肥大化している弁護士会
東京弁護士会が授賞を決めた人権賞について、ネット上で批判が上がっています。
この問題は、「人権賞 草津町」などと検索してもらえばどういう件なのか分かるかと思います。
弁護士会が「人権賞」なる賞を授与する理屈は私にはさっぱり分かりません。副賞が合計100万円というのも理解できかねます。
東京弁護士会ホームページでの今年度の会長あいさつを見ると、委員会等は70を超えると自慢げに書かれています。東京弁護士会は、全国に52個ある弁護士会の中で今のところ最大の会員数の会ですから、委員会の数も多数でしょうし、活動も多いのでしょう。弁護士会は、基本的に会員(弁護士)の会費で成り立ってますから、予算の金額も全国の弁護士会の中で1番大きいのかもしれません。
毎月数万円を徴収されている(「毎年」ではなく「毎月」です。)中から、人権賞などというものに予算が使われていることは、他人事とはいえ、東京弁護士会の会員が気の毒です。
私は、司法修習生を終えて最初に所属した弁護士会は東京弁護士会でした。平成28年からは札幌弁護士会に所属しています。
札幌弁護士会は、ホームページの委員会一覧のページで数えると、53の委員会等があるようです。
私は、弁護士会は、活動を増やして委員会を増やす・委員会を増やして活動を増やすといった感じで肥大化しており、無駄に高額な会費を不当に徴収していると考えています。
これは日本弁護士連合会(日弁連)も同様です。
弁護士会は、弁護士法31条1項で、「弁護士会は、弁護士及び弁護士法人の使命及び職務にかんがみ、その品位を保持し、弁護士及び弁護士法人の事務の改善進歩を図るため、弁護士及び弁護士法人の指導、連絡及び監督に関する事務を行うことを目的とする。」とされています。弁護士会は、指導・連絡・監督に関する事務をするのが目的の団体です。
弁護士会がすべき活動は、この目的の範囲内であるべきですし、少なくともこの目的に関連するといえるものに限られるべきものだと考えます。
現在の弁護士会や日弁連は、弁護士法1条という理念規定を基に活動を肥大化させてきたと思います。
弁護士法で明示されている委員会等の機関は、会長・副会長、総会、資格審査会、懲戒委員会、綱紀委員会です。
このうち委員会にあたるのは、資格審査会、懲戒委員会、綱紀委員会です。
この他、会則で定めなければならない事項(弁護士法33条2項)からすれば、会長・副会長の選任(同項2号)を担当する選挙管理委員会は必要でしょう。弁護士道徳等(同項7号)の担当をする倫理委員会もあった方が良さそうです。法律扶助(同項9号)については、日本司法支援センター(自称:法テラス)に投げているので、現在の必要性は疑わしいですけど、法律扶助に関する委員会は設置しておかないといけないかもしれません。官公署等への弁護士の推薦(同項10号)を担当する推薦委員会は会長・副会長に推薦事務をさせないのであれば必要でしょう。司法修習生(同項11号)についての修習委員会は必要になると考えます。紛議の調停(同項12号)について紛議調停委員会は法が要求しているものと考えます。会計等(同項16号)について、弁護士会の規模がそれなりのものであれば、財務についての委員会が必要になりそうです。
この他、弁護士会照会(弁護士法23条の2)に対応する部署(委員会)は必要になるでしょう。
会則では建議・答申の規定(弁護士法33条2項13号)を置くとされ、弁護士会は弁護士等の事務やその他の司法事務について建議・答申することができるとなっています(弁護士法42条2項)から、建議・答申を担当する委員会が無いと不便かもしれません。
弁護士でないのに訴訟事件等の法律事務を報酬目的で取り扱うこと(非弁行為)は、罰則付きで禁止されていること(弁護士法72条、77条)からすると、非弁行為について扱う委員会は弁護士法の趣旨にかなうものと考えます。
弁護士会の目的は、弁護士等の事務の改善進捗を図るためですから(弁護士法31条1項)、弁護士に対する業務妨害を扱う委員会は弁護士会の目的にかなうものと考えられます。
上記のとおり、弁護士法の観点から弁護士会にあるべき委員会は、建議・答申について以外は、次のものと考えられます。
①資格審査会
②懲戒委員会
③綱紀委員会
④選挙管理委員会
⑤倫理委員会
⑥法律扶助委員会
⑦推薦委員会
⑧司法修習委員会
⑨紛議調停委員会
⑩財務委員会
⑪弁護士会照会審査室
⑫非弁委員会
⑬業務妨害対策委員会
これらの委員会と建議答申以外の委員会・活動は、弁護士会の目的外のものとして、基本的に不当・無要なものだと考えます。
弁護士会で委員会が50、ましてや70もあるのは、まさにブヨブヨと肥大化して、組織が腐敗しているものといえるでしょう。
弁護士会や日弁連は、事業仕分けをして無駄な諸活動を整理して、予算を縮小化して、不当に高額な会費を削減すべきです。