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彼らが最初 暴力団関係者を攻撃したとき

一昨年、旭川市の除雪作業の入札に参加して落札し、昨年1月から4月に除雪の業務委託料をだまし取ったとして、暴力団関係者とされる人が逮捕されたという報道がありました。
この報道ではよく分かりませんけど、今年になって逮捕したということのようですし、4回にわたって業務委託料が支払われたということですので、除雪業務そのものは行ったものと思われます。

詐欺罪は、対価となるサービスが提供されていても、支払った財産(この件は委託料)がだまされて交付された財産であり損害だとして、成立します。
本件では、除雪業務が問題なくなされていたのであれば、詐欺罪は成立するものの、実質的には旭川市には損害は生じていないと考えられます。

本件については、暴力団関係者だと黙って入札して落札し、委託契約を結んだことが問題になっています。
昨年に終わった除雪業務について刑事事件化する必要があるのか、刑事事件とするとしても逮捕する必要があるのか疑問です。
警察の暴力団排除としての立件としても、今回の逮捕はやりすぎに思えます。


昭和の時代に暴力団は増長してやり過ぎたとも思いますので、その反動で現在において徹底的に排除されていることにはあまり同情はしません。

ただ、処罰や規制は、基本的に「行為」を対象とすべきであって、「暴力団関係者」という一種の「身分」があることで安易に強制捜査(逮捕勾留、捜索差押)を受けたり重く処罰されたりするのは、法治国家としては極めて不当だと考えます。
暴力団関係者だからといって、銀行預金を作らせないとか携帯電話を契約させないとか、一般市民として生活する上での基本的なインフラを利用させないというのは行き過ぎでしょう。

反ナチ運動のニーメラー牧師という人の言葉から、「ニーメラーの詩」とか「ニーメラーの警句」などと言われているものがあります。「彼らが最初共産主義者を攻撃したとき」(ウィキペディア)などというタイトルがつけられています。
内容は、ナチが共産主義者を連れ去ったときに自分は声を上げなかった、ということから始まり、社会主義者が連れ去られ、労働組合員が連れ去られ、そのときには自分は対象でないから声を上げずにいたら、自分が連れ去られる番になってその時にはその人のために声を上げる人はいなかった、というものです。

暴力団や暴力団関係者に対する警察等の態度や”暴力団排除”については、なかなか批判しづらいものです。(普段は人権がどうのと声高に言う人や団体、たとえば弁護士会や日弁連も、批判しているのは見聞きしません。)
暴力団関係者の次の次は、あなた(自分)かもしれないという権力に対する警戒は必要だと考えます。

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林朋寛
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