベンチャー企業まで幅広くLGBTダイバーシティのコンサルティングに携わる。

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