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私と、若者と、【Youth+協働者インタビュー企画③麻生キッチンりあん西本香奈江さん】

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Youth+(札幌市若者支援施設)の活動に協力してくださっているオトナの方へのインタビュー企画もとうとう3人目。今回はYouth+の運営協議会委員も務めてくださっている麻生キッチンりあん代表理事西本さんにお話をお伺いしました。(今回はダブルインタビュアーとしてYouth+アカシアの福井と吉田がお聞きしてきました)

Youth+ってなんですか?

吉田-まずYouth+と結びついたきっかけはなんでしょうか?

西本-実は私、ここの麻生商店街で働くまで、Youth+を知らなかったんですよ。

吉田-そうなのですね!

西本-Youth+さんを含め、若者のための行政機関があるという事を一切知らなくて。
私たちが麻生地域に「麻生発子どもネットワーク会議をやろう!」となった時に、うちの麻生キッチンりあん(以下、りあん)のスタッフが「北区ではないけど、Youth+アカシアさんを誘おう」という話になって。「それはなんですか?」という事から始まりました。

吉田-スタッフさん経由で!スタッフさんは何故Youth+アカシアを知っていたのでしょう?

西岡-その人は子育て支援やエルプラザ(※1)の相談員をしていたからだと。うちの理事も、知っていて「いいね!」となって。それと、りあんで学習支援をやっているNPOの代表の方も知ってて。私だけ「知りません!」みたいな。アハハ(笑)

吉田-最初の「Youth+ってなんだろう?」という状態で、我々が入るのは不安ではなかったのでしょうか・・・?

西本-「みんながいいって言うなら、いいんじゃない?」という感じでした(笑)
私はりあんの理事長ですが、私にだけ責任があるのではなくて、みんながそれぞれ責任を引き受けてくれているので、すごく信頼仕切っているというか。だから「みんながいいっていうのならいいのかな」っていう感じですね。(笑)

吉田-スタッフ間で信頼関係があったからこそ、Youth+も入ることができたのですね!Youth+が入った時、どういう事を期待していましたか?

西本-りあんの子ども食堂に来ていた親子で、民生委員さんが気にかけていた親子がいたんですよね。困りごとを抱えているのに、民生委員さんが何回訪問しても、絶対鍵を開けてくれない、という状態で。
だけど、りあんでは、愚痴をこぼして「ちょっと大変」と言っていたり、「母子2人で住んでいて、ピンポンされたら恐怖でしかないから、来ないでって言ってほしい」と言っていたり。聞くと、この親子が自分のことを話せたのは、りあんが初めてだったそうで、そこから適切な機関に繋いで、困りごとが改善した、ということがあったんです。
その人によって悩みを話せる所がちょっと違うんだ、という事に気づいて。「困りごとを抱えている人が相談できるところが違うから、色んな機関と繋がっていくこと、私たちがその機関を適切に理解してパスを出せるようにすることが大切」ということから、麻生近辺で、子どもや若者の支援機関に声をかけたんですよね。
そこからYouth+さんが、どのような事をやっているか勉強しました。アハハハ(笑)

吉田-ありがとうございます!若者への関わり方の選択肢を増やすために声をかけてくださったのですね。

西本-そうですね。やっぱり家児相に相談とか児童相談所に直接って…私たちでさえ敷居が高い…。だけどその前に「こういう子がいるんですけど」とYouth+に相談できたら、私たちも対応しやすいですね。

※1 エルプラザ…札幌エルプラザ公共4施設のこと。男女共同参画や市民活動、環境保全等の活動のサポートをしています。


麻生の子どもとお母さんのために

吉田-麻生キッチンりあんさんでは、地域の家族や子どものために活動をされていますが、子どもの情報は入ってくるけど親と繋がることが難しいケースの場合は、どうされているのですか?ホームページにも「対策しています」と書いていて気になってて…

西本-もう誘拐って言われるてもいいくらいの覚悟でやっていますよ。フフフ(笑)
前に開催された「いとこんち」(※2)の活動報告会で「家に返せない子がいた際どうしていますか?」と質問したんですよ。そこでYouth+の松田さんが「警察と連携しています」と聞いて。私たちも検討を重ね、家児相(※3)と連携できるようにしました。ことある毎に相談をしているので、もしもの時のトラブルは防げるのかなと思っています。
また、対面で繋がる以外にも繋がる方法があるんじゃないかなと思って、りあんの公式LINEを作ったんですよね。そうしたら、200人ぐらい登録してくれて、その中に、気になっていた子どものお母さんとも何人か繋がれたんです。
そのうちの一人に母子家庭のお母さんがいて。ずっと働き詰めで、子ども食堂にはいつも予約して参加してくれるけど、こちらが「こういうサポートもできますよ」と言っても『もっと大変な人がいるから甘えられません』と…。でも、最近は『いいんですか…?』という感じで。

吉田-だんだんと警戒が解れてきたんですかね。

西本-そうなんですかね。
私たちはお母さんが頼りやすいような工夫をしています。「今年は働いているお母さんの応援をすることになったので、ぜひ協力させてください」と伝えたり、子ども食堂も、お母さんに「仲良しの子ができちゃって、その子と約束していたから来週も予約しちゃっていい?」とこちらから連絡したりして『お願いします』と言いやすくできるようにはしています。

※2 いとこんち…「札幌のこども・若者・子育てママが、自分ちをひと休みして過ごせるおうち」をコンセプトとした事業。
※3 家児相…家庭児童相談室の略。いじめや不登校、非行や家族関係等、18歳未満の子ども・若者に関する様々なことを相談できる機関。

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麻生キッチンりあんができるまで

吉田-そもそも「りあん」を始めた経緯とは…?

西本-元々は商店街再生事業の学生アイディアコンテストで、「ひとり親家庭の子どもに対する学習支援と、栄養バランスの摂れた食事提供」というアイディアが準グランプリになったことがきっかけです。商店街の空き店舗を活用して、地域の人に栄養満点の食事を提供する代わりに資金を稼いで、学習支援と食支援を展開していくというものです。それで、札幌市の方から「このアイディアを麻生商店街で実現化してくれませんか?」という依頼があったらしくて。私は生まれも育ちも麻生だけど、この時は中央区に住んでいたから、全然知らなかったんですよね。

吉田-えっ、そうなんですね!?

西本-あ、違う。私一回商店街に入って辞めたんだ。アハハハハ(笑)
このプロジェクトが立ち上がる前、一年だけ商店街で経理の仕事をしていたの。
でも、私は経理より、プロジェクトを企画したりする方が好きなんですよね。だから、今は販売をストップしているけど「亜麻そば乾麺」(※4)の開発プロジェクトをやったりしていました。そっちの方が楽しいのに、いつまでも経理の仕事をするのが「もう辛いんです…」と言って一年でやめちゃったんです。
そしたら、その後にこんな依頼があって…。「これ、私がやりたいと思ったやつ!」と思って(笑)

吉田-元々こういうことをやりたいと思っていたのですね!

西本-そうなんです。元々、商店街でカフェをやりたかったんですけど、その時はできなくて…。
でも、丁度同じタイミングで、ご縁あって「商店街に戻ってこないか?」と声をかけてもらえて。「企画の仕事で戻りたい!」と言って、商店街に戻ってきたんですよね。

吉田-それで今、ここで「りあん」の運営をされているのですね!

西本-最初、思うように資金集めができなくて。それで「一般の人にキッチンを貸してお金をもらおう」ということで始めたのが、日替わりシェフで。今はコロナで、今までキッチンをレンタルしてくれた人が活動できなくなって。それで、まずいねって話になって「じゃあ、駄菓子屋やってみる?」「そしたら子どもが来るんじゃない?」と言ったら、思いの外当たって・・・(笑)私一人じゃてんてこ舞いになってしまって、別のスタッフやボランティアさんに入ってもらって運営してます。

※4 亜麻そば乾麺…麻生の名産である亜麻を活用したそば。

昔は人見知りの女の子

吉田-お話を伺っていると、西本さんのバイタリティーに圧倒されます…!昔から精力的なタイプだったのですか?

西本-元々は子どもの頃はウジウジしていました。だから、お友達ができない人とかすごく気持ちがわかるの。クラス替えも「友達できなかったらどうしよう」と思って恐怖だった。あと、遠足の前日も恐怖で、知らないところに行くのが嫌だった。

吉田-ええ…!では、何か変わるきっかけがあったのですか?

西本-私はコーチング(※5)の講師を8年ぐらい一人でやっていたんですよ。そのライセンスは私を助けてくれました。あと、中学の時の友達にすごく恵まれていたのも大きいです。この友人がいなければ、引きこもりになっていてもおかしくなかったと思います。
自分の母親って割と無頓着で。女の子って成長してくると体つきも変わったり、おしゃれとかにも芽生えたりとかするじゃないですか。でも、親がそれについてこれなくて。
だけど、中学の時の友達が色々教えてくれたりして。「あんたぐらい歳になったらこういうものを用意しなきゃいけないんだよ」とか、わからないことは、親ではなくその友達に聞いていました。
だから「この人、人見知りだな」とかすごく分かるんですよね。私も人見知りだったから。あ、でも基本今でも人見知りです。周りには、信じてもらえないけど。アハハ(笑)

福井-わかるから、相手に気を配ってあげられるというのは大きいですね。

西本-だけど、最初の一歩の勇気は、自分で踏み出さないといけないので、その一歩を踏み出させるためのちょっとした意地悪とかはする。アハハハ(笑)

吉田-例えば…?

西本-例えば、答えがあってもモジモジしていている子には、最後まで自分で答えさせるとか。こっちから「こういうこと?」とか聞いたりしないですね。
今回も、学校の課題でボランティアをすることになった中学生がくれた依頼のメールが、親が打ったような書きぶりで。自分の文章じゃなかったので、面談の時にちょっと意地悪したの。アハハハ(笑)でも、その子は乗り越えていきましたね。指示しなくても自分から動けるようになって。『すごい楽しかったです』と言って帰っていったから、よかったと思いました。
そのあと、お礼のメールはやっぱり子どものメールになっていたから、これが自分の文章なんだなと思ってました。コーチングをやっていたおかげか、メールの文章でも、相手の質感が伝わってくることもあるんですよね。

福井ーメールの文章、気をつけなきゃ・・・!

※5 コーチング…対話を通して、相手の中にある答えを引き出し、目標達成を支援する手法。

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どうせ働くなら楽しく働いてほしい

吉田-西本さんは若者や子どもへどんな想いをもって関わってらっしゃるのですか。

西本-私、最初に働いた会社が、すごく辛くて一年しかもたなかったんです。そのあと、次の会社は長く勤めて「辞められたら困る」というぐらい仕事できるようになったんです。けど、体って正直だから、色々起きるんですよ。精神面でもかなり不調になってしまって…。

福井-ええええ・・・・。

西本-ハハハ(笑)でも、丁度その時にコーチングと出会ってすごく楽になって、前向きになったんですよね。自己肯定感が高くなくても、自分がやりたいことやっていいんだと思えて。この変化は自分にとってはすごく大きくて。
思い返したら、自分は若い時が一番辛かったので、若者に私が気付づいたことを伝えたいなと思って、会社をやめて独立したんです。その後、コーチングのコーチとして、色々な専門学校や看護学校で教えたりして。「働くって実は楽しいんだ」と初めてその時に思えたんですよ。

吉田-そこで初めて…。

西本-その後も自分がつらいと感じたり、自分が「こうしたい!」という意図と異なったりした仕事は辞めて…。そして、現在に至るという感じですね。ウフフ(笑)

吉田-そうなんですね…。そうすると、若者や子どもに関わる時も、自分で決めて行動するというのは大事にされているのですか?

西本-そうですね。子どもたちが安心して生活できるように、私は「誠実に生きる」と「自分を大切にする」、あと「子どもの未来をハッピーに」という方向性は大事にしているんですよね。
また、「自分たちが何を生み出したいか」ということもすごく大事です。でも、中学生や高校生の時は、そんなことわからないじゃないですか。だから、それを育てられるように関わってますし、一人でも多くの大人に出会うということも大事だと思っています。だからYouth+さんの取り組みというのはすごく大事だと思います。

吉田-ありがとうございます。ここで気になったのが、今はYouth+の運営協議会委員までやっていただいていますが、そこまで若者のために関わってくれる大人って一握りだと思っていて。西本さんはなぜ、関わってくれようと思ったのですか?

西本-さっきお話ししたように、3つの方向性を持って生きていたので、「自分が若者の役に立てるのだったら」と思って。自分の母親の事もあったから、小学校3年生の時には「子どもの気持ちがわかる大人になろう」と思ったんですよ。アハハ(笑)ですけど、結局大人になったら忘れちゃって、わからないこともあるんですけどね。

福井-自分がちょっとつらい時期があったからこそ、若者たちの助けになりたいなと思ったのですね。

西本-そうですね。あと、どんな若者もいずれは社会に出て働くじゃないですか。どうせなら、楽しく働いてもらえたらと思って。だって職場は、他人同士が長くいるわけでしょう?それなのに人間関係が辛いとか。しんどいと体に色々起きちゃうし。だからこそ、楽しく働くのって大事だし、そのほうが社会はより良くなると思います。
日々、若者にはそう思える経験をしてもらいたいなと思うし、私もそう思って子どもや若者と接しています。

たくさんの大人と出会って、拡がって

吉田-西本さんが思う、Youth+の価値ってなんでしょう?

西本-そういえば、いつからあったんですかね?私が高校生の時は知らなかったので。

福井-昔は「Let‘s」という愛称で「勤労青少年ホーム」という施設でした。

西本-それならすごく知っている!

福井-元々は地方から来た若者にとってのコミュニティとして色々な余暇活動を楽しむ場だったのを、今から10年ほど前から若者の自立・交流・社会参加を支援する居場所として運営するようになりました。

西本-今の私が高校生だったら、すごく行きたいなって思う。今でも「こんなことをやれるんだ!」と思って、行きたいけど「若者」と書いているから無理かと思っちゃうんですけど。アハハ(笑)それこそ「知らない人のところに行くの嫌ッ」と思うかもしれないので、中々一歩踏み出せないなって思うかも。でも、若者に色んな大人と関わって世界を拡げることは、結構勉強と同じぐらい大事だよって思うので、もっと活用してくれると、札幌の街を元気にする人達が増える場でもあるのかなと思うんですよね。

吉田-お話を伺っていて、元体験のようなものを大切にされていらっしゃるのかな、と思いました。Youth+をとおして、大人と出会って、拡がって、という経験できる場を提供していくことは、我々のミッションなんだろうな、と思います。

西本-私が子どもの頃は一人で遊んでいると、必ず地域の人が声をかけてくれたんですよね。「お母さんいないのかい?」とか、「車に気をつけなさいよ」とか、誰か彼かに必ず声をかけられたので、それを嫌だとは思わなかったし、当たり前だったので、街に育てられたなとすごく感じるんですよね。だから、色々な大人と関わってきたことは、私の財産で。今は自分から出会いに行かないと出会えないし、場合によってはとても危険もあるので、そういう意味では、色々な大人と関われるYouth+さんって今貴重な場所だなって思っています。

福井-色んな価値観に触れて、若者の気持ちがちょっとだけでも変わればいいのかなと。受けた刺激の意味が、今は分からなくても、この先で「そういえば、こういっていたな」とか気づいてもらえたらいいなと思います。


<プロフィール>
西本 香奈江
麻生キッチンりあん代表理事。こどもが1人でも利用することができるこども食堂や近隣の子ども・若者の居場所作り等を精力的に行う。子どもや親へより寄り添う活動を行うため麻生発こどもネットワーク会議も開催している。

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インタビュアー
福井(左)…Youth+アカシア館長。最近健康に気遣い中。
吉田(右)…Youth+アカシアスタッフ。秋の味覚堪能中。

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