史記 鴻門之会 頭髪上指す 定期テスト対策

はじめに

 この記事は、私が通っている高校の定期テストに向けて作った復習用の記事になります。基本的に自分用ですが、同級生や外部の方でもこの記事を見つけた場合はぜひご活用ください。

おことわり

  • 先述の通り、この記事はあくまでも自分用にしか作っていないので、端折られている部分が多くあります。そのような部分は各自で復習するようにしてください。

  • 私は古典が比較的好きなだけの 理系 選択者なので、大した知識はありません。間違いはざらにあると思うので、その辺は各自で取捨選択してください。

  • 基本的に語彙力もないので、わかりにくくてもご愛嬌ということでお願いします。

  • パッと見で何が言いたいのか理解できるように現代語訳をガン無視して現代風な言葉を多用しますが、 厳密な訳ではない ことには注意してください。ちなみに敬語もガン無視します。

  • 文法や語句の確認、その他主要なチェックポイントに絞って書いているので、文章全体の詳細な訳や要約はしません。学校から配られた現代語訳を見るなりググるなりして各自で確認するようにしてください。

  • 数研出版「改訂版 古典B 漢文編」に掲載されている問の解答を載せてあります。ただし、私なりの解答なので間違っている可能性が大いにあります。

  • 「史記 鴻門之会 剣舞」の解説を読んでからこの記事を読むと、話の繋がりがわかりやすくなると思います。まだ読んでいない人はこちらからどうぞ。

  • 解説の書き方が迷走しているので前回と全く違う構成ですが許してください。

ざっくりとしたあらすじ

 項王と和解し、そのまま宴会をすることになった沛公。しかし、項王軍の范増らによって殺害の危機に瀕する。項伯のおかげで何とか身の危険を回避したのだが…

登場人物の確認

沛公

 范増・項荘に殺されかけた人。相変わらず今回も何も悪いことはしない。可哀想。

項王

 曹無傷の告げ口でキレた上樊噲に完璧に論破される人。 本当に可哀想。 

張良

 樊噲に状況報告をする人。そんなに出番ない。略されて「良」とだけ書かれているが、張良を指す。

樊噲

 読みは「はんかい」。張良の報告を受け遅れてやってくるヒーロー。かっこいい。略されて「噲」とだけ書かれているが、樊噲を指す。

文法・語句の確認と読解

 宴会の席にて舞を舞っている項荘。その真意に気づいた張良は軍門へと向かった。そこにいた樊噲は張良に尋ねる。

「今日之事何如。」
「今日の事何如。」

本来は台詞の前に「曰く」とあるので、「『~何如。』と。」と書き下すのを忘れないこと。

 意味は、「今日の会見の様子はどうですか。」となる。
 「何如」は、「いかん」と読み、原則 様子や状態を尋ねる 時に用いられる。ちなみに、「いかん」には「如何」と書くものもあり、こちらは原則 手段や方法を尋ねる 時に用いられる。

 樊噲に尋ねられて、張良はこう返す。

「甚急。今者項荘抜剣舞。其意常在沛公也。」
「甚だ急なり。今者項荘剣を抜きて舞ふ。其の意常に沛公に在るなり。」

同様に、「『~なり。』と。」と書き下すのを忘れないこと。

 現代語訳は「とても切迫している。今項荘が剣を抜いて舞っている。その意識は常に沛公にある。」となる。
 まず白文・書き下し分にある「今者」は、この2文字で「いま」と読む。文字通り「今」という意味。
 さて、「其の意常に沛公に在るなり。」とはどういうことだろうか。訳によれば、項荘の意識の先は沛公にあるらしい。項荘が宴会の席に入っていった目的を思い出してみよう。そう、この「意」とは、項荘の意識が常に 沛公を殺すこと にあることを意味しているのだ。

 それを聞いた樊噲はこう返す。

「此迫矣。臣請、入与之同命。」
「此れ迫れり。臣請う、入りて之と命を同じくせん。」

同様に、「『~せん。』と。」と書き下すのを忘れないこと。

 現代語訳は「これは危ない。入ってこれと生死を共にしたい。」となる。
 「臣」は前回同様、自身をへりくだる 一人称 。「請う」には「 どうか~させてください 」というニュアンスが入る。「矣」は 置き字 なので 読まない し 書き下さない が、強意や詠嘆を表し、語調を強める 働きがある。
 さて、「入って」とあるが、これは宴会の席に入るということだろう。
 では、「これ」とは?宴会の席に入っていって生死を共にしたい者など1人しかいないだろう。沛公 に決まっている。主君が命の危機に瀕しているのなら、助けに行くのが部下のさだめだ。なんとも勇敢で忠心溢れる部下である。

 そして、樊噲は剣と盾を持って宴会の席へと向かうわけだが、衛兵にはばまれてしまう。そこで樊噲は盾で兵を押してゴリ押しで突破し無事宴会の席に入ることに成功する。垂れ幕をめくって西を向いて(なぜなら項王は東を向いて座っている=西にいるから)立ち、項王をにらみつける。その髪の毛は逆立ち(=頭髪上指す)、まなじりはさけんばかりであった。当然項王は警戒しながら「何者だ。」という。張良が沛公の参乗(護衛のために馬車に同乗する者)であると紹介する。項王は樊噲の勇敢さを賞賛し、一升(約2L)の酒をふるまう。樊噲はそれを立ったまま飲み干す。さらに項王は生の豚の肩の肉を与え、これも樊噲は盾の上で剣で切ってむさぼり食う。普通の人であれば、「こんなもの頂けないです」と謙遜するところではあるが、そこを豪快に飲み食いする樊噲は、項王には好印象に映っているようである。項王はその勇ましさを再び賞賛し、まだ飲めるか聞く。樊噲はこう返す。

「臣死且不避。巵酒安足辞。」
「臣死すら且つ避けず。巵酒安くんぞ辞するに足らんや。」

 「私は死すら避けようとはしません。ましてや大杯の酒ごときでどうして断りましょうか、いや、断りません。」という意味。私は死を覚悟してきているので、大杯の酒や(衛生的によくないであろう)生肉くらいなんでもないですよ、という 強い決意 が表れている。
 「~すら且つ」は、語調に 抑揚 を加える表現。また、「安くんぞ~せん(せんや)」は 反語表現 。2つセットで「 ~でさえ~する。ましてや~はどうして~するだろうか。いや、~しない 」という意味になる。

 樊噲は続けて、秦の王の話を交えつつ沛公の弁明を始める。

「夫秦王有虎狼之心。殺人如不能挙、刑人如恐不勝。」
「夫れ秦王虎狼の心有り。人を殺すこと挙ぐる能はざるがごとく、人を刑すること勝へざるを恐るるがごとし。」

 意味は「そもそも秦王は虎や狼のような心がありました。殺した人は数え切れず、人を処刑するにあたっては心配するほどでした。」となる。
 「夫れ」は「そもそも」という意味。「虎や狼のような心」とは、残忍な心 ということ。前回解説したように、「能」は返り点がついていなければ基本「よく」と読むが、今回は返り点がついているので「 あたふ 」と読む。「~することができる」という意味自体は変わらない。適当に直訳すると「人を殺したことを挙げることができない」みたいな感じ。
 人を処刑するにあたっては、あまりにも王が人々を処刑するものだから、処刑する人が多すぎて処刑しきれないのではと心配している。
 2文目が 対句表現 になっていることにも注目。

 樊噲はさらに続けて、「沛公は懐王の約束(先に秦を平定した者を秦の王とする)のもと、先に秦に入ったのは沛公である。それなのに、沛公は少しもみだりに自分のものにはしようとしなかった。さらには、宮廷を封鎖し、軍を覇上に引き返して、大王(項王)が来るのを待っていたのだ。わざわざ兵を遣わして函谷関を守らせたのは、他の盗賊の出入りと非常事態に備えたからだ。項王とは一緒に戦ってきたのだから、気遣っていたのだ。沛公の功績が高いのはこのようでありながら、いまだ何の恩賞もない。」と沛公の弁明をする。次いで、項王に対し、

「而聴細説欲誅有功之人。」
「而も細説を聴きて有功の人を誅せんと欲す。」

 意味は「しかも細説を聞いて、功績ある人物を殺そうとしている。」となる。この「細説」とは、「つまらない者の言うこと」であるが、それは 曹無傷の告げ口 のことである。沛公様こんなええことしてんのに、あなたはなんでそんな人の言うこと聞いてキレてるんですか、って感じ。

 さらに極めつけに、「これでは滅びた秦の後継をしているだけです」と言って(文末の「耳」は「のみ」と読み 限定 を表すので抑えておくこと)、

「窃為大王不取也。」
「窃かに大王のために取らざるなり。」

ここまでが樊噲のセリフ。「『~なり。』と。」と書き下すのを忘れないように。

と言った。意味は「はばかりながら大王のために賛成しないです。」となる。
 「窃」は「ひそか」と読むが、窃盗とかそういう意味はなく、「恐れながら」「はばかりながら」という意味。
 「大王」は項王のことを指す。樊噲はあくまでも下手に出て意見をしている。
 「取る」とは「賛成する」という意味だが、何に賛成しないかというと、沛公を殺すことである。もし殺そうものなら、秦の王のように人々に反逆されるぞというのだ。ただし、「私のようなものが項王様に意見するべきではないと重々承知の上で、項王様のためを思って意見している」という 低姿勢さ があるということを忘れないように。

 この後の文にあるように、項王は何も返せません。ぐうの音も出ないほどの完全論破だ。一言、「座れ。」とだけ言って、樊噲を張良の近くに座らせるのみであった。しばらくして(=須臾にして)、沛公は樊噲を呼んで便所へと出て行った。

まとめ

 今回の超ざっくりとした流れは、

1.張良「沛公様やべえよ」
2.樊噲「マジか俺行くわ」
3.樊噲「沛公様何も悪くねえだろなんでキレてんだよ(論破)」
4.項王「」

という感じ。細かい解釈は各自現代語訳等でで確認するようにしてください。

教科書の問の解答

 問1、2は解説で触れたので割愛する。
 
学習 樊噲の演説を聞いてそれに答えなかった項羽の心情を答えよ。

 樊噲の言うことが理にかなっているから、樊噲を怒鳴りつけることも、反論することも出来ず困っている。

ただしこれはこの文章単体で解釈したときの話であり、実際の背景をもとに考えるとこういう解答にはならなかったりする。ただ、そこまで考えなくてもこの解答でOK。

おわりに

 解説は以上です。誤りの指摘や質問等あればご自由にどうぞ。

参考文献

https://www.youtube.com/watch?v=3JOkelPxm6g

https://manapedia.jp/text/3788

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