誰もいなくなった

ジョブキタ北八劇場で上演が予定されていた演劇のアガサ・クリスティ原作そして誰もいなくなった」が、「著作権および上演許諾に関する都合により」中止になったそうです。

著作権および上演許諾に関する都合というのは具体的に何があったのかは不明です。
「そして誰もいなくなった」は、アガサ・クリスティの小説ですし、作者が戯曲(脚本)にもしています。
著作権放棄(フリー)になっていないのであれば、著作者(「著作者」ではなく)のアガサ・クリスティは1976年死亡なのでまだ著作権の保護期間は切れていません。

著作権の保護期間は、著作者の死後70年間となっていますので、アガサ・クリスティが著作者の作品はまだ著作権の保護期間内です。

大体の外国の国民が外国で発行した著作物も、条約によって日本国内でも日本の著作権法によって保護されます。(例外として、北朝鮮)
ですから、イギリスのアガサ・クリスティの作品も日本の著作権法で保護されることになります。

今回の上演中止は、現在のアガサ・クリスティの著作権者の許諾を取らずに上演の準備を進めていたのかもしれません。

後は、英語劇という予定ではなかったでしょうから、日本語に翻訳した脚本(二次的著作物)についての著作権や、アガサ・クリスティの作品を原作として創作した脚本(二次的著作物)についての著作権に関して権利処理ができなかったのかもしれません。また、これらの二次的著作物の創作にあたっての、原著作物(アガサ・クリスティの作品)の著作権の権利処理に問題があったのかもしれません。

実際にどのような点が問題になったのかは不明ですけど、鑑賞を予定していた方や稽古を重ねていた役者やスタッフの方々は非常に残念なことになったと思います。


70年は長いのでは

ところで、著作権の保護期間が著作者の死後70年間とされているのは異常な長さだと思います。
創作物の産みの苦しみがあり、時間や費用もかかりますから、著作者や著作権者に一定期間の保護がされるのは必要でしょう。しかし、著作者の死後70年は、かけた費用等の回収には余りある長期間です。
たとえば、著作物を創作してから50年生きて、その死後70年間となると、発行から120年間の保護ということになります。
もともと死後50年(それでも長過ぎ)だったのが、米国で1998年ころに20年延長されたこと(ミッキーマウス法と呼ばれているようです。)で、死後70年になりました。日本は、TPPの批准に伴う法改正の施行により平成30年・2018年に延長されています。

政治力・財力のある著作権者の意向で延長されているのでしょうけど、創作する人にとっても、創作物を楽しむ一般人にとっても、良いことには思いません。オリジナルをリスペクトしつつ二次的な創作がしやすくなるように、バランスを考えた方向で、著作権の保護期間の国際的な見直しをしてもらいたいと思います。

著作者の死後から70年後には、著作者の周りにいた人も誰もいなくなっていると思いますので、そんな長く権利保護をする必要はないです。

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林朋寛
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