山親爺の新しいパッケージデザインは「山親爺らしさ」を追求することから生まれました
2024年3月18日にテレビCMが復活すると共に、新パッケージの販売がスタートした山親爺。今回の【一日千秋】は、「読むPodcast 札幌千秋庵のおかしなはなし#02」に続き、山親爺の新しいパッケージデザインを担当した嶋田佳那子(しまだかなこ)さんに、さらに詳しいお話を伺いました。
ー 「札幌千秋庵公式Podcast」がリリースされましたね。収録お疲れ様でした。実際に出演をしてみて、いかがでしたか?
嶋田:すごく緊張しました…。ただ、今回MCを担当してくださった鈴木彩可さんのラジオを昔から聞いていたので、個人的にはリスナー気分も味わえて嬉しかったです(笑)。
▼嶋田さんが出演するPodcastとnoteの連動記事はこちら
デザイナーとしての歩み
ー さて前回は、Podcastで山親爺のパッケージデザインのリニューアルについて語っていただきましたが、今回は、山親爺の新しいデザインについての深堀りに加え、嶋田さんの人物像やデザインの仕事に対する想いについても伺います。
では、まずはじめに千秋庵製菓に入社する前までのことを教えてください。
嶋田:私は昔から絵を描くことが大好きで「将来はデザイナーになりたい!」と考えており、大学では美術を専攻してグラフィックデザインを学びました。
大学卒業後はブライダルの会社にデザイナーとして入社しました。実はこの会社は、私が大学3年生の時に大学の先生に紹介していただいたアルバイト先なんです。このアルバイトは大学卒業まで続けたのですが、一緒に働く先輩デザイナーさんたちの仕事ぶりを見て「先輩たちの元で経験を積みたい!」という気持ちが強くなり、大学卒業と同時に正社員になりました。その後は、広告、チラシ、ポスター、結婚式会場のレストランメニューなど、ブライダルに関するいろいろな販促物のデザインを担当していました。
ー 千秋庵製菓に入社したきっかけは?
嶋田:デザイナーとしてのステップアップを考えはじめた時に、千秋庵製菓のデザイナー募集の求人情報に出会いました。当時は千秋庵製菓のことを詳しくは知りませんでしたが、大丸札幌店にオープンしたノースマン専門店が話題になっていることは知っていましたし、両親が山親爺のテレビCMの話をしていたことも思い出し、「千秋庵製菓でデザインの仕事をしたい!」という思いが強くなって応募をしました。
ー 千秋庵製菓に入社後、どんな仕事を担当していますか?また入社後に担当した仕事の中で想い出に残っていることはありますか?
嶋田:日常的には店頭用のポスター、POP、リーフレット、プライスカードの作成、ホームページやオンラインショップ、SNS(Instagram、LINE)の画像の準備などを担当しています。
またそれ以外にも、商品のパッケージのリニューアルや、新商品開発などの各プロジェクトごとのデザイン全般を担当しています。
想い出に残っているのは、入社後すぐに銭函金助のリーフレットの作成を担当した時のことです。その時に、商品の写真撮影に初めて参加させてもらいましたが、中西さん(代表取締役社長)が自ら、かりんとうを1枚1枚、絶妙な角度で積み上げていく姿を見て「妥協しないモノづくりの姿勢」を感じたことをよく覚えています。
最近はほとんどの商品撮影を任せてもらっていますが、商品撮影をする際には、入社直後に感じたこの想いを忘れずに取り組んでいます。
山親爺の新パッケージデザインについて
新しいデザインが決定するまでの道のり
ー 改めて今回、山親爺のパッケージデザインのリニューアルを担当することになった時は、どのように感じましたか?
嶋田:山親爺のリニューアルについての議論は社内で何度も行われていましたが、まさか自分がすべてのデザインを担当するとは思っていなかったので、かなり驚きました。実は…私自身、千秋庵製菓に入社するまで山親爺を食べたことがなく、テレビCMも見たことがなかったので、最初は全くイメージが沸きませんでした…。そんな状態からのスタートだったので、まずは自分で山親爺を買って食べてみたり、過去の資料を見直して歴史を紐解くところから始めました。ただ…最も苦労したことのひとつが、山親爺の歴史を紐解くことでした。
山親爺は1930年の販売開始から今年(2024年)で94年になりますが、社内には販売開始当時の資料はほとんど残っていませんでした。それでも当時のことを知る手がかりを探すべく、社内に残っている過去のパッケージを掲載したカタログやチラシなどからロゴやイラストをピックアップしたり…、過去の新聞記事や広告などを調べたり…本当に大変でした…。
嶋田:この作業にかなり時間を費やしましたが、過去の資料が集まっていく中で「山親爺には想像以上に色々なデザインがある」という発見がありました。熊のイラストだけでも色々なテイストのものがあったり、パッケージの種類にも、親子熊のイラストが描かれた可愛いハイカラ缶や、時計台型のものがありました。
私は「山親爺といえば黒缶」という印象が強かったのですが、過去にもいろいろなパッケージが存在していたことが分かり、少しホッとしたと言うか…勇気が出たというか…「黒缶のイメージに固執しなくても大丈夫なんだ!」と感じました。
ー そこからどのようにデザインが進んでいったのですか?
嶋田:デザインの方向性が決定するまでには紆余曲折があり、特に最初の頃は、どんなデザインがいいかを模索する日々が続きました。そして、様々なテイストを検討していくうちに、オールドアメリカンのテイストを思い付きました。
その後、デザインに関する議論が進み、最終的には「山親爺はテレビCMの印象が一番強い」という結論になり「笹の葉を担いでシャケを背負って、スキーを履いて雪山を滑る山親爺(熊)」という、CMの世界観をパッケージに描くことに決定しました。
そこからは実際にイラストを描いていくことになりますが、私は熊の身体の構造を理解することから始めました。インターネットなどで参考になる熊の画像を探し、何度も何度もスケッチを繰り返しながら熊の身体の構造を理解しました。そして徐々に、シャケを背負う熊のイラストを完成させました。背景にある山のイラストは、千秋庵製菓の創業の地である札幌から見える山にこだわりました。最終的には熊と山のイラストを使った、自分なりのオリジナルな表現が出来上がったと感じています。
「山親爺らしさ」を追及した配色やロゴへのこだわり
ー 新しいパッケージは鮮やかな空の「青色」と雪山の「白色」、そしてロゴの「オレンジ色」が印象的ですが、この色づかいにはどんな想いがありますか?
嶋田:今回のデザインでは「山親爺らしさ」を大切にし、「だれが見ても山親爺を感じる配色にしたい」と考えていました。
まず第一に「ロゴの配色にはオレンジ色を使用したい」と考えました。オレンジ色は過去のパッケージの熊のイラストの背景に使われており、山親爺を感じる配色としてポイントになると思いました。また、北国の冬の澄んだ青空の上にロゴのオレンジ色があるとアクセントカラーとしても際立つと思いました。
ただ、青色とオレンジ色は色相環の中で互いの反対色であるため、見やすさの観点から、私はあまり組み合わせて使用することはありません。しかし、この組み合わせは「山親爺らしさ」を表現するために必要だと考え、思い切って採用しました。
― 新しいパッケージに採用したロゴへのこだわりはありますか?
嶋田:ロゴもパッケージと同様にたくさんのデザインがありましたが、どのロゴにも時代に左右されないシブさと普遍性を感じました。その中でも特に、初期の黒缶に使われていたロゴは手書きの風合いで表現されており、シブさ、やわらかさ、そして何より山親爺らしさを感じました。このことから、初期の黒缶に使われていたロゴを少し調整して新しいパッケージのロゴを作っていきました。
リニューアル後の反響
ー 新しいパッケージデザインになった山親爺がリリースされて、その後の反響はいかがですか?
嶋田:真っ先に両親がすごく喜んでくれました。3月18日にテレビCMが放送されるとすぐに報告をくれました(笑)
社内の他部署の人からも「青色がキレイ!よく思いついたね!」と声を掛けてもらえてとても嬉しかったですね。先日SNSをチェックしていたら、Podcastを聞いてくださった方が「デザイナーさんのお話が聞けます!山親爺が好きになるかも!」とコメントしてくれていたのを見て、こっそり喜んでいました(笑)
これからのこと
ー今後、千秋庵製菓のデザイナーとして様々なデザインを手掛けていくことについて、どんな想いがありますか?
嶋田:私としては「札幌千秋庵らしさを大事にしていきたい」と思っています。
過去の資料を色々と見て「札幌千秋庵にはどんどん新しいことを取り入れてきた歴史がある」ということを再認識しました。
これから先、札幌千秋庵の歴史に令和のテイストのデザインを加えてさらに進化していきたいと思っています。昔から札幌千秋庵を知ってくださっている方にも受け入れていただきながら、新しいお客様にも、もっと札幌千秋庵を知っていただけたら嬉しいです。
ー今後、取り組んでみたいことなどはありますか?
嶋田:たくさんありますね…。
例えば…SNS専用の見せ方の研究や整理をしていきたいですし、昔からの札幌千秋庵らしさを出せるような商品パッケージのデザインやお店のデザインもやってみたいと思っています。商品の良さをもっと伝えられる店舗用の販促物も、もっと考えていきたいです。
色々とアイデアや想いはありますが、時間の制約などもあって出来なかったり、個人的に悔しい思いをしたこともあります。今以上に、しっかりと先々の構想を練って各案件に取り組んでいきたいですし、そこに関わる人たちが楽しい企画にどんどん挑戦できる環境も作っていきたいと思っています。
ーありがとうございました。では最後にひとことお願いします。
嶋田:今後も目の前のことに1つ1つ、真摯に、ベストをつくします!
|編集後記|
入社して1年未満にも関わらず、千秋庵製菓の代表商品である山親爺のパッケージデザインのリニューアルに取り組んだ嶋田さん。自分の想いを、恥ずかしそうに、丁寧に話してくれました。プレッシャーを乗り越えて成長し、千秋庵製菓に新しい風をもたらす大きな存在として活躍していくでしょう!