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第5回「気候正義と世界のいま」のコーディネーターレポート
はじめに
皆さん、こんにちは。
札幌市環境局主催の「さっぽろ気候変動タウンミーティング(以下「タウンミーティング」と言う。)」のワークショップコーディネーター、ファシリテーターをしている対話の場づくり屋 SNUG代表の長谷川友子です。
このnoteではタウンミーティングの各回のレポートをお送りします。今回は第5回目のタウンミーティングの様子をお届けします!
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「タウンミーティング」とは?
タウンミーティング全8回の流れ
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「さっぽろ気候変動タウンミーティング」は、札幌市環境局主催の全8回のワークショップ。
前半4回を「基礎編:ふむふむ、もやもや期」として気候変動の基礎を学ぶ時期、後半4回は「行動編:やってみよう期」と位置付け、気候変動や気候変動にまつわる課題を多角に学ぶことができるプログラムを予定しています。
タウンミーティングが目指す姿
タウンミーティングは「市民が気候変動をはじめとする社会課題について対話する文化をつくる」という大きなビジョンのもと開催しています。
タウンミーティングが大事にする二つのキーワードとは?
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「公正な対話の場づくりの探究」
このタウンミーティングでは、立場や属性の異なる人々が集まります。ですから集まった人々が立場や属性に関わらず安心して対話できることが大切です。
でも、実際の対話の場の中ではさまざまな「ふつうはこうだよね」という暗黙のルールやマナーがあると思います。
例えば「あの立場の人は偉いのだろうから嫌われないようにしよう」とか「年上の人の前では自分の意見は黙っておこう」、逆に「自分より若い人の前では話を仕切らなきゃ」などと思ったりすることもあると思います。
タウンミーティングでは、そんな一つひとつの「規範」、いわゆる「当たり前」を見つめ直し、新しい対話のあり方を探究しています。
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「自分らしい行動の試行錯誤」
当初のキーワードは「自分らしい行動」のみでした。
しかし、タウンミーティングの過程で「行動」という言葉には大きなハードルを感じる人が多いことが話わかりました。
例えば「行動」という言葉を聞くと、「行動するからには失敗してはいけない」「すごいことをしなくてはならない」と感じる人が多いことがわかりました。
そこで、「試行錯誤」という言葉もキーワードに入れることで「些細と思えることも提案してみて、やってみて、また検討して、またやってみればよい」というメッセージを込めてこの言葉を使っています。
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タウンミーティングを支える「ユースファシリテーター」たち!
タウンミーティングでは2024年9月から10月にかけて計3回のユースファシリテーター養成講座に参加したユースファシリテーターが活躍中。
グループ対話のファシリテーションはもちろん、参加者の意見の共有や各パートの説明も担うなど回を追うごとにユースファシリテーターの活躍する範囲も拡大中。
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また、ユースファシリテーターの事前会議では、当日のタイムテーブルやプログラムについての提案も担っています。
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事前打ち合わせ中のユースファシリテーター。
第5回「気候正義と世界のいま」のコーディネーターレポート
今回の第5回目は「やってみよう期」の最初の回。気持ち新たにスタートです!
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開催日時:2025年1月26日(日)14:00-17:00
会場:xStation01
参加者数:19名
講師:宇佐美誠さん(京都大学大学院地球環境学堂 教授)
このタウンミーティングの本編は3部構成のプログラムです。
今回は3部構成のプログラム後にタウンミーティングの参加者自身が考えた、やってみたいことを共有するコーナー「タウンミーティングミニコーナー」の第一弾として「気候変動×LT」がスタート。中身は後述します。
ファシリテーターから参加者へ全8回のタウンミーティングが目指す姿や目的などを参加者に共有するところからタウンミーティングが始まります。
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本編に入る前に、グラフィックレコーディングを通して前半4回のタウンミーティングの内容や様子を振り替えります。
今回はユースファシリテーターのコジさん、なおゆきさんが振り返りを担当しました。
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第1部:集まった私たちを知る時間
今回は「気候正義と世界のいま」というテーマです。
いきなり気候正義について考える前に、参加者には以下の問いについて、参加者一人ひとりが自分の考えを付箋に書き込んでもらうワークの時間を設けました。
気候変動や世界で起きていることについて、あなたはどのような不安や焦り、無力感がありますか。
「気候正義と世界のいま」という講義の前に、改めて世界で起きていることや気候変動についての感情、特に不安や無力感に焦点を当て言語化することで、講義の内容について考えやすくするためにまずは一人ひとりが考える時間を過ごします。
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その後、参加者の付箋をユースファシリテーターが匿名で読み上げることで、自分以外のほかの参加者が考えていることも共有し、集まった「私たち」についての理解を深めます。
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第2部:講師による学びの時間:ともに学ぼう「気候正義と世界のいま」
今回は早速講義に移ります。
講師は京都大学大学院地球環境学堂 教授の宇佐美誠さん。
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もはや「気候崩壊」とも言われる世界の現状や気候正義について、最新のデータとともに講演いただきました。
また、世界中で起きているポピュリズムについても学びました。ポピュリズムとは、宇佐美さんによると「一般市民の反エリート感情を増幅させて利用する政治手法」だそうです。
科学者が「エリート」と捉えられていることから、ポピュリズムは「反科学主義」とつながりやすく、科学や科学者の知見が欠かせない気候変動対策にとってもポピュリズムは脅威であることを学びました。
また、ポピュリズムには見えやすい即座の利益配分で政治的支持を獲得する「反長期主義」の側面もあるそうです。ですから、長期的な視野が必要となる気候変動緩和策に反対する動きにつながりやすいそうです。
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激動する社会の中で私たちに何ができるのでしょうか。
講義の最後には、宇佐美さんから「いつでも始められる3つのこと」として「つたえる」「つながる」「うごく」ことを事例とともに紹介していただきました。
休み時間も宇佐美さんを囲んで質問する参加者がたくさんいらっしゃいました。
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第3部:対話によって学びを消化する時間
休憩のあとは宇佐美さんの講義の感想共有のグループ対話を行った後は、参加者自ら対話したいことを考え、グループに分かれ対話する時間を設けました。
このときに参加者に意識してもらったのが、対話したいテーマを単語ではなく「問い」の形にしてもらうことです。
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参加者からは以下の問いが生まれました。
・市民運動がポピュリズムに陥らないためには?
・どうしたら行動について希望が持てるだろう?
・気候変動を多くの人にわかってもらうには?どうすればもっと多くの人に気候変動を認識してもらえるか?
・気候変動について私たちが知るべき、伝えるべきことは?
・集まって行動することで何ができるだろう?
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第5回のタウンミーティングを終えた参加者の感想
プログラムの最後に、今回も参加者のみなさんに振り返りも兼ねて付箋に以下の4つを書き込んでもらいました。
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・今の気持ち
・今日印象的だったこと
・私たちタウンミーティング参加者とやってみたいこと
・グループ対話で印象的だったこと
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誕生!タウンミーティングミニコーナー!「気候変動×LT」とは!?
今回はユースファシリテーターのなおゆきさんが「気候変動×LT」というミニコーナーを実施しました。
なおゆきさんによると、LT(Lightning Talk)とは短時間でプレゼンテーションを行う手法で、稲妻(Lightning)のように短い時間で終わることに由来しているのだそう。
参加者は聞き手となり、聞いたあとは参加者からのコメントやフィードバックを募りました。
「気候変動×LT」のテーマは、「行動するってなんで難しい?」でした。
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第5回のグラフィックレコーディング
このタウンミーティングでは、グラフィックレコーディングで対話をリアルタイムで可視化し記録しています。
今回のグラフィックレコーディングはあかねさんこと石川茜さんが担当しました。ありがとうございました!
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第5回レポートの終わりに コーディネーターより
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全8回のうちの後半「やってみよう期」の第1回目は、行動をすることを踏まえ、参加者が視野を広げるためにどっぷりと学ぶプログラムを実施しました。
講師の宇佐美さんも講義の中で「気候不安」や「無力感社会」という言葉に触れていました。
私たちは気候変動についての危機感や行動の必要性を感じる一方で、社会の中で自身の無力感も感じているのではないでしょうか(実際に第一部ではたくさんの不安、無力感が付箋にびっしりと書かれていました)。
そこで「自分らしい行動の試行錯誤」をしていくために、改めて私たちの感情、そして世界で起きていることへの考えを深めるプログラムを実施することにしました。
参加者のみなさんに書いていただいた「今の気持ち」に関する付箋には「焦りと希望」「考えを共有してホッとした気持ち」「難しい」「悲しい気持ち」「気持ちが軽くなった」など多岐にわたる感情が。
タウンミーティングはともに考え、学び、行動するワークショップ。知識だけでなく感情も大事にしながらこれからも「公正な対話の探究」を通して「自分たちらしい行動」を試行錯誤していきましょう。
第6回目のさっぽろ気候変動タウンミーティングのお知らせ
早いもので、講師をお呼びする回は次回が最後。その後は参加者の対話のプログラムを実施予定です!
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テーマ:「気候変動と市民の活動を考える」
日時:2025年2月15日(土曜日)14時00分~17時00分
場所:xStation01(中央区北5条西5丁目1番地5 JR GOGO SAPPORO 6階)
講師:両角達平さん(日本福祉大学社会福祉学部 講師)
参加お申し込み:こちらのフォームから!
おわりに
さて、第5回のコーディネーターレポートはいかがでしたか。
今後もこのnoteではコーディネーターのレポートやタウンミーティング参加者のインタビューを掲載予定ですのでお楽しみに!
それでは次回第6回目のタウンミーティングでお会いしましょう!
さっぽろ気候変動タウンミーティング
コーディネーター・ファシリテーター
対話の場づくり屋 SNUG
代表 長谷川友子